一番身近な免許証である“運転免許証”は、免許試験場で学科試験を受験して合格すると即日で免許証が交付されますが、“無線従事者免許証”は国家試験や無線従事者養成課程などを修了後に総務省や各地方の総合通信局に免許の申請をしないと免許証を受け取ることが出来ません!
まぁ、実際には運転免許証も手続きとしては試験の前に免許証発行の申請をしているので、試験に合格しただけでは免許証を貰えるわけでは無いんですけどね…。
という訳で今回は無線従事者免許証の交付や再発行等の免許証の取り扱いについて解説していきます。
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免許の申請
無線従事者の国家試験に合格し、免許を受けようとする人は、所定の様式の申請書に次に掲げる書類を添えて、総務大臣又は総合通信局長に提出します。
- 氏名及び生年月日を証明する書類(住民票の写し、戸籍抄本、印鑑登録証明等)
- 医師の診断書(総務大臣又は総合通信局長が必要と認める場合)
- 写真1枚(6カ月以内に撮影された上三分身で縦30㎜×横24㎜のもの)
所定の様式の申請書というのは“無線従事者免許/免許証再交付申請書”というもので↓

総務省の“電波利用ホームページ”からダウンロード出来ます↓
申請書には
- アマチュア無線技士用
- 無線通信士・第1級海上特殊無線技士用
- 陸上無線技術士・特殊無線技士(第一級海上特殊無線技士以外)用
の3種類があるので間違えないようにしましょう!
航空無線通信士の免許の申請には2番目の申請書を使用します。
国家試験合格者は受験番号を申請書に記載するだけでOKですが、無線従事者養成課程を修了した人の場合は、養成課程の修了証明書も合わせて添付することになっています。
免許の欠格事由
無線従事者国家試験に合格、又は養成課程を修了していても、電波法の規定に該当する人には無線従事者免許証が交付されないことがあります。
電波法 第42条(免許を与えられない場合) ※一部改変
次の各号のいずれかに該当する者に対しては、無線従事者の免許を与えないことができる。
- 電波法第9章(罰則)に記載された罪を犯し罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者。
- 電波法第79条(無線従事者の免許取消し等)の規定により無線従事者の免許を取り消され、取消しの日から2年を経過しない者。
- 著しく心身に欠陥があって無線従事者たるに適しない者。
この辺りの規定は無線設備に与えられる無線局免許状に規定されている“反社会性排除”を目的とした欠格事由”や↓
主任無線従事者の非適格事由↓
と似たようなことが規定されています。
無線従事者免許証の場合は
- 電波法第9章(罰則)に記載された罪を犯し罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない
- 電波法第79条(無線従事者の免許取消し等)の規定により無線従事者の免許を取り消され、取消しの日から2年を経過しない
という人は、国家試験に合格するだけの知識や技能があっても、既定の年数(2年)が経過するまでは取り消された免許の再免許も含め新たに免許が交付されない可能性がありますが、法律の上では“与えないことができる”となっているので、免許を与えることを制限しているわけではありません。
情状や状況によっては免許が与えられるかもしれませんが、その判断は総務省か各地方の総合通信局が行うんでしょうね。
無線従事者免許証の交付
免許の申請を行い、総務省や総合通信局無いでの審査の結果無線従事者の欠格事項の該当しないと判断されると、総務大臣又は総合通信局長は免許証を交付します。
航空無線通信士の免許証ではありませんが、参考に私が昔取得した第4級アマチュア無線技士の免許証を貼り付けてみました↓

記載事項はほぼ個人情報なので殆ど黒塗りになってしまい、あまり参考にならないかもしれませんが…。
アマチュア無線技士も航空無線通信士も免許証のフォーマットは同じで、クレジットカードサイズのプラスチックのカード型免許証にほぼ同じ項目が記載されます。
違いは免許の種別の部分と交付者くらいですかね?
航空無線通信士の免許は総合通信局長ではなく、総務大臣が交付します。
無線従事者免許証には運転免許証のような有効期限が無いので更新手続きはありません。
また、一部の免許のように免許証を維持するために無線設備を操作した実績を証明する必要も無いため、電波法違反などで免許取消の処分を受けない限り免許は生涯有効となります。
ということは、免許証の本人写真も取得した時から変わらない訳で、子供の頃にアマチュア無線技士を取得した人の免許証の写真はずーっと子供の頃のまま…。
アマチュア無線技士とは言え、免許証自体は本人確認のための法的に有効な書類とみなされているんですが、写真が現在の本人と一致しないのは大丈夫なんですかね?
免許証の携帯義務
運転免許証に限った話ではありませんが、免許証というのが原則的に免許された行為や業務に従事している時は携帯していなければいけません!
無線設備を操作する際には無線従事者免許証を携帯する義務があります。
電波法施行規則 第38条(備え付けを要する業務書類) 第10項
無線従事者は、その業務に従事しているときは免許証を携帯していなければならない。
免許証の再交付
何らかの理由で氏名が変わって免許証の記載事実を変更する必要がある場合や、免許証の汚損、破損、紛失があった場合は、無線従事者免許証の再交付を受けることができます。
再交付を受けようとするときには、所定の申請書に次に掲げる書類を添えて総務大臣又は総合通信局長に提出しなければいけません。
所定の申請書というのは、免許の交付を受ける時にも提出している“無線従事者免許/免許証再交付申請書”なんですが、電波利用ホームページでは“免許の申請”と“免許の再交付”は別の書類になっているので、再交付の手続きをするときには間違えないように気を付けましょう!

再交付の手続きのために添付する書類は
- 無線従事者免許証(紛失した場合を除く)
- 写真1枚
- 氏名の変更の事実を証明する書類(氏名が変更した場合のみ)
となっています。
運転免許証には住所の記載があり、引っ越しをした場合には免許証の書き換え手続きが必要になりますが、無線従事者免許証には住所の記載がありませんので引っ越しても免許証の再交付を受ける必要はありません。
私は一度無線従事者免許を紛失してしまったため再交付の手続きを受けたことがあるんですが、手続き開始から免許証の再交付を受けて手元に届くまで1カ月くらいかかった記憶があります。
免許証が手元に無い間は当然ですが無線設備の操作はできません!
アマチュア無線だったので無線設備の操作ができなくても特に問題はありませんでしたが、これが職業上必要になる免許証なら、その間仕事が出来なくなってしまいますので、絶対に紛失できませんね!
免許証の返納
免許の取消しや紛失による再交付後に免許証を発見した場合などは、無線従事者免許証を返納しなければいけません。
無線従事者規則 第51条(免許証の返納)
無線従事者は、免許の取消しの処分を受けた時は、その処分を受けた日から10日以内にその免許証を総務大臣又は総合通信局長に返納しなければならない。
免許証の再交付を受けた後、失った免許証を発見した時も同様とする
2.無線従事者が死亡し、又は失踪の宣告を受けた時は、戸籍法による死亡または失踪の届け出義務者は遅滞なくその免許証を総務大臣又は総合通信局長に返納しなければならない。
免許証の返納は
- 免許取り消し処分を受けた場合
- 無線従事者が死亡、又は失踪した場合
- 免許証の汚損、破損によって再交付を受けた場合
- 免許証の記載事実が変更となった場合
- 免許証の紛失により再交付を受けた後で、紛失した免許証を発見した場合
があります。
勘違いしやすいのが“紛失した免許証を発見した場合”に返納する免許証で、この場合は「発見した古い方の免許証」を返納します。
落ち着いて考えてみればそこまで難しい話でもありませんが、行政機関の発行する書類は法律に特別の定めがない限り発行日の新しい方が効力を持ちます。
紛失した免許証と再発行した免許証のどちらが新しいかといえば、言うまでもなく再発行した免許証の方ですよね?
つまり、再発行を受けた時点で、紛失した免許証は効力を失ってしまっているので、紛失した免許を手元に残して再発行した免許証を返納してしまうと無効な免許で無線設備を操作することになり、電波法施行規則第38条に違反することになります。
まとめ
今回は無線従事者免許証の交付から返納までの免許証の取り扱いや手続きについて解説しました。
無線従事者国家試験に合格、あるいは養成課程を修了したならば、総務大臣又は総合通信局長に申請して免許を交付してもらう必要があります。
申請を受理した総務大臣と総合通信局長は
- 電波法第9章(罰則)に記載された罪を犯し罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない
- 電波法第79条(無線従事者の免許取消し等)の規定により無線従事者の免許を取り消され、取消しの日から2年を経過しない
という人には免許を与えない場合がありますが、これらの欠格事由に該当しなければ免許証が交付されます。
免許証が交付されると無線設備を操作することが出来るようになりますが、無線従事者が無線設備を操作する際には免許証を携帯していなければいけません。
免許の取り消し処分を受けた場合には処分を受けた日から10日以内に免許証を総務大臣又は総合通信局長に返納しなければいけません。
免許証を紛失により再交付を受けた後、紛失した免許証を発見した場合も同様に免許証を総務大臣又は総合通信局長に返納します。
また、無線従事者が死亡あるいは失踪した場合には、遅滞なく免許証を総務大臣又は総合通信局長に返納しなければいけません。
これで無線局と無線従事者の免許について一通りの解説は終わり、無線局の運用の具体的な解説に移っていきます。
次回は無線局の“目的外使用の禁止”についてです。
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