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関連通信の受信
航空局は自らの所属する航空無線電話通信網内で行われているすべての通信を受信する義務があります。
無線局運用規則 第163条(関係通信の受信等)
航空無線電話通信網に属する航空局は、当該航空無線電話通信網内の無線局の行うすべての通信を受信しなければならない。
航空無線電話通信網とは、一定の範囲で航空機局と2つ以上の航空局が同一の周波数で運用し、一体となって通信する系統のこと。
仮に区域内にA、Bの2つの航空局がある航空無線電話通信網内を“JA001”という航空機が飛んでいるとしましょう。
この時に“JA001”が”A航空局”と通信している場合、“B航空局”はその通信内容が自分の局と全く関係が無かったとしても、その通信が自らの属する航空無線電話通信網で行われている限り、この通信を必ず受信していなければいけません。
ただし、この規定は航空局(地上に設置されて航空機と通信することを目的として開設された無線局)に対するものなので、航空機局(航空機に搭載された無線局)は、航空無線電話通信網のすべての通信を受信する必要はありません。
この規定によって受信した通信が自らの航空局に関連する内容だった場合、該当する航空局はその通信を航空機局と行っていた航空局に対して受信証を送信しなければなりません。
無線局運用規則 第164条(関係通信の受信等)
前条の航空局は、航空機局が他の航空局に対して送信している通報で、自局に関係のあるものを受信した時は、特に支障がある場合を除くほか、その受信を終了した時から1分以内にその通信に係る受信証を当該他の航空局に送信するものとする。
2.前項の受信証を受信した航空局は、当該通信に係るその後の送信を省略しなければならない。
この規定にある受信証とは、“受信したことを証明する通信”のことです(無線局運用規則第37条)
具体的には
- 相手局の呼出符号:1回
- “DE”又は「こちらは」:1回
- 自局の呼出符号:1回
- “R”又は「受信しました」:1回
- 最後に受信した通報の番号:1回
を送ることで、受信証の送信となります。
先ほどの例え話で言うと、A航空局とJA001が通信中、B航空局の責任範囲に関連する内容の通信をしていたとしましょう。
B航空局は自分の責任範囲に係る通信であることを把握したら、1分以内にA航空局に対して受信証を送信します。
受信証を受けたA航空局はその後のJA001との通信をB航空局に移行します。
要するに通信の引き継ぎを行うための手続きです。
なかなか面倒な手順に見えますが、受信証が無いとなると…。
- A航空局からB航空局に対して無線呼出
- 「そちらの航空局の責任範囲の○○についてJA001と通信してください」とA航空局からB航空局へ依頼
- A航空局とB航空局の通信の終了手続
- A航空局とJA001の通信の終了手続
- B航空局からJA001に対して無線呼出
- 本題の通信
といった感じで余計に面倒な手続きをしなければならなくなってしまいます。
受信証を送信すれば、B航空局からA航空局とJA001に対して「該当する通信をこちらも受信している」と「以降はこちらで通信を行う」を同時に伝達できます。
受信証送信の特例
航空局は自らの属する航空無線電話通信網内での通信をすべて受信し、その通信が自局に関連する内容であれば、その通信を行っている他の航空局に対して1分以内に受信証を送信しなければならないとされていますが、航空無線通信の場合は受信証の送信に関する特例が設けられています。
無線局運用規則 第166条(受信証の送信の特例)
無線電話通信においては、通報を確実に受信した場合の受信証の送信は、次の(1)、(2)の区別に従い、それぞれに掲げる事項を送信するものとする。
(1)航空機局の場合
自局の呼出符号又は呼出名称:1回(2)航空局の場合
①相手局が航空機局であるとき
相手局の呼出符号又は呼出名称:1回(必要がある場合は自局の呼出符号又は呼出名称1回を付する)②相手局が航空局である場合
自局の呼出符号又は呼出名称:1回
(第164条第1項の規定による場合は当該航空機局の呼出符号又は呼出名称1回を付する)
無線局運用規則第37条の受信証の規定は航空無線通信だけではなく、すべての無線通信に適用されるものですが、移動速度が速い航空機で規定されている受信証を送信するのは合理的ではありません。
そこで航空無線通信については、受信証の送信に別の規定が定められています。
37条では受信証の送信に5つの手順が規定されていますが、航空無線の場合は
- 自局の呼出符号又は呼出名称:1回
(航空機局同士、あるいは航空局同士で受信証を送信する場合)
若しくは
- 相手局の呼出符号又は呼出名称:1回
(航空局から航空機局に受信証を送信する場合)
といった具合に、手順は1つだけと大幅に簡略化されています。
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