航空無線通信士の試験対策:法規その33 国際法規(無線通信規則)

パイロットへの道のり

国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は国連の専門機関の一つで、国際電気通信連合憲章に基づき、無線通信と電気通信分野において各国間の標準化と規制を確立するために各種の規則を制定しています。

規則には

  • 国際電気通信連合憲章
  • 国際電気通信連合条約
  • 国際電気通信規則
  • 無線通信規則

といったものがあり、前回はITUの定める規則の中でも基礎となり最上位に位置する“国際電気通信連合憲章”について解説しました↓

今回は“無線通信規則”について、航空無線通信士試験の出題範囲となる航空無線通信分野の条文をメインに解説していきます。

Table of Contents

無線通信規則とは?

無線通信規則では、ITUが規定する各種規則に記載される無線通信に関する用語を定義するほか

  • 構成国の周波数の分配及び割り当て
  • 混信の防止
  • 無線設備の技術基準
  • 無線局の運用
  • 無線従事者の資格証明

について規定しています。

一番目にある“周波数の割り当て”は、構成国が勝手に決めれば良さそうな気もしますが、電波というのは発射される出力に関係なく、ありととあらゆる方向に飛んで行ってしまいますからね。

国際機関でバンドプランを設定しないと、思わぬところで混信や妨害が発生してしまうことになりかねません。

余談ですが、一旦発射された電波は地球上だけでなく宇宙の遥か彼方にまで飛んでいきます。

そのため、地球外に人類と同等かそれ以上に高度な科学技術を持つ生命体が存在した場合、地球人がまずしなければならないのは“混信を起こしてしまっているかもしれないことに対する謝罪”だと言われていたりします。

周波数の分配

周波数の分配は混信を防止するための最も簡単かつ重要な措置です。

無線通信規則 第5条 ※抜粋

周波数の分配のため、世界を3の地域に区分する

異なる目的で無線通信を行う無線局が、それぞれ異なる周波数を使用していれば、理屈の上では混信は起こらないはずですからね!

もちろん、実際には無線工学で解説したように↓

電離層反射や対流圏反射が起こるため、区域外に電波が伝搬してしまったり、周波数偏移が起きて近隣の区域に混信が発生したりすることもあるので完璧ではありませんが、一応この辺りも考慮に入れてバンドプランの編成をしているので、通常は混信が起こることはありません。

上の図はITUが規定している周波数の分配のための区分図です。

日本は第3区域(REGION3)に属しています。

混信

ITUは混信を防ぐために無線局の運用方法についても規定を設けています。

無線通信規則 第15条 ※抜粋

A 無線局からの混信

  1. すべての局は、不要な伝送、過剰な信号の伝送、虚偽の又は紛らわしい信号の伝送、識別表示のない信号の伝送を禁止する。
  2. 送信局は、業務を満足に行うために必要な最小限の電力で輻射する。
  3. 混信を避けるために

送信局の位置及び業務の性質上可能な場合には、受信局の位置は、特に注意して選定しなければならない。

②不要な方向への輻射又は不要な方向からの受信は、業務の性質上可能な場合には、指向性のアンテナの利点をできる限り利用して、最小にしなければならない

混信を防ぐための最も簡単な方法は“電波を発射しない”ことです。

もちろん無線通信を行うためには電波を発射しないといけませんが、不要な伝送をしなければ発射される電波はその分少なくなるので、混信を起こす可能性は減らせます。

また、送信局と受信局を設置する場所も混信を防ぐため注意して選定しなければならないとされ、受信する側に混信を起こさないよう、業務上必要最小限の電波のみ受信できるような受信設備にすることが求められています。

要するに、「わざわざ騒音の激しい場所に行って『騒音が酷いので何とかしてくれ!』とクレームをつけるな!」ってことです。

無線通信規則 第15条 ※抜粋

B 試験

16.航空無線航行業務においては、既に業務を開始した機器の点検又は調整のための発射に際して通常の識別表示を送信することは、安全上の理由から望ましくない。もっとも識別表示のない発射は、最小限に制限するものとする。

17.試験又は調整のための信号は、この規則又は国際信号書に定める特別の意義を持つ信号、略語等との混同が生じないように選定しなければならない

無線設備の試験を行う場合も、混信を起こさないように気を付ける必要があります。

航空無線航行業務とはVOR、DME、TACAN、ILSなどの無線標識の事ですが↓

これらの無線標識局を試験する場合は、通常とは異なる識別表示を行うように要求されています。

また、無線局の試験や調整を行う際に使用する識別信号は、ITUの規定する特別な意義を持つ信号や略語と混同しないように識別しなければなりません。

無線通信規則 第15条 ※抜粋

C 違反の通告

19.憲章、条約又は無線通信規則の違反は、これを認めた管理機関、局又は検査官から各自の主管庁に報告する。

20.局が行った重大な違反に関する申し入れは、これを認めた主管庁からこの局を管轄する国の主管庁に行わなければならない。

21.主管庁は、その権限が及ぶ局によって条約又は無線通信規則の違反が行われたことを知った場合には、事実を確認して責任を定め、必要な措置をとる。

国際電気通信連合憲章をはじめとするITUの規則に違反する運用をしている局があると認めた場合、自国の主管庁に報告を行います。

日本の場合はこちらで解説している通り↓

主管庁である総務省又は、総務省の地方部局である各地方総合通信局に報告します。

違反局が日本国内の局であれば、報告を受けた総務省が違反局に対して措置や処罰を行うだけなので話は簡単なのですが、これが海外の局だと少しややこしい。

ITUの規則に違反している海外の局を認めた場合

  1. 自国の主管庁に報告。
  2. 報告を受けた主管庁は違反局を管轄する国(相手国)の主管庁に対して、『貴国の局がITUの規則に反する運用をしている』といった旨の申し入れを行う。
  3. 相手国の主管庁は改めて違反局について事実確認を行う。
  4. 違反局に対して必要な措置をとる

といった感じで、違反局に対する是正勧告や処罰については、あくまで違反局の属する国の主管庁が行うこととされ、違反局の運用がその国において適法だとされた場合は何の是正も行われないことになります…。

まぁ、ITU構成国の電波法令は国際電気通信連合憲章をはじめとした規則に準拠するような形である程度標準化されていますので、『A国で違法な運用がB国では合法』シチュエーションはなかなか怒らないかもしれませんけどね。

許可書

無線通信規則 第18条 ※抜粋

1.送信局は、その属する国の政府が適当な様式で、かつ、この規則に従って発給する許可書が無ければ、個人又はいかなる団体においても、設置し、又は運用することができない。

4.許可書を有する者は、国際電気通信連合憲章及び国際電気通信連合条約の関連規定に従い、電気通信の秘密を守ることを要する。さらに、許可書には、局が受信機を有する場合には、受信することを許可された無線通信以外の通信の傍受を禁止すること及び、このような通信を偶然受信した場合には、これを再生し、第三者に通知し、又はいかなる目的にも使用してはならず、その存在さえも漏らしてはならないことを明示又は参照の方法により記載していなければならない。

ここでいう許可書は電波法で規定する“無線局免許状”に相当する『電波の発射による無線通信を許可する』書類のこと。

許可証には

  • 許可された無線通信以外の通信の傍受の禁止
  • 傍受した通信の第三者への通知の禁止
  • 通信の秘密を保護する義務

を記載するか、その根拠となる主管庁の法令を記載しなければならないとされています。

局の識別

無線通信規則 第19条 ※抜粋

1.すべての伝送は、識別信号その他の手段によって識別され得るものでなければならない。

2.虚偽の又は紛らわしい識別表示を使用する伝送は、すべて禁止する。

17.識別信号を伴う伝送については、局が用意に識別されるため、各局は、その伝送(試験、調整又は実験のために行うものを含む。)中にできる限りしばしばその識別信号を伝送しなければならない。もっとも、この伝送中、識別信号は、少なくとも1時間ごとに、なるべく毎時(UTC)の5分前から5分後までの間に伝送しなければならない。ただし、通信の不当な中断を生じさせる場合はこの限りではなく、識別表示は伝送の始めと終わりに示さなければならない。

識別信号(コールサイン)は、他の無線局と明確に区別できるものでなければいけません。

また、無線による通報の伝送中には、最低でも毎時55分から5分の間で識別信号を伝送しなければならないとされています。(※1時間以上連続した通報や放送を行う場合)

識別信号を伝送することによって通報が不当に中断されるような場合は、通報の始めと終わりに識別信号を示さなければいけません。

通信士の証明書

無線通信規則 第37条 ※抜粋

1.すべての航空機局及び航空機地球局の業務は、局の属する政府が発給し、又は承認した証明書を有する通信士によって管理されなければならない局がこのように管理されるときは、証明書を有する者以外のものも、その無線電話装置を使用することができる。

3. 

各主管庁は、証明書の不正使用をできる限り防止するために必要な措置を執る。このため証明書は、所有者の署名を付けてこれを発給した主管庁が確認する。主管庁は、自己の意志で写真、指紋等の識別法を採用することができる。

②証明書はその検査を容易にするために、必要な時には自国語の分の他、連合の業務用語の一つである訳文を付けることができる

4.各主管庁は、通信士を18条第4項に規定する通信の秘密に服させるために必要な措置を執る

ここでいう“通信士の証明書”は、電波法で規定する『無線従事者免許証』に相当するITU構成国の主管庁が発給する証明書のこと。

航空機局と航空機地球局は有効な証明書を交付された無線従事者によって管理・運用されていれば、証明書の無いものでも無線電話装置を使用することができるとされています。

無線従事者免許証の不正利用を防止するため、本人の署名のほか、各主管庁の判断で写真や指紋などを本人確認のために免許証に記載することができ、日本の場合は無線従事者免許証の表面に顔写真、裏面に署名が記載されています。

ちなみにアマチュア無線の場合は表面の顔写真のみで、本人署名はありません。

条文中にあるITUの業務用語は、英語、アラビア語、中国語、スペイン語、フランス語 及びロシア語(憲章第29条)で、無線従事者免許証には発給した国の公用語の他、これらの業務用語を併記することができ、日本の場合は免許の効力やITUの規定する無線通信士である旨を英訳した文章が、免許証の裏面に記載されています。

局の検査

無線通信規則 第39条 ※抜粋

  1. 航空機局又は航空機地球局を検査する、国の政府、又は権限のある主管庁の検査職員は、検査のため許可書の提示を要求することができる局の通信士又は責任者は、この検査を容易に行うことが出来るようにする。許可書は、要求がある場合には提示することが出来るように保管する。
  2. 検査職員は、権限のある当局が交付した証票又は記章を所持しなければならず、航空機の責任者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
  3. 許可書が提示されないとき、又は明白な違反が認められるときは、政府又は主管庁は、無線設備がこの規則によって課される条件に適合していることを自ら確認するため、その設備を検査することができる

構成国の政府や主管庁の検査職員は、無線局の検査のために無線局の許可書(免許状)の提示を求めることができ、無線局の通信士(主任無線従事者や無線従事者)は、検査が容易に行えるようにしなければなりません。

検査対象の無線局の許可書が提示されない場合や、電波法令への明確な違反が認められる場合には、その無線設備が法令に適合していることを確認するため、構成国の政府や主管庁はその無線設備を検査職員に検査させる権限を有します。

局の執務時間

無線通信規則 第40条 ※抜粋

1.航空移動業務及び航空移動衛星業務の各局は、協定世界時(UTC)に正しく調整した正確な時計を備え付ける

2.航空局又は航空地球局の執務は、その局が飛行中の航空機との無線通信業務に対して責任を負う全時間中無休とする。

3.飛行中の航空機局及び航空機地球局は、航空機の安全及び正確な飛行に不可欠な通信上の必要性を満たすために業務を維持し、また、権限のある機関が要求する聴守を維持する。さらに、航空機局及び航空地球局は、安全上の理由がある場合を除くほか、関係の航空機局又は航空地球局に通知することなく聴取を中止してはならない

航空機局や航空機地球局には、協定世界時(UTC)に正しく調整した正確な時計を備えつけなければならないとされています。

飛行中には航空機を安全で正確に運航するために必要最低限の通信を行うことが求められ、安全上の理由がない限りは無線通信の聴取を中止してはいけません。

電波法でも同じように↓

飛行中の無線局の常時運用や、聴守義務を定めています。

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