航空無線通信士の試験対策:法規その9 無線従事者

パイロットへの道のり

無線局が電波を発射するためには、無線局開設の申請を行って“無線局免許状”を受けなくてはならず↓

免許を受けた無線設備を操作して電波を発射するには“無線従事者”でなければなりません。

今回は無線局を操作する“無線従事者”について解説します。

Table of Contents

”無線従事者”とは?

電波には拡散性があるので、誰もが好き勝手に無線設備を操作し、複数の局が同じ周波数を使用してしまうと混信などを起こして正しい情報を伝えることができなくなったり、伝えるべき相手に情報が伝わらなくなったりしてしまいます。

これを防ぐため、無線局や放送局などの無線設備は総務大臣の検査を受けたうえで無線局免許状が与えられているわけですが、総務大臣から免許された無線局であっても無線従事者でなければ操作できないように規定されています。

無線従事者は、電波法第2条(6)において

無線従事者」とは、無線設備の操作又はその監督を行う者であって、総務大臣の免許を受けた者をいう

と定義され、無線設備を操作するためには適切な「無線従事者免許証」を取得して無線従事者になる必要があります。

現在の制度では無線設備の操作範囲や、放送区域、目的などに応じて↓

  • 総合:1~3級総合無線通信士
  • 海上:1~4級海上無線通信士、1~4級海上特殊無線技士、レーダー級海上特殊無線技士
  • 航空:航空無線通信士、航空特殊無線技士
  • 陸上:1~2級陸上無線技士、1~3級陸上特殊無線技士
  • アマチュア:1~4級アマチュア無線技士

の、23種類に分けられています。

これらの免許のうち航空機に搭載された無線設備の操作、あるいは航空機に搭載された無線局と通信するためには

  • 第1級総合無線通信士
  • 第2級総合無線通信士
  • 航空無線通信士
  • 航空特殊無線通信士

のいずれかが必要になりますが、航空特殊無線技士に関しては他の免許よりも業務可能な範囲が狭く

  • 航空運送事業に使用されている航空機との通信が出来ない
  • 空中線電力50W以下の無線設備で25010kHz以上の周波数の電波を使用するものに限る

といった制限事項が設けられています。

ちなみにアマチュア無線を飛行中の航空機の中から運用することも出来ますが、アマチュア無線局は実験を目的としたアマチュア業務での運用に限定されるため、アマチュア無線技士の資格では航空交通管制機関と通信することは出来ません。

無線設備の操作ができる人

上記の通り、法律上は無線設備を操作するは無線従事者でなければならないとされていますが、実は無線従事者でなくても無線設備の操作を行うことが出来ます。

電波法 第39条(無線設備の操作) ※抜粋

電波法第40条(無線従事者)の定めるところにより無線設備の操作を行うことができる無線従事者以外のものは、無線局(アマチュア無線局を除く。)の無線設備の操作監督を行う者(以下「主任無線従事者」という。)として選任された者であって、第4項の規定によりその専任の届け出がされた者により監督を受けなければ、無線局の無線設備の操作(簡易な操作であって総務省令で定めるものを除く。)を行ってはならない。ただし、船舶又は航空機が航行中であるため無線従事者を補充することができないとき、その他総務省令で定める場合はこの限りではない。

2.モールス符号を送り、又は受ける無線電信の操作その他総務省令で定める無線設備の操作は、前項本文の規定にかかわらず、第40条の定めるところにより、無線従事者でなければ行ってはならない。

3.主任無線従事者は、第40条の定めるところにより無線設備の操作の監督を行うことができる無線従事者であって、総務省令で定める事由に該当しない者でなければならない。

4.無線局の免許人等は、主任無線従事者を選任した時は、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。これを解任した時も、同様とする。

5.前項の規定によりその先任の届出がされた主任無線従事者は、無線設備の操作の監督に関し総務省令で定める職務を誠実におこなわなければならない

6.第4項の規定によりその専任の届出がされた無線従事者の監督の下に無線設備の操作に従事する者は、当該主任無線従事者が前項の職務を行うために必要であると認めてする指示に従わなければならない。

法律の文章は回りくどい言い回しなので何が言いたいのか理解しづらいですが、噛み砕いて行くと…。

アマチュア無線局以外の無線局の無線設備を操作できるのは

  • その無線局の運用目的に適合する無線従事者免許証を持つ者
  • 無線従事者を持つ者の中から選任された「主任無線従事者」
  • 主任無線従事者による無線設備の操作の監督を受ける者

と規定されているので、主任無線従事者が無線設備の操作を監督していれば無線従事者以外でも無線設備を操作することが出来るほか、船舶又は航空機が航行中で無線従事者を補充することができない場合や総務省令で定める場合には、無資格者が無線設備を操作することができます。

航空無線通信士や航空特殊無線技士の免許を持っていないパイロット訓練生が、航空無線通信士や航空特殊無線技士の免許を持つ飛行教官の監督の下で無線設備を操作したりできるのは、この法律が根拠となるわけです。

この場合パイロット訓練生が無線設備を操作できるのは教官が同乗している時だけですので、訓練生が航空無線通信士又は航空特殊無線技士の免許を取らなければ、単独で飛行訓練に出ることはおろか、駐機場から滑走路に移動することすらできません。

そうなると操縦士の資格を得るための実地審査を受けるどころか、実地審査を受けるために必要となる訓練生単独での飛行訓練が行えませんから、フライトスクールに入校する前に航空無線通信士か航空特殊無線技士の免許を取得しておく必要があります。

 

無線従事者でなければできないこと

選任を受けた主任無線従事者の監督の下であれば、無線の免許を持たない人でも無線設備の操作、つまり電波の発射が出来るわけですが、監督下にあれば何でもかんでも出来るという訳ではありません。

電波法施行規則 第34条の2(無線従事者でなければ行ってはならない無線設備の操作) 

電波法第39条第2項の総務省令で定める無線設備の操作は、次の通りとする。

1.海岸局、船舶局、海岸地球局又は船舶地球局の無線設備の通信操作で遭難通信、緊急通信又は安全通信に関するもの

2.航空局、航空機局、航空地球局又は航空機地球局の無線設備の通信操作で遭難通信又は緊急通信に関するもの

3.航空局の無線設備の通信操作で次に掲げる通信の連絡の設定及び終了に関するもの(自動装置による連絡設定が行われる無線局の無線設備のものを除く。)
(1) 無線方向探知に関する通信
(2) 航空機の安全運航に関する通信
(3) 気象通報に関する通信((2)に掲げるものを除く。)

4.前各号に掲げるもののほか、総務大臣が別に告示するもの

無線従事者でないとできないことは、電波法第39条と、上記の電波法施行規則第34条の2に規定されています。

これらを纏めると

  • モールス符号を送り、又は受ける電信業務
  • 安全通信、遭難通信又は緊急通信に関するもの
  • 航空機の航法と交通管制に関するもの

については、操作する無線設備に対応した免許証を保有する無線従事者でなければできません。

モールス符号の送受信はともかくとして、遭難通信や緊急通信は非常事態でのことですし、無線従事者でないとできないのもなんだか不思議な話。

電波法や関連する規則で無線設備に求める一般的な条件について解説した記事で↓

航空機用救命無線機に求められる条件に

取り扱いについて特別の知識又は技能を有しない者にも容易に操作できるものであること。

なんて規定があり、これと矛盾しているような気がしますが…。

無線設備の“取り扱い”や“操作”というのは電波を発射するだけではなく、送信周波数や変調方式、送信出力の設定といったものも含まれるかなり広範なもの。

救命無線機はあらかじめ設定された出力で緊急周波数を送信できるように固定され、電波の性質を変更することが出来ないようになっています。

使う時は電源を入れて送信ボタンを押すだけでいいため、誰でも簡単に使えるようになっている、というか、意図的にこのような構造にして知識又は技能を有しない者にも容易に操作できるようにしているわけです。

一方で、電波法施行規則第34条の2に規定する“遭難通信又は緊急通信”というのは、航空機に搭載された航空交通管制用などの無線機を使用しての通信になります。

緊急時には送信周波数や変調方式を変更する必要がありますし、状況によっては救難周波数以外の複数の周波数を使い分ける必要もあるでしょうし、変調方法も切り替えなければならないこともあるでしょう。

さらに国際的に定められている緊急時の通信プロトコルというものもあるので、救命無線機以外で遭難通信や緊急通信をが出来るのは、適切な知識を持つ無線従事者でなければならないと規定されているわけです。

まとめ

無線従事者とは無線設備の操作又はその監督を行う者であって、総務大臣の免許を受けたの事で、無線従事者の免許は無線局の目的や操作できる範囲別に23種類に区分されています。

電波法では無線設備の操作ができるのは

  • 無線局の運用目的に適合する無線従事者免許証を持つ者
  • 無線従事者を持つ者の中から選任された「主任無線従事者」
  • 主任無線従事者による無線設備の操作の監督を受ける者

と規定され、選任された主任無線従事者が無線設備の操作を監督をしていれば、無線従事者でなくても無線設備の操作が可能です。

また、船舶又は航空機が航行中であり、無線従事者を補充することが出来ない場合などには例外的に無資格者でも無線設備を操作することが出来ます。

ただし、無線従事者として免許を受けている者でなければできない操作として

  • モールス符号を送り、又は受ける電信業務
  • 安全通信、遭難通信又は緊急通信に関するもの
  • 航空機の航法と交通管制に関するもの

があり、主任無線従事者の監督下にある者はこれらの操作を行うことが出来ません。

このように主任無線従事者を選任する事で無線従事者以外のものでも無線設備の操作に携わることが出来るようになるわけですが、誰でも彼でも主任無線従事者に選任できるわけではありません。

次回は“主任無線従事者”の選任や解任、非適格事由ついて解説していきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました