航空無線通信士の試験対策:法規その8 施設の安全性

パイロットへの道のり

無線設備に一般的に求められている条件として、送信される電波の質や送信設備と受信設備の条件、そこからさらに航空機に搭載される航空交通管制用の送信設備と救命無線機に求められる様々な条件に付いて解説しましたが↓

電波法施行規則では送受信の性能だけでなく、施設設備としての安全性に関しても規定されています。

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安全施設​

無線設備は、人に危害を与えたり、物に損傷を与えないような施設であることが求められ、安全性を確保するために様々な規定があります。

当たり前の話ですが、無線設備を運用中にトラブルが発生し、それが原因で人を傷つけたり、他の施設や財産などに損傷を起こすようなことがあってはいけません。

電波法施行規則 第21条の2(無線設備の安全性の確保)

無線設備は、破損、発火、発煙等により人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えることがあってはならない。

また、発射する電波によって人や物件に危害を与えることを防止するための規定もあります↓

電波法施行規則 第21条の3(電波の強度に対する安全施設)第1項

無線設備には、当該無線設備から発射される電波の強度(電界強度、磁界強度、電力束密度及び磁束密度をいう。)が所定の値を超える場所(人が通常集合し、通行し、その他出入りする場所に限る)に取扱者のほか容易に出入りすることが出来ないように、施設しなければならない。

ただし、次の(1)から(4)に掲げる無線局の無線設備については、この限りではない。

(1)平均電力が20mW以下の無線局の無線設備

(2)移動する無線局の無線設備

(3)地震、台風、洪水、津波、雪害、災害、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生する恐れがある場合において、臨時に開設する無線局の無線設備

(4)(1)から(3)に掲げるものの他、この規定を適合するのが不合理であるものとして総務大臣が別に告示する無線局の無線設備

原則的には、無線設備を人が集まる場所や通路などに開設することは出来ません。

無線設備の運用中は送信設備からは電磁波が放射されているわけですが、無線局の目的によっては電子レンジと同じマイクロ波(SHF帯)を放出するため、電波の発射中にアンテナ目の前に立つと身体が煮えてしまいます…。

まぁ“煮えてしまう”というのは多少大げさではありますが、戦闘機に搭載するの火器管制レーダーや旅客機の気象レーダーの整備中、試験電波発射中にうっかりレーダーアンテナの前に工具を落としてしまい、これまたうっかりアンテナから数センチの所に手をかざしたら手に強烈な熱を感じたなんて話を聞いたことがあります。

『飛行中にそんな強力な電波を出していて地上にいる人は大丈夫なの?』なんて思うかもしれませんが、無線工学のレーダーの所でも触れている通り↓

“レーダーの探知距離は送信電力の4乗根に比例する”ので、言い換えればレーダーの送信部(イルミネーター)から離れると距離の4乗根に比例して急激にエネルギーが減衰します。

戦闘機が一般的に飛ぶ高度は分かりませんが、旅客機は10,000m前後の高度を飛ぶので、これらのレーダーの電波のエネルギーはほぼ無視できるほどに弱くなってますし、そもそも電波を地上に向けて照射しているわけではないので心配することは無いでしょう。

さらに、飛行機が地上にいる時はレーダー電波が出ないように設計されている飛行機もありますし、運用規定で離陸滑走開始の直前になって初めてレーダーの電源を入れるようになっている飛行機もあります。

という訳で航空機に搭載される無線設備の中でも特に強力なレーダーについてはそれほど心配することは無いことがわかりましたが、それでは地上の施設はどうなのか?

地上の施設の場合は航空機に搭載されるのように人との距離を取ることに無理があるので、まずは人の集まるような場所や、人が通るような場所には設置出来ないということになっています。

さらに無線設備を取り扱う関係者以外は送信施設に出入りできないよう、施設の周辺にはフェンスが設置され、施錠されて立ち入りが出来ないようになっているというのが一般的なんじゃないでしょうか?

とはいえ、すべての無線設備にこの規定が適用されているという訳ではありません。

出力が弱い無線設備であれば、放射されるエネルギー量が少ないのでそこまで神経質になる必要はありません。

平均電力が20mW以下とされていますが、これは家庭内や工場のIoTに使用されるWi-SUNやLPWAといった無線規格で使用される端末(20mW)や、ETC車載器(10mW)、特定小電力トランシーバー(10mW)の無線機が該当します。

ちなみにスマホは大体200mW、Bluetoothが100mWと意外と強い電波を出していますが、こちらは移動する無線局になるので、出力の低い無線局とは別の扱いです。

まぁ移動を前提として設計されている無線設備に対して、固定局と同様の安全対策をするというのもp合理的では無いですよね…。

また、各種の災害や暴動などが発生した時などに発生地に設置される臨時の無線局については、非常時の公共の福祉を増進するためにもなるべく急ぎで無線設備を設置する必要がありますし、免許される期間もごく短期間で目的が達成された時点で無線設備が廃止されるので、他の無線局とはまた違った扱いになります。

まとめ

無線設備は人に危害を与えたり、物に損傷を与えないような施設であることが求められ、安全性を確保するために様々な規定があります。

無線設備から発射される電波の強度が所定の値を超える場所(人が通常集合し、通行し、その他出入りする場所に限る。)に取扱者のほか容易に出入りすることが出来ないように、施設しなければいけません。

但し、

  • 平均電力が20mW以下の無線局の無線設備
  • 移動する無線局の無線設備

についてはこの限りではないとされていて、電波法の目的である“公共の福祉の増進”を阻害しないようにバランスがとられています。

次回は無線局を実際に操作する“無線従事者”とその資格や操作範囲について解説していきます。

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