航空無線通信士の試験対策:無線工学その22 アンテナ

パイロットへの道のり

前回は電波の性質と伝わり方(電波伝搬)について解説していきましたが↓

その電波を送りだしたり受け取ったりするのに必要不可欠なのが“アンテナ”です。

“大きなアンテナを使うと効率よく電波が受信できそう”なんて思ったりしがちですが、実はアンテナの大きさや長さというのは送受信する電波の波長によって決まります。

例えば地上波デジタルテレビ放送で使われる極超短波(UHF)のように、短い波長の周波数を受信するためのアンテナなら数センチ程度ですが、潜水艦が陸上の基地と通信するため使われる極超長波(ULF)や超長波(VLF)帯の電波は波長が長いので、アンテナは数㎞の長さになります。

それと、電波の偏波方法によってアンテナの向きを変えてやらないと受信効率も下がってしまいますし、アンテナには指向性というものも存在するので、『適当にその辺の針金を無線機に括り付ける』だけではアンテナの代わりにはならないんです…。

Table of Contents

アンテナの要素​

無線機器に使用するアンテナの長さや大きさは、使用する電波の波長によって決定します。

例えば…​

極超短波(VHF)→波長が短いので短いアンテナ

長波(LF)→波長が長いので長いアンテナ

​といっても、単純にアンテナの長さを波長に合わせればいいという訳では無く、同じ周波数帯の電波を受信するにしてもアンテナの種類によって最適な長さがあるのが難しい所。

さらにアンテナごとに入力インピーダンスや指向性、利得といった性能の違いがあるので、使用する電波の特性や通信の目的に応じた最適なアンテナを選択する必要があります。

一般的に使用されているアンテナには

  • 基本となる“半波長ダイポールアンテナ”のような線状アンテナ
  • 全方向性(無指向性)の“ブラウンアンテナ”のような接地アンテナ
  • 指向性の強い“八木アンテナ”のようなアレイアンテナ
  • レーダーや衛星通信に使用される“パラボラアンテナ”のような開口面アンテナ

といったものがあり、いずれの種類のアンテナにも効率よく電波を送受信できることが求められます。

入力インピーダンス

送受信機とアンテナを接続するためには給電線が必要になりますが、下の図の給電点abからアンテナを見た時のアンテナ自体の持つインピーダンスを入力インピーダンス、または給電点インピーダンスといいます。

入力インピーダンスはアンテナの大きさや長さに関係なく、アンテナの種類によって異なります。

指向性

放送局のアンテナのようにどの方向にも同じ強さの電波が放射されるアンテナ全方向性無指向性アンテナといいます。

一方で、八木アンテナやパラボラアンテナのように、アンテナからの角度によって放射される電波の強さが変わるアンテを、単一指向性アンテナといいます。

アンテナの指向性を考える場合、アンテナから放射される電波の電界強度が最大の点を1として、それ以外の場所との電界強度の差を相対的な値で示すと指向性や放射範囲が分かりやすくなります。

基本アンテナ​

半波長ダイポールアンテナ​

半波長ダイポールアンテナは名前の通り、アンテナの長さが電波の波長の1/2に等しい、非接地アンテナです。​​

アンテナに高周波電流を加えると、アンテナに流れる電流の分布は一定にはならず、下図のようになります↓

地面に水平に設置した半波長ダイポールアンテナからは水平偏波の電波が放射され、水平面内の指向性は下図のような8字形になることが知られています↓

地面に垂直に設置した半波長ダイポールアンテナからは垂直偏波の電波が放射され、水平面内の指向性は全方向性(無指向性)になります。

1/4波長垂直アンテナ

1/4波長垂直アンテナは、長さが電波の波長の1/4に等しい接地アンテナで、半波長アンテナを半分にし、片方の給電線を設置したものになります。

アンテナの電流分布は、アンテナ先端でゼロ、アンテナ基部で最大です↓

水平面内の指向性は全方向性(無指向性)で、接地抵抗が小さいほどアンテナの効率が良くなります。

実際のアンテナ

八木・宇田アンテナ

八木・宇田アンテナは複数の素子で構成され、前方から

  1. 導波器
  2. 放射器
  3. 反射器

の順に並べられています。

電波が来る、あるいは電波を送る方角に一番短い無給電素子の導波が配置され、ここで電波をアンテナの後方に導きます。

導波器の後ろに位置する素子が放射器で、これ自体は放射器自体は半波長ダイポールアンテナまたは折り返し半波長ダイポールアンテナです。

電波は送受信機に接続されている放射器で送受信しています。

放射器の後ろにある一番長い無給電素子は反射器といい、放射器の後方約1/4波長の位置に配置します。

八木・宇田アンテナの水平面の指向性は単一指向性で、導波器を増加することでさらに指向性が鋭くなります。

指向性を高めることでビームのようにまっすぐな電波を送ることが出来るため、狙った範囲のみに集中して電波を送ることが出来ますが、逆に受け取るときは指向性が強い方が余計な電波を拾わなくなるので、雑音が減って通信品質が向上します。

テレビ受信用の屋外アンテナに八木・宇田アンテナが使われ、導波器がいくつも付けられて魚の骨のようなっている受信感度を上げつつ余計な電波を拾わないようにするためですね。

このようにテレビ放送用のアンテナとして使われることが多いほか、短波(HF)から極超短波(VHF)までの送受信用に広く使われているので見覚えのある人も多いでしょう。

一般的にはアンテナというとこの形状をイメージする人が多いかもしれませんね。

スリーブアンテナ

同軸ケーブルの内導体を1/4波長だけ残し、長さが1/4波長の銅や真鍮などで作られたスリーブを取り付け、スリーブを同軸ケーブルの外導体に接続したアンテナをスリーブアンテナといいます。

主に垂直偏波のアンテナとして使用され、水平面内の指向性は全方向性(無指向性)、垂直面内の指向性は半波長ダイポールアンテナと同じ8字形になります。

スリーブアンテナの入力インピーダンスは半波長ダイポールアンテナと同じ約73Ωです。

超短波(VHF)帯や極超短波(UHF)帯のアンテナとして用いられています。

垂直方向に一直線に等間隔に多段接続すると垂直方向に高い利得が得られ、このアンテナをコリニアアレーアンテナといいます。

ブラウンアンテナ

スリーブアンテナの金属円筒を導線に代えても、スリーブアンテナと同様の動作をします。

スリーブの代わりに取り付けられた導線は地線と呼ばれ、地線を4本水平方向にそれぞれ90°間隔に開くとブラウンアンテナというアンテナになります。​​

ブラウンアンテナの水平面内の指向性は全方向性で、入力インピーダンスは約20Ωです。

用途はスリーブアンテナと同じですが、地線がアンテナの横方向に張り出すため、設置する際にはスリーブアンテナよりも広い空間が必要になります。

アルホードループアンテナ​

アルホードループアンテナは3/4波長の長さの金属板を三角形に折り曲げたものを、4個ループ状に配置したアンテナ​です。

アンテナの中央部にある点ABから給電されたとき、給電点から見ると両側に3/4波長づつ、合計1.5波長の導線(金属板)が接続されています。

上の図のようなアンテナだった場合、給電点Aの電流はアンテナの上下の金属板、給電点Bの電流は左右の金属板に流れます。

水平面内の指向性は全方向性、垂直面内の指向性は8字形です。

水平偏波用で広帯域性のVHF帯のアンテナで、VORの送信局に用いられています。

ディスコーンアンテナ​

ディスコーンアンテナは、導体円盤(ディスク:disk)と導体円錐(コーン:corn)で構成され、この構造が“discorn”という名前の由来となっています。

同軸ケーブルの内部導体を円盤の中央部に接続、外部導体を円錐部の一番上に接続しています。

水平面内の指向性は全方向性、垂直面内の指向性は8字特性の垂直偏波アンテナです。

給電点のインピーダンスは50Ωで、超短波(VHF)~極超短波(UHF)で使われるアンテナで、広い周波数を受信するのに適していることから、空港用や電波監視用に使用されています。

模式図では円盤と円錐で表され、実用化初期は実際に導体円盤と導体円錐を使ってアンテナを構成していたようですが…

Wikipediaより引用

現在は円盤導体と円錐導体の代わりにアルミパイプを円盤状、円錐状に配置したアンテナが使われています。

パラボラアンテナ

パラボラ(parabola)とは放物線を意味する単語。

放物線を軸の周りに回転させて作った面を放物面と呼び、パラボラアンテナは回転放物面の形をした反射器と、電波の発射と受信を行う一時放射器から構成されています。

一次放射器から発射された電波は反射器で反射されて平面波​として飛んでいき、逆に受信するときは放物面の形状で電波を1つの焦点に集めることが出来るため、焦点に一次放射器を置くことで指向性が強くなり、弱い電波でも受信することが可能になります。

また、パラボラアンテナの利得は反射器の面積に比例するので、開口面の直径Dが大きいほど利得が大きくなるという特徴があります。

​電波望遠鏡として使われているパラボラアンテナが数十mの直径を持つのは、利得を大きくして弱い電波でもキャッチ出来るようにするためです。

パラボラアンテナは波長の短いマイクロ波(SHF)用のアンテナとして、宇宙通信用送受信アンテナ、電波望遠鏡、衛星放送受信用などに使われています。

試験の出題傾向

航空無線通信士の試験では、今回解説したアンテナのうち

  • スリーブアンテナ
  • 八木・宇田アンテナ
  • アルホードループアンテナ
  • ディスコーンアンテナ
  • パラボラアンテナ

についての問題が1問出題されますが、これらの中でも“スリーブアンテナ”、“アルホードループアンテナ”、“ディスコーンアンテナ”について出題される傾向が比較的高いようです。

出題形式は

  • 正しい字句の選択(穴埋め)
  • アンテナについて書かれた記述の正誤選択

といったものが多いようです。

穴埋め、正誤選択共に必ずと言っていいほど出てくるのが“アンテナの長さ”、“偏波”、“指向性”、“周波数帯”についての記述!

ここを上手く纏めることが出来ればアンテナの問題もそれほど難しくはないかもしれません。

まとめ

無線機器で電波の送受信をするうえで絶対に必要なアンテナには色々な種類があり、使用する電波の周波数帯や偏波方式によって使い分けられています。

むかしラジカセのラジオのアンテナが壊れた時に、適当な長さに切った針金をつないだりしてましたが、あれでちゃんと聞こえたのはたまたま波長とアンテナ長がマッチしていたからだったんでしょうね。

今なら電波についての知識もあるので、ただ聞こえるようにするだけではなく、より良い音で聞こえるように最適なアンテナ長を割り出せますが、残念ながらそれほどラジオを聞くことも無いんですよねぇ…。

まぁアンテナの理屈を覚えるのはラジオを聞くためではなく、航空無線通信士の試験に合格するためなんですが、せっかくなら日常生活でも応用したいところですね。

次回は無線工学の最終回!

アンテナと送受信機を接続している“給電線”についてです。

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