航空無線通信士の試験対策:法規その23 遭難通信

パイロットへの道のり

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遭難通信

遭難通信は、「船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥った場合に遭難信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信」と規定され

  • 遭難呼出し
  • 遭難通報
  • 遭難通信終了

までの、遭難に関わる通信のすべてが該当します。

具体的には

  • 航空機の墜落の危機
  • 衝突事故
  • 火災

などが発生して“人命の安全が担保できなくなった場合”などに救助を受けるための通信として行われるものです。

ここで「遭難“通信”」と「遭難“通報”」という紛らわしい用語が出てきますが、これらの用語には

  • 遭難通信
    遭難呼出、通報、遭難通信の終了までの“遭難に関わる全て”の通信
  • 遭難通報
    遭難の場所や救助を容易にするための情報などの“遭難通信の一部を構成する”通信

という違いがあります。

遭難通信について電波法では以下のように規定しています。

電波法 第66条(遭難通信)

航空局、航空地球局、航空機局及び航空機地球局(以下「航空局等」という。)は、遭難通信を受信した時は、他の一切の無線通信に優先して、直ちにこれに応答し、かつ、遭難している船舶又は航空機を救助するために最も便宜な位置にある無線局に対して通報する等総務省令で定めるとことにより救助の通信に関して最善の措置を取らなければならない。

2.無線局は、遭難信号又は電波法第52条(1)の総務省令で定める方法により行われる無線通信を受信した時は、遭難通信を妨害するおそれのある電波の発射を直ちに中止しなければならない。

(※便宜な位置=都合のよい、その時に適している位置)

以前解説していますが、無線通信はその通信の内容によって優先順位が設定されています↓

遭難通信は、あらゆる通信の中でも最も優先順位が高い(無線局運用規則 第150条(通信の優先順位))と規定されているので、遭難通信を受信した航空機局等は、すべての通信に優先して応答しなければなりません。

また、遭難通信を妨害するおそれのある電波の発射を直ちに中止しなければならないとも規定されています。

遭難通信で使用する電波

遭難通信は全ての無線通信に優先して行うことが出来ますが、その遭難通信を行うための電波は法律によって定められています。

無線局運用規則 第168条(使用電波等)

遭難航空機局が遭難通信に使用する電波は、責任航空局又は交通情報航空局から指示されている電波がある場合にあっては当該電波、その他の場合は航空機局と航空局との間の通信に使用するためにあらかじめ定められている電波とする。

2.前項の電波は、遭難通信の開始後において、救助を受けるために必要と認められる場合に限り、変更することができる。この場合においては、できる限り、当該電波の変更についての送信を行わなければならない。

3.遭難航空機局は、第1項の電波を使用して遭難通信を行うほか、J3E電波2,182kHz又はF3E電波156.8MHzを使用して遭難通信を行うことができる。

法律上は遭難通信を行うことができるのは

  • 責任航空局又は交通情報航空局から指示された電波
  • 航空機局と航空局との間の通信に使用するためにあらかじめ定められている電波
  • J3E電波2.182kHz
  • F3E電波156.8MHz

とされ、好き勝手な電波では行えないようになっています。

もっとも、遭難航空機局の都合だけで適当な電波を発射したところで、その電波を誰かが受信している保証はありませんけどね…。

そう考えると、遭難の直前まで航空交通管制に使用していた電波か、航空交通管制用又は遭難通信用に公示されている電波を電波を使用して遭難通信を行うのが現実的です。

ただし、無線機の故障や、電波の干渉などで上記の電波を送受信できないなど、救助を受けるために電波の変更をする必要な場合に限っては、使用する電波を変更することができるとされています。

電波を変更する場合は、できる限り変更についての送信を行わなければいけません。

遭難通報の宛先と送信事項

航空アクションものの映画や航空機事故のドキュメンタリーを見ていると、緊急事態に陥ったパイロットが切羽詰まって手当たり次第にメーデーを発信しているように見えますが、実は遭難通信の宛先は法律によってきめられているので、手当たり次第にメーデーを送るのは間違いだったりします…。

無線局運用規則 第169条(遭難通報の宛先)

航空機局が無線電話により送信する遭難通報(海上移動業務の無線局に宛てるものを除く。)は、当該航空機局と現に通信を行っている航空局責任航空局又は交通情報航空局その他適当と認める航空局に宛てるものとする。ただし、状況により必要があると認めるときは、宛先を特定しないことができる

遭難通報の宛先として指定されているのは

  • 遭難直前まで通信を行っていた航空局
  • 責任航空局
  • 交通情報航空局

のいずれかです。

これらの航空局と通信を確立できない場合に備えてか、「状況により必要があると認めるときは、宛先を特定しないことができる。」とされていますが、現実的には遭難に至るまでの間に必ずどこかの航空局と通信を行っているので、わざわざ宛先を特定しないで遭難通信を行うことは無いんじゃないですかね?

無線局運用規則 第170条(遭難通報の送信事項等)第1項

電波法第169条の遭難通報は、遭難信号(なるべく3回)に引き続き、できる限り次に掲げる事項を順次送信して行うものとする。ただし、遭難航空機局以外の航空機局が送信する場合には、その旨を明示して、次に掲げる事項と異なる事項を送信することができる

1.相手局の呼出符号又は呼出名称(遭難通報の宛先を特定しない場合を除く)

2.遭難した航空機の識別又は遭難航空機局の呼出符号もしくは呼出名称

3.遭難の種類

4.遭難した航空機の機長のとろうとする措置

5.遭難した航空機の位置、高度及び針路

実際に遭難通信を行う場合の通信手順についても法令によって規定されています。

遭難通信を行う場合には

  1. 「遭難信号」あるいは「メーデー」と送信(なるべく3回)
  2. 遭難通信を送る相手局のコールサイン(“○○タワー”、“××コントロール”など)
  3. 遭難の種類(火災、衝突、機体の故障など)
  4. 機長の措置(針路や目的地の変更、緊急着陸、海上への不時着水など)
  5. 機体の位置、高度、及び針路

という手順で遭難通報を行うと規定されています。

基本的には遭難している航空機の航空機局が遭難通信を行うことになってはいますが、必要に応じて遭難している航空機に代わって他の航空機が遭難通信を行うことも出来ます。

イメージしやすいのは、陸地から遠く離れて電波の届かない洋上を飛ぶ航空機の中継を行うような場合でしょうね。

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