航空無線通信士の試験対策:法規その27 時計と時刻

パイロットへの道のり

たまにネットオークションなんかでコクピットに取り付けられていた時計が出品されることがありますが、時計は飛行機を飛ばすには無くてはならない重要なアイテム!

何も考えずに適当に飛ばすだけなら時計なんか無くてもいいんですが、地文航法や推測航法をするときは、ある地点からの飛行距離を機体の移動速度と経過時間から推定するのに必要なので、コクピットに時計が無いと迷子になってしまいます…。

そして航法以外にも、無線局を運用する上でも時計は重要な存在。

ということで、今回は無線局を運用する上で必要となるアイテムの一つ、時計について解説していきます。

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時計

無線局への時計、業務書類等の備付けは電波法第60条で定められていて、その詳細については電波法施行規則や無線局運用規則にて定められていますが、時計は無線局運用規則で次のように規定されています。

無線局運用規則 第3条(時計)

電波法第60条の時計は、その時刻を毎日一回以上中央標準時又は協定世界時に照合しておかなければならない。

条文中にある“中央標準時”というのは、協定世界時を9時間進めた日本の標準時間のことで、昔は“日本標準時”なんて呼ばれていました。

“協定世界時”というのは、原子時計を使って精密に計測、管理された世界の時間の基準となるもので、昔は世界標準時なんて呼ばれていました。

無線局への時計の備え付けが義務付けられている法的な根拠は上記の電波法第60条になるわけですが、そもそもの話でなぜ時計を置かなければならないのか?

これは災害発生時や、船舶や航空機が遭難した際の捜索救難活動を行う際に一定の時間ごとに“沈黙時間(サイレンスタイム)”を設定するためなんだそうで。

捜索救難活動では、救難周波数に多くの無線局がアクセスすることになるため、救助に向かう人達の通信によって救助を求めている無線局の通信が埋もれてしまうなんてことがあります。

それを防ぐため、電波法で海岸局と義務船舶局で毎時15・45分から3分間(第1沈黙時間)、毎時0・30分から3分間(第2沈黙時間)が規定され、その時間は遭難通信、緊急通信以外の通信は行わないと定められていました。

とはいえ、各無線局の時計がバラバラの時間を示していてはせっかく沈黙時間設定してもを意味がないですし、そもそも時計が無ければ肝心の沈黙時間がいつなのかが分からない…。

そこで、無線局には必ず時計を設置して、毎日1回以上は各国の標準時や協定世界時に合わせると定められているわけですが…。

沈黙時間を示す船舶局用の時計(Wikipediaより)

2021年現在では、GMDSS(世界海洋遭難安全システム)の制度や遭難信号を発信する非常用位置指示無線標識装置が普及したため、電波法と関連法令からは沈黙時間の規定が削除されています。

といっても、実際に遭難や緊急事態が発生すれば宰領局から通信の沈黙を指示されることはあるでしょうし、具体的な沈黙時間を示されることがあるでしょう。

それに過去の記事でも触れていますが↓

無線局の呼出しや応答のタイミングに関して、具体的な時間を規定している条文もありますし、即座に応答できない場合は『分で表す概略の待つべき時間を送信する』なんて規定もあります(無線局運用規則 第22条)。

こういった理由などから、沈黙時間に関する規定が削除された現在においても、無線局には時計を設置しておかなければいけない訳です。

時刻

無線局への時計の設置が義務付けられていても、時間が正確でなければ設置している意味がありません。

前述の無線局運用規則 第3条にあるとおり、“時刻は毎日一回以上中央標準時又は協定世界時に照合”するとなってはいますが、どちらの時刻に合わせるべきかについても法令による規定が存在します。

電波法施行規則 第40条(無線業務日誌)第3項

3.時刻は、次に掲げる区別によるものとする。

1.船舶局、航空機局、船舶地球局、航空機地球局又は国際通信を行う航空局においては協定世界時。(国際航空に従事しない航空機局もしくは航空機地球局であって、協定世界時によることが不便であるものにおいては、中央標準時によるものとし、その旨を表示すること。)

2.1以外の無線局においては、中央標準時。

日本国内の無線局同士で通信するなら日本時間である中央標準時で問題はありませんが、世界中を移動する船舶や航空機を相手にする場合、各々の無線局が母国の現地時間を使ってしまうと混乱を招くことになります。

このため、原則的には航空機局、航空機地球局、国際通信を行う航空局については協定世界時を使用することになっていますが、日本国内でしか運用されない航空機局と航空機地球局については中央標準時を使用してもよいことになっています。

ちなみに無線局に設置する時計には明確な技術的基準が規定されていません。

無線用の時計を用意する必要はないので、毎日1回以上手動又は自動で時刻規整を行っている秒針付きの時計なら何でもいいようで、腕時計でもコクピットクロックでも問題ないみたいですね。

完全に余談ですが、私が航空自衛隊にいた頃に整備していた飛行機のコクピットクロックは、国内での飛行が前提の戦闘機に搭載されている時計は中央標準時、海外への派遣が想定される輸送機は協定世界時で規整されていましたね。

余談ついでで航空自衛隊での時間の表し方についても触れておきましょう。

海外派遣が一般的になる前から、航空自衛隊では領空に接近又は侵入する国籍不明機に対する対領空侵犯措置(スクランブル発進)を行っていて、領空侵犯が行われた事実を記録に残すのに事案の発生から終結までの時間を記録しています。

時間の表し方にはいくつかの方法がありますが、たとえば日本時間の『午前8時35分』を表す場合…

  • “0835(マルハチサンゴー)”(自衛隊の標準的な表記)
  • “2335”(世界標準時24時間表記)
  • “PM 11:35”(世界標準時12時間表記)
  • “8:35 (UTC+0900)”(協定世界時との時差を含めた表記)
  • “0835(I)”(現地時間にタイムゾーンを追記)

といったものがありますが、航空自衛他の場合は一番最後の“現地時間にタイムゾーンを追記”といった表示の仕方をしています。

これは世界標準時をZとして、東経0度を基準に地球を東周りに15度、つまり時差1時間ずつ、
A(東経15°)、B(東経30°)、C(東経45°)…とアルファベットを割り振って行ったもので、日本標準時の基準となる東経135°子午線は9番目のアルファベットである“I”が割り当てられています。

この表示方法だと30分刻みの時差に対応出来ないのと、瞬間的な時差の計算がしずらいという欠点はありますが、経度15度ごとにアルファベットを一度覚えてしまえばいちいち時差の計算をしなくてもいいですし、国外で活動する場合には現地時間に現地のアルファベット付ければいいだけなので、書類上の表記が簡単にできるというメリットがあります。

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