航空無線通信士の試験対策:法規その15 混信の防止と通信の秘密の保護

パイロットへの道のり

無線通信は遠く離れた相手と情報をやり取りする事が出来る便利な通信方式ではありますが、無線設備から発射された電波は四方八方を飛び交うため、取り扱い方法を間違えると簡単に他の通信を妨害してしまいます。

無線通信が発明されたばかりの頃ならいざ知らず、現在はテレビやラジオ放送だけでなく、携帯電話やWi-Fi、Bluetooth、カーナビのGPS、家電製品といった日常生活に密着したものや、工場の生産ラインや生活インフラの管理、病院の医療機器の監視など、あらゆる場所で様々な無線通信技術が使用されているので、混信や妨害を起こしてしまうと人命や財産に損害を与える可能が…。

また、意図的に第三者の無線通信を傍受した場合はもちろんのこと、うっかり混信させてしまった場合に聞いてしまったり話してしまった情報は、本来の送受信者の権利として守られていなければいけません。

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混信の防止​

ここでは「混信」を、他の無線局の正常な業務を妨害する電波の発射、輻射又は誘導の事と定義しています。

電波法 第56条(混信等の防止) ※条文の一部を抜粋の上改変

無線局は、他の無線局又は電波天文業務(宇宙から発する電波の受信を基礎とする天文学のための当該電波の受信の業務をいう。)の用に供する受信設備その他の総務省令で定める受信設備(無線局のものを除く。)で、総務大臣が指定するものにその運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければならない。ただし、第52条第1号から第4号までに掲げる通信遭難通信、緊急通信、安全通信又は非常通信)についてはこの限りでは無い。

遭難通信、緊急通信、安全通信又は非常通信といった、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持を目的とする通信を行う場合を除き、他の無線局や電波天文台の運用を阻害するような混信や妨害を与えないように無線局を運用しなければいけません。

混信を防ぐため、行政側の施策として電波の用途別に使用周波数帯を分類したバンドプラン(使用周波数区分)が設定され、無線局ごとに使用周波数や電波の形式、空中線電力を免許していますが、無線従事者も混信を起こさないように無線設備を操作・運用する必要があります。

 

疑似空中線回路の使用​

送信機などの試験や調整を行う場合、送信機に実際のアンテナを接続すると電波が放射されてしまい、他の無線局に妨害を与える可能性があります。

そこで、実際に使用するアンテナと等しい抵抗、インダクタンス、キャパシタンスの特性を持つ疑似空中線回路(ダミーロード)を送信機に接続することで、電波を放射することなく送信機などの無線設備の試験、調整を行うことができるわけです。

試験や調整の際の疑似空中線回路の使用は電波法にも規定されています。

電波法 第57条(疑似空中線回路の使用)

無線局は、次に掲げる場合には、なるべく擬似空中線回路を使用しなければならない。

1.無線設備の機器の試験又は調整を行うために運用するとき
2.実験等無線局を運用するとき

正式に免許が交付される前の予備免許での試験の時や落成検査でも試験電波を発射することが出来ますが、不必要に電波を発射して混信を起こさないよう、送信設備の試験を行う際には可能な限り疑似空中線回路を使用しなければいけません。

ここからは試験とはあまり関係ありませんが、疑似空中線回路は送信機から送り込まれた高周波電流を熱に変換するというアイテムで、送信機の送信出力に応じて様々な形状や大きさのものがあります。

アマチュア無線のハンディー機や車載機用の小型の無線機用の疑似空中線回路はAmazonや楽天なんかでも買えますし↓

町の無線屋さんにでも行けば必ず売っているほどの定番アイテムです。

業務用の大出力の無線設備に使われる疑似空中線回路は流石に見たことがありませんが、ヒートシンクでは間に合わないので水冷式の大掛かりな物を使うなんて聞いたことがありますね。

通信の秘密の保護​

日本国憲法第21条では表現の自由と共に通信の秘密が保護されています。

日本国憲法第21条

1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

“通信の秘密の保護”とは、通信内容が他人に知られないことを保証するもので、日本国憲法に基づいて制定された電波法においても秘密の保護が規定されています。

電波法 第59条(秘密の保護)

何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在もしくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。

条文中の「法律に別段の定めがある場合」とは、犯罪捜査など公共の治安の維持を目的としたものです。

また、「傍受」は自分宛でない無線通信を積極的な意志をもって受信することを、窃用」は通信の存在、内容を発信者又は受信者の意志に反して自分または第三者のために利用することをいいます。

電波法は基本的には無線設備や無線従事者に対して適用される法律なんですが、通信の秘密の保護を規定する第59条に関しては、条文冒頭に“何人も”とあるように、無線従事者だけでなく国民及び日本国内に滞在するすべてに人に対して適用されます。

なお、違反者には処罰規定があり↓

電波法 第109条(罰則)

無線局の取り扱いに係る無線通信の秘密を洩らし、又は窃用したものは1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する

2.無線通信の業務に従事する者がその業務に関し知りえた前項の秘密を漏らし、又は窃用した時には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する。

無線通信業務に従事する人は、そうでない人よりも重い罰則が科せられます。

ちなみに、無線通信の傍受自体は違法では無く、飛行場の周辺で航空無線(エアバンド)を聞くこと自体に違法性はありません。

受信専用の無線機や、航空無線の周波数を網羅した“航空無線ハンドブック”なんてものが販売されてるくらいですからね↓

ただし、受信した通信が特定の相手方を対象とする内容の場合、これを第三者に漏らすことは違法なので『次に着陸するのは○○航空の××便だよ!』ってな感じで周囲の人に教えたり、​受信した音声をYoutubeなどのSNSにアップするとアウトです!

ちなみに航法用に使用されるNDBの識別信号や、空港の気象状況などを提供するための(ATISAutomatic Terminal Information Service 飛行場情報放送業務)の放送内容など、不特定の相手を対象とする無線放送であれば、第三者に情報を漏らしても違法性は無いとされています。​

まとめ

限りある電波資源を有効かつ効率よく利用するため、無線局は、他の無線局や電波天文台などの受信設備の運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければいけません。

混信の防止は無線設備の普段の運用の時だけではなく、無線設備の機器の試験又は調整を行うために運用するときや、実験等無線局を運用するときにも要求されます。

このため、無線設備の試験などを行う際には、実際のアンテナの代わりに疑似空中線回路を使用することで不要な電波の発射を押さえなければいけません。

電波を有効に利用するためには通信の秘密を保護することも大事なことなので、電波法では“何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在もしくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。”と規定しています。

この規定に違反して無線局の取り扱いに係る無線通信の秘密を洩らし、又は窃用した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が、無線通信の業務に従事する者がその業務に関し知りえた前項の秘密を漏らし、又は窃用した時には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

次回は航空機に搭載することが義務付けられている“義務航空機局”の機能試験についての規定を解説していきます。

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