航空無線通信士の試験対策:無線工学その21 電波の伝わり方

パイロットへの道のり

前回は無線機器を構成する要素の一つである“電源”について解説してみました↓

ひきつづき今回も無線機器を構成する要素の解説ということで、アンテナの解説しようと思ったんですが、アンテナの話をする前にまずはアンテナから発射される“電波”について解説していきます。

これが多少は分かってないとアンテナの解説に出てくる用語や公式の理解が難しくなりますからね…。

そうでなくても電波は目に見えないのでイメージがわかず、理解しづらいですから…。

Table of Contents

電波の性質​

電界と偏波面​

電波は電界と磁界が伴って存在し、真空中を光速度(3×10^m/s)で伝搬します

電界と磁界の振動方向は、どちらもそれぞれの進行方向に対して直交する内面にあり、互いに垂直になっているです。

このうち、電界の振動する面を偏波面といい、偏波面が波の進行方向に対して一定方向である場合直線偏波波面が時間と共に回転する場合円偏波といいます。

直線偏波には、磁界が地面に対して水平となる水平偏波と、磁界が地面に対して垂直になる垂直偏波があります。

航空無線通信士の試験では触れられていませんので深堀しませんが、水平偏波と垂直偏波にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、無線機器の用途に合わせて最適なものが選択されています。

また、偏波面は電波の受信に影響するので、受信効率を良くするためにアンテナの向きは電界の振動方向に一致させています。

街中を歩きながら注意深く探してみると色々な所にいろいろな種類のアンテナが建てられていますが、あのアンテナも思い付きで適当に建てある訳ではなく、最適な受信効率となるよう発信元のアンテナの偏波に合わせて建てられてるわけです。

電波の周波数と波長​

電波に限らず波の性質を持つものすべてに当てはまることですが、一つの波の繰り返しに要する時間周期(Tといい、1秒間に起こる波の繰り返し周波数(fといいます。

周期の単位は(s)、周波数の単位は(Hz)で表すので、“1秒間に1周期の波”であれば“1Hz”となりますね。

周期T(s)と周波数f(Hz)は逆数の関係にあるため、“= 1 / f”、“ f = 1 / T で表すことが出来ます。

電力会社から一般家庭に送られている交流電源は、東日本が50Hz、西日本が60Hzとなっていますが、これを上の式に当てはめると、“周波数f = 50 または60 Hz”なので

T = 1 / 50

あるいは

T = 1/ 60

となります。

東日本なら50分の1秒、西日本なら60分の1秒で1周期の振幅があるという事。

言い換えれば東日本は毎秒50回、西日本は毎秒60回という回数で波が繰り返されているということになります。

という訳で、上で説明したとおり周波数というのは1秒当たりの波の繰り返しの数ですが、周波数に1つの波の長さの波長λ(m)をかけると1秒間に波の進む距離を求めることが出来ます。

距離が分かれば速度を求めることが出来ますよね。

電波の速度を(m/s)とすると“c = f λ”という式で求めることが出来ます。

この式を変形すると

f = c / λ

あるいは

λ = c / f

となり電波の速度から周波数や波長を求めることが出来ますが、ここから周波数ごとに最適なアンテナの長さを求めることが出来ます。

電波は光と同じ速度(30万km/s)で進むので、c = 300,000,000 m/s となり、これを上の式に代入すると

λ = 300,000,000 / f

または

f = 300,000,000 / λ

となります。

仮に電波の速度と同じ数値となる300,000,000Hz(300MHz)の周波数の電波の波長を求めると、f = 300,000,000 Hzなので

λ = 300,000,000 / 300,000,000 = 1 

より、波長は1mになります。

これを基準に波長の長さを求める式を覚えておけば、ある周波数の電波を受信するのに最適なアンテナの長さをすぐに求めることが出来るようになりますね。

ちなみにアマチュア無線で使われることの多い144MHz帯を“2メーター(ツーメータ)”なんて言ったりしますが、これは波長の長さに由来するものです。

もひとつちなみにクルマの車間距離を測定するレーダーやスマホに使われる“ミリ波”や、電子レンジで使われる“マイクロ波”というのも波長の長さが名前の由来です。

電波の固有インピーダンス

真空中における電界の強さE(v/m)と磁界の強さH(A/m)の比固有インピーダンスといいます。

真空中の誘電率ε0

ε0 = 10^-9 / 36π ≒ 8.85×10^-12 F/m

同じく真空中の透磁率μ0

μ0 = 4π × 10^-7 H/m

となるので、固定インピーダンスZは以下の式より約377Ωになります↓

電波の速度

電波は真空中を1秒間に3×10^8 m(約30万㎞)進みますが、空気や水蒸気といった媒質中を進む場合はこれよりも遅くなります。

媒質の無い真空中の速度cは次のように求めることが出来ます↓

大気中などの自由空間における速度を求める場合は、空間ごとの誘電率をε(F/m)、透磁率をμ(H/m)として上の式に代入しますが、一般的には真空中の光速度を近似値として扱うことが多いようです。

電波の伝わり方​

地球上で放射された電波の伝わり方(電波伝搬)には

  • 地上波伝搬
  • 対流圏伝搬
  • 電離層伝搬

というものがあります。

地上波伝搬​

送信距離が短く、大地、山、海などの影響を受けて伝搬する電波地上波といい、地上波が伝搬すること地上波伝搬といいます。

地上波伝搬には以下のような物があります。

  • 直接波
    送信アンテナから受信アンテナに直接到達する電波
  • 大地反射波
    送信アンテナから発射され、地上に反射して受信アンテナに到達する電波
  • 地表波
    地表面に沿って伝搬する電波
    (波長が長くなるにつれて地表面による損失が増えて伝搬距離が短くなる)
  • 回析波
    送受信点間に山などの障害物があり、見通し距離外でも回り込んで送達する電波

対流圏伝搬​

地上からの高さが12㎞程度(緯度・経度・季節によって変わる)まで対流圏といい、高度が高くなるにつれて大気密度が薄くなり、気温も低下(100mごとに約0.6℃低下)​していきますが、大気が薄くなると電波の屈折率が小さくなるため、電波が地上方向に湾曲して伝搬するようになります。

このように対流圏の影響を受けて電波が伝搬することを対流圏伝搬といいます。

電離層伝搬​

電離層は太陽から出る放射線により発生したイオンと電子からなる電離気体で構成される層で、電離層での電波の伝搬電離層伝搬といいます。

電離層は短波帯の電波伝搬に大きな影響を与え、小さな電力の電波でも電離層で反射して遠距離まで伝搬します。

地表から近い順にD、E、Fと名付けられていますが、無線関係の業務で特に重要なのが春から夏にかけての日中に出現するスポラディックE層

スポラディックE層は超短波の電波を反射するため、本来なら短距離にしか伝搬しないはずの電波で遠距離通信が可能になることがあります。

一見すると少ない電力(弱い電波)でも遠距離通信が可能になるという素晴らしい現象に見えるんですが、遠距離通信が出来るのはスポラディックE層が出現しているエリアのみ。

しかもスポラディックE層はランダムに形成されるので、出現したからと言って確実に目的の場所との通信が行えるわけでは無いので、業務用の無線通信でスポラディックE層を使うことはほぼ無いかと思われます。

ちなみに超短波帯以上の電波は電離層を突き抜けてしまうため、電離層伝搬を利用できません。

VHF、UHF、SHFの電波伝搬​

VHF、UHF、SHFの電波の伝搬は基本的には見通し距離内での伝搬になりますが、以下のような例外もあります。

超短波(VHF)及び極超短波(UHF)の伝搬

  • 直接波による見通し距離内の利用が主体
  • 見通し距離内の通信では直接波と大地反射波が利用される
  • 一般に電波が地表の方に曲がりながら伝搬するので、電波の見通し距離は幾何学的な見通し距離よりも少し長くなる
  • 地表波伝搬では中波(MF)に比べて減衰が大きい
  • 大気中の温度の以上(逆転層)が生じてラジオダクトが形成され、遠方まで伝搬することがある
  • VHFの電波はスポラディックE層により見通し距離内の外に伝搬することがある
  • VHF以上の周波数帯は電離層を突き抜けてしまうため電離層は利用できない(反射波は無視できる
  • UHF電波は受信アンテナの高さを変えると電波の強さが大きく変化し、建物や樹木などの障害物による減衰もきくなる

マイクロ波(SHF)の電波伝搬

  • 波長が短く、小型で指向性の鋭いアンテナが使用できる
  • 光と同様に直進性が強いため、見通し距離内の通信に使用される
  • 固定回線では直接波による伝搬が主体となる
  • 見通し距離より遠くなると受信電界強度の減衰が大きくなる
  • 標準大気中では高度が高くなると屈折率が減少するため、地球半径より大きな半径の円弧状の伝搬路に沿って伝搬する
  • 超短波(VHF)帯の電波と比べて伝搬距離に対する損失(自由空間基本伝搬損失)が大きい
  • おおむね10GHz 以上の周波数になると降雨による影響を受けやすい
  • 電離層の影響はほとんど受けない

試験の出題傾向

航空無線通信士の試験では

  • 電波の基本的な性質
  • VHF、UHF、SHF帯の電波の伝搬

についての問題が出題される傾向があるようです。

出題形式は

  • 正しい字句の組み合わせの選択
  • 穴埋め
  • 説明文の正誤選択

といったものになるようですね。

電波の性質の解説で色々と公式が出てきましたが、試験ではこの公式を使った計算問題(波長を求めたり、周波数を求めたり)が出題されることはあまり無いようで、出題されても光速度cと波長λ、周波数fの関係を表す公式くらい。

あとは電波の性質や伝搬の特徴を説明する文章の間違い探しや穴埋めになってます。

まとめ

電波は目に見えないのでどのような動きをしているのかイメージしづらいですよね…。

レーザービームのように一直線に進んでくれればいいんですが、波の性質を持っているためどこかに反射したり回り込んだりします。

反射も光と鏡のようなシンプルな関係であればいいんですが、地面や建物でも反射しますし、目に見えない電離層のように、大気の構成によっても反射してしまったり、さらには周波数帯によっても反射の条件が変わったり…。

これも電波が波の性質を持ち、周波数帯によって波の大きさが異なるからです。

携帯電話が色々な種類の周波数を使うのも、波の性質を上手く利用し最適な通信品質を確保するためだったりするわけですが、電波の性質を知っていると無線の免許を取るためだけでなく、携帯電話の市場動向も見えてくるようになるかもしれません。

まぁ、市場動向よりも電波が見えるようになった方がありがたいんですけどねw

次回は電波を発射したり受信したりするときに必要な“アンテナ”について解説していきます。

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