64式小銃の思い出

サバイバルゲーム

陸・海・空自衛隊の制式小銃として長く使用されている64式小銃。

陸上自衛隊は1989年から89式小銃、2020年からは20式小銃に置き換わりつつありますが、海上自衛隊と航空自衛隊ではまだまだ現役です。

ネットをはじめとするメディアでは、64式小銃に関するいろいろな情報が出ていますが、だいたいどれも『すぐ壊れる』とか『重すぎる』とかいう、ネガティブな情報ばかり…。

どれもスペック上の話やら、ゲームでの話やらで、不思議と実際に使ったことのある人のレビューってのが見当たらない。

まぁ、私の調べ方が悪いのかもしれませんが、せっかくなので、元自衛官で実際に国内や海外の訓練で実弾射撃までしてきたうえでのレビューなんてものを書いてみたいと思います。

Table of Contents

64式小銃のスペック

64式小銃の大まかなスペックは

  • 全長:990㎜
  • 重量:4.3㎏(弾倉、弾薬除く)
  • 口径:7.62㎜
  • 使用弾薬:7.62×51㎜NATO弾、.308WIN

となっています。

詳細なスペックの解説は↓

Wikipediaでも見てください!

ネット上に溢れる64式小銃のネガティブなレビューには、

  • 重い
  • 長い
  • 口径が大きすぎる

なんてのがありますが、64式に先行して開発され、64式を作るうえでのベンチマークや参考となった小銃である

M14(アメリカ)

AK-47(旧ソビエト)

G3(旧西ドイツ)

FAL(ベルギー)

は、どれも口径が7.62㎜で、重さも長さもそれほど変わらないんですよ。

当時の世界情勢やら用兵思想やらが複雑に絡み合っているんですが、1940年代から60年代に開発された自動小銃が使用を想定していた戦場は、視界の開けた平野部や沿岸部とされていました。

基本的な戦術は、前線に陣地を構築し、比較的遠距離から進行してくる敵の部隊を迎え撃つというもの。

そして防衛戦闘での使用が前提なので機動性はそれほど要求されず、遠距離での撃ち合いに勝つために火力と精度が求められたようです。

そのため、ライフルとしては比較的大口径となる7.62㎜弾が選定され、これを安定して遠距離に投射するために必要になるのが、4㎏前後の重量と500㎜前後の銃身長。

というわけで、この年代に開発された自動小銃は

  • 全長:870~1200㎜
  • 重量:3.9~4.5㎏

というのが一般的。

そうすると、64式小銃はほかの自動小銃と比較して重すぎるわけでも、長すぎるわけでもないんですが…。

じゃあなんで批判されているのかというと、批判している人たちは64式を同年代のライフルとではなく、2000年代以降の戦争で使われているライフルと比較しているから。

例えていうなら、T型フォードとテスラの電気自動車を比較しているようなもんです。

『T型フォードはテスラと比較すると乗り心地が悪くて操縦安定性が酷い!しかもガソリンエンジンを使っていて燃費も悪く、環境負荷が高いからダメな車だ!』なんてトンチキなことを言ったりすると馬鹿だと思われますが、銃の場合はどういうわけか、開発経緯や時代背景、ユースケースを全く考えず、スペック上の数値だけで評価した銃の性能を語る人が多いようです。

まぁ、日本国内では一般市民が銃を撃つことなんかできませんし、そもそも64式なんか今じゃ航空自衛隊にでも入隊しなきゃ撃てないので、他のライフルと比較することもできませんけどね。

航空自衛官の中でもよほどのガンマニアでもなければ、64式と他のライフルとの比較なんかできません。

射撃訓練でのインプレッション

さすがに64式小銃を実戦で使ったことはないので、あくまで射撃訓練での話にはなってしまいますが…。

教育隊での基礎的な射撃訓練に始まり、部隊での定期的な射撃訓練、市街地戦闘訓練(MOUT)でのハンドリング、海外派遣での警備任務と、航空自衛隊在職中には同じ職種の隊員に比べて64式小銃に触れる時間が長かったわけですが、個人的な感想としてはそれほど悪い銃だとは思えませんね。

Wikipediaより引用

命中精度

銃の性能を語るうえで絶対に外せないのが命中精度の話。

64式小銃は同じ年代に開発された他のライフルと比較すると命中精度が高いなんてよく言われますが、確かにこれがよく当たるんですよ!

普段の年次射撃訓練では伏射で撃つことが多かったんですが、これでだいたい25m先の直径5㎝くらいの範囲に収めることができましたし、近接戦闘射撃の訓練で立射をしたときは、30m先の直径10㎝の範囲に集弾させることができました。

64式小銃は重いとか、フロントヘビーでバランスが悪いだとか言われることがありますが、これは実際に64式小銃で近接戦闘射撃をしたことのない人の意見でしょうね。

実弾を撃つときにはこの重量バランスが絶妙にかみ合うので、ダブルタップやトリプルタップをしても銃口が跳ね上がらず、初弾と同じところに2発目3発目を叩き込むことができます。

また、重量のおかげである程度反動を抑え込めるのも、命中精度が高くなる理由の一つ。

狩猟免許を持ち同じ7.62㎜口径のライフルを保有している先輩曰く、64式小銃より軽量な狩猟用のボルトアクションライフルと比較すると、明らかに64式小銃は撃った時の反動が少ないんだとか。

反動といえば、普段の射撃訓練では減装薬といって通常の90%程度しか火薬が入っていない弾を使用しているんですが、『64式小銃は減装薬のおかげで反動が少ない』なんて言われることがあります。

前述の先輩はその噂の真偽のほどが気になり、こっそり私物の.308WINを射撃訓練に持ち込んで64式小銃で撃ったことがあるそうで。

結果としては発射音の違いがあるだけで反動は減装薬とそれほど変わらなかったみたいです。

射撃の安定性

命中精度の高いでも、続けざまに何発も安定して撃てなければ意味はありません。

安定性なんて書いてますが、信頼性といったほうが近いですかね?

『64式小銃はジャムが多くてまともに撃てない』なんて話を見かけることがありますが、射撃の前にきちんと手入れして規制子(ガスレギュレーター)を合わせておけば、ほとんどジャムを起こすことはありません。

これだけ見ると「手入れしなきゃまともに撃てないんじゃないか!」なんていう人がいるかもしれませんが、自衛隊で銃を武器庫に保管するときは、錆びないようにかなり多めに油を塗ってるんですよ。

いい加減な奴が整備した後だと、銃が油でベッタベタになってたりします。

そんな状態で射撃をすると、防錆油が火薬の燃えカスや薬莢の削りカスを拾う上、油自体も熱で炭化して可動部分に詰まってしまうため、これがジャムの原因になるわけです。

なので射撃前に整備の時間を設けて余分な防錆油を拭き取ってやれば、砂嵐の吹き荒れる中東の砂漠でもジャムることなく安定して射撃ができます!

Wikipediaより引用

それと、射撃訓練の時に必ず取り付ける『薬莢受け』もジャムの原因の一つ。

これは薬莢受けの取り付け不備と、薬莢受けの変形が原因なんですが、薬莢受けの取り付け角度が悪いと、せっかく排出した空薬莢が薬莢受けに跳ね返されて再び薬室に戻ってしまうことがあるんですよ…。

こうなるとスライドが閉鎖できなくなるので、引き金を引いても次の弾を撃てません。

あとは、部品の組付け不良もジャムの原因の一つですが、これは銃本体の性能というより、射手の能力の問題ですね…。

ハンドリング

どこかに陣地を構築し、そこの立てこもるような戦い方を想定していれば、銃のサイズや重さを考慮する必要はありませんが、歩兵が持ち歩いて戦うバトルライフルやアサルトライフルとなると、機動性も考慮しなければいけません。

64式小銃は20発のフル装弾したときの重量が約6㎏と重く、全長も990㎜と長いため、市街地での閉所には不向き…。

なんて思われがちですが、訓練で市街地戦闘をやった感じ、工夫と慣れでどうとでもできるような気がします。

重量があるので構えたまま歩き回るのも辛いですし、片手で弾倉交換をするのも大変ですけど、それはどのライフルを使っていても同じこと。

結局のところ、ライフルに適合した動き方を訓練で体に叩き込む必要があるわけで、どんなライフルを使っていたとしても、訓練初期には絶対に使いづらさを感じるもんです。

もちろん、米軍の使うM4カービンのようにコンパクトで軽量なライフルの方が使い勝手はいいですが、訓練を繰り返して慣れてしまえば、64式小銃でもそれほど不自由は感じません。

整備性

ここネット上に氾濫する64式小銃の悪評を払拭すべく、フォローするような話を書いてきましたが、整備性に関してはフォローのしようがありません…。

まず部品点数が多すぎる。

これも仕方のないことなんですが、連射速度を抑えるために、撃発機構を一般的な自動小銃に採用されるハンマー方式では無くストライカー方式にしたうえ、トリガーに緩速装置という機構を組み込んでいるため。

おかげで連射するときも銃をコントロールしやすくなってはいるんですが、トリガー周りの部品構成が複雑になり、スムーズに分解結合するために長時間の訓練が必要になります。

毎日銃の手入れをするような職種ならともかく、年に1回程度しか銃を触ることのない職種が圧倒的に多い航空自衛隊の場合、分解はできても組み立てが怪しい隊員がゴロゴロいますからね…。

64式小銃の分解には、一時分解と二次分解の2種類があるんですが、一時分解ならともかく、トリガー周りまで分解する二次分解となると、必ず『この部品ってどこにつくの?』なんて言い出すやつが一人は絶対にいます。

こうなるのは、隊員個人の能力の問題ではなく、3Dパズルと知恵の輪を合わせたような複雑怪奇な構造が原因でしょうね。

訓練では分解結合のタイムを競ったりすることがあるんですが、それまで分解結合で部隊最速だった奴が1年後に『あれ?この部品ってどうやってつくんだっけ?』ってなことになったりするくらいですから…。

次に部品の脱落のしやすさ。

訓練中に部品を落とすと、射撃に全く関係のない部品であっても部隊総出で捜索することになります。

いちいち探してもいられないので、部品の脱落防止のために行っているのが、自衛隊名物となった感のある『黒ビニテ処理』。

落ちそうな部品にあらかじめビニールテープを巻き付けて脱落を防ぐ処置↓

Wikipediaより引用

私の頃はスライド直前、ハンドガードの付け根のあたりに取り付ける“槓桿止め用ばねピン”の脱落防止だけでしたが、ここ最近は親の仇のようにああちこちビニールテープ巻いてるみたいですね。

そもそも部品が脱落するのは、部品が劣化してきて所望の性能を発揮できなくなってきているからなので、脱落を恐れてビニールテープを巻くくらいならどんどん部品を交換すればいいだけの話。

ばねピンくらいなら武器庫にいくらでもスペアパーツを用意してるはずなんですがねぇ…。

予算の都合や在庫の都合でもあって、そうそう簡単に交換できないんでしょうか?

ちまちまと部品を交換してまで使うくらいなら、いっそのこと最新の20式小銃に乗り換えた方がいいような気もしますが、航空自衛隊としてはそうもいっていられない事情があったりします。

航空自衛隊の64式小銃について

陸上自衛隊が89式小銃から20式小銃に移行し、海上自衛隊では一部の部隊で89式小銃の配備が進められていますが、航空自衛隊では依然として64式小銃を使い、小銃を更新する気配がありません。

シンプルに台所事情の話をすれば、F-35戦闘機やKC-46空中給油/輸送機の導入と整備にお金がかかるので、小銃の更新に回す予算がないという事情がありますが、それ以外にも理由があります。

航空自衛隊の基地警備の戦略・戦術の上の都合

もし仮に日本国内あるいはその周辺で紛争が発生した場合、航空自衛隊の基地の警備は航空自衛隊と陸上自衛隊が協同して対応することになりますが、航空自衛隊が対応するのは基地中だけで、基地の外は陸上自衛隊が対応することになっています。

航空自衛隊の部隊は基地内に拠点を築き、基本的にはそこで進行してくる敵勢力を待ち伏せする戦術なので、航空自衛隊の使用する小銃には機動性は求められていません。

また、飛行場があるような航空基地の場合は開けた場所で200~300mの距離での戦闘が想定されます。

そうなると、89式や20式のような5.56㎜では遠距離絵の火力に不安があるため、航空自衛隊の想定する基地警備での戦闘では、64式小銃がベストとまではいわないまでも、現状ではベターな選択となるわけです。

銃の寿命の問題

航空自衛隊の運用要求的に64式小銃がベターとはいえ、64式小銃が採用されたののは1964年と、60年近く前のこと。

この60年の間に、陸上自衛隊は小銃を64式から89式へ、さらに89式から20式へと更新していますが、更新に伴って使われなくなった小銃は、程度によっては廃棄処分されずに陸上自衛隊から海上自衛隊や航空自衛隊に移管されていたりします。

64式小銃は無駄に頑丈に作られているそうで、設計上での銃身寿命(その銃身が発射することのできる弾数)が2万発ほどらしいですが、自衛隊は年間の射撃の回数が少ないので64式の銃身寿命が尽きるまで50年以上かかるんだとか。

陸上自衛隊で89式小銃と置き換えられて航空自衛隊に移管された64式の中には、銃身寿命が1万発以上残っているものも…。

航空自衛隊は陸上自衛隊よりも射撃の回数が少ないので、寿命はさらに延びる計算になります。

とはいえ、いくら銃身寿命が残っていても、設計が古くて部品の脱落が目立つようになってくれば、そろそろ買い替えも検討するべきなんですが、書類上はまだまだ使うことができるので、小銃の新規調達やそれに先立つ比較審査したくても財務省の許可が下りない!

20式小銃の計画段階では『5.56㎜と7.62㎜の2つの仕様があり、銃身と機関部の交換で両方の口径の弾薬に対応する』なんてものがあり、20式で64式と89式をすべて更新するなんて話も出てましたが、7.62㎜仕様は計画どまりになってしまいました。

たぶん7.62㎜仕様を開発して部隊使用承認を受けても、ターゲットとしている航空自衛隊が採用できない(財務省が予算を許可しない)から開発する意味がないという判断があったんでしょうね…。

個人的な思い入れ

航空自衛官で64式小銃に思い入れのある人はそれほどいないとは思いますが、私の場合は飛行機の整備員ながら基地警備訓練や市街地戦闘、閉所戦闘の訓練を受ける機会が多く、自衛隊のイラク派遣に伴うクウェートでの警備任務にも参加していたことがあるため、64式をはじめとして銃器を取り扱う機会が多かったので、文字通り命を預ける大事な相棒という風に思ってました。

一応、教育隊や部隊では一人につき一丁の銃が割り当てられてはいましたが、必ずしも訓練で自分の銃を使うとは限らず、その時々で違う銃を使うため、自分の銃に名前を付けたり、シリアルナンバーを覚えたりといったことはありませんでしたけどね。

とはいえ、今でも64式は好きな銃の一つ。

今でもサバゲ用に64式のエアガンが欲しいですし、昔販売されていたホビーフィックスのモデルガンも手に入れたいんですが、どっちも高いんですよね…。

エアガンの方は台湾のG&Gというメーカーから販売されていますが↓

本体だけで10万円近いのでなかなか踏ん切りがつかない!

モデルガンの方はかなり昔に絶版になり、今ではネットオークションでしか手に入れることができませんが、こちらは下手すると30~40万くらいになるため、実物の64式小銃の調達価格より高い!

高いのなんの言っているあたり、それほど思い入れもないような気もしないでもないですが、たぶん心のどこかで『しょせんおもちゃだからな…』なんて思ってるからなんでしょうね。

仮に本物の無稼働実銃が売りに出されていたら、借金してでも即決で買っていると思います。

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