航空無線通信士の試験対策:無線工学その20 電源

パイロットへの道のり

無線機は航空交通管制や無線航法などに使用することが出来ますが↓

“電源”が無ければ重たいだけのただの箱です…。

電源というと一般家庭に送電されている商用の交流電源や、テレビのリモコンなどに使われる乾電池、あるいはスマホに使われるような蓄電池といったものがありますが、無線機の電源も用途に応じて色々なものが使用されています。

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電源回路

一般的な無線機器は直流で動作しているので直流電源が必要になります。

携帯型の無線機であれば乾電池や蓄電池から直流電源を取ることが出来ますが、据え置き式の固定局の場合、電池を使うのは非効率なので商用電源を使用しています。

ところが、商用電源は交流なので何らかの方法で直流に変換しなければいけませんし、そもそも商用電源は無線機に入力するには電圧が高すぎるので、電圧の調整も必要になります。

そこで交流電源を直流に変える変換器です。

変換器の中ではこのように変圧や整流が行われています↓

変換器ではまず、変圧器で交流電源を所定の交流電圧に昇圧または降下します。

変圧された電気は整流回路で直流(脈流)に変換されますが、整流回路からの出力電圧は交流成分を多く含むため、平滑回路で交流成分を除去し、より直流に近づけて負荷に供給しています。

変圧器

リング状の鉄を芯にして2つのコイルを巻いたものを変圧器(トランス)といい、交流電圧を変圧器に掛けることで任意の大きさの交流電圧を作ることが出来ます。

一次側のコイルに電気を流すと、電磁誘導が起こって鉄芯に磁力が発生します(フレミングの左手の法則)。

すると二次側のコイルでは鉄芯に流れている磁力でフレミングの右手の法則により電気が発生します。

仮に磁束漏れなどの影響を考えなくていい理想的な回路だった場合、一次側と二次側のコイルの巻き数が同じであれば一次側の入力と二次側の出力は同じになりますが、コイルの巻き数を変えてやれば出力を変化させることが出来るわけです。

半波整流回路

半波整流回路ダイオード1本で交流を直流に変換する回路で、回路中のダイオードのアノード側がプラスになった時に導通して電流が流れることで一定の極性の電流を​作ることが出来ます。

極性を揃えるというよりも、逆の極性の電流を通さないゲートみたいなもんですね。

このため、入力された交流電源の波形の半分しか出力することが出来ません。

全波整流回路

全波整流回路ダイオード2本で交流を直流に変換する回路​です。

ダイオードを2本使うことで、半端整流回路では出力できなかったマイナス側も極性を反転させて出力出来るようになります。

ちなみに上の回路図のようにダイオードを2本使う場合、変圧器の巻き線は半波整流器の2倍必要になりますが、ダイオードを4本使うブリッジ回路にすると半端整流回路と同じトランスを使用することが出来ます↓

平滑回路

平滑回路交流成分を除去して、より直流に近づける回路で

  • コンデンサ入力形
  • チョーク入力型

の2種類があります。

整流器からの出力は交流成分の多い脈流なので、変圧器の最終段に平滑回路を使い、交流成分の少ない理想的な直流電流を作ります。

電池

商用の交流電源を使う場合は変圧や変換といった操作が必要ですが、電池なら初めから直流電流が取り出せるので取り扱いが楽ですよね。

とはいえ、電池から取り出せる電気には限度があるので、固定式の無線機に使うのは合理的ではありません…。

そのため、電池は携帯型の無線機や非常電源として使用されます。

電池を大まかに分類すると、化学反応によって電気を発生させる化学電池熱や光を電気に変換する物理電池に分けることが出来ます​。

携帯式の無線機や電気機器は化学電池を使用することが多いですが、この化学電池も大きく分けると

  • 一次電池:乾電池のような使い捨ての電池
  • 二次電池:充電池のような何回も使用できる電池

に分類することが出来ます。

現在使用されている電池を分類ごとに分けるとこんな感じになります↓

電池の種類ごとの特徴をまとめた表がこちらになります↓

こういった特徴から用途に合わせて最適な電池を選択されます。

少し前までの携帯式無線機には、値段の問題からニッケルカドミウム蓄電池が多く使われていましたが、ここ最近はリチウムイオン蓄電池が多く使われるようになっています。

また、固定式の無線局の非常用電源としては“鉛蓄電池”が使われることが多いようです。

鉛蓄電池

鉛蓄電池は自動車、航空機、非常用の予備電源として広く使用されています。

ボーイング787以前の旅客機にも28Vの鉛蓄電池が搭載されていて、予備電源やAPU始動用の電源として使用されていましたが、787では小型軽量なリチウムイオン蓄電池に置き換わっています。

一般的な鉛蓄電池は複数のセルをスタックして使用されています。(1つのセルは約2V)

鉛蓄電池には“大電流を取り出すことが出来る”という長所があるものの

  • 容量当たりの重量が他の蓄電池と比較して重い
  • 電解液に希硫酸を使用しているので破損した場合に危険

という短所があります。

放電時に化学反応で“鉛、二酸化鉛、硫酸”を“硫酸鉛と水”にするため、電解液の比重が低下し、充電時は化学反応で“希硫酸と水”が“鉛、二酸化鉛、硫酸”になるため比重が上昇する他、充電中には少しづつ発熱し、酸素と水素を発生するため、充電中に火気を近づけると爆発炎上する危険性があります。

メモリ効果がないとはいえ使用していけば鉛蓄電も劣化していきますが、充放電の繰り返しによる電極の劣化が原因になるようです。

電池の容量

電池の容量充電した電池が放電し終わるまでに放出した電気量で決まり、Ah(アンペア時、アンペアアワー)表されます。

例えば、容量30Ahの充電済み電池に1A流れる負荷を接続した場合、理論上は通常30時間連続して使用することが出来ます。

もし同じ電池に2Aの負荷を接続した場合は、連続して使用出来る時間は15時間です。

容量(Ah)÷ 負荷(A) = 使用可能時間​

また、電池の容量は接続の方法によって変わります。

直列接続した場合の容量

電池をn個直列接続で使用すると、電圧はn倍になりますが全体の容量は変わりません
仮に電圧2V、容量30Ahの電池を2個直列に接続した場合、電圧は2倍の4Vになりますが容量は30Ahのままです。

並列接続した場合の容量

電池をn個並列接続で使用すると、電圧は変化せず容量がn倍になります
仮に電圧2V、容量30Ahの電池を2個並列に接続した場合、電圧は2Vのままで容量は2倍の60Ahになります。

浮動充電方式

交流電源を整流装置で直流に変換して負荷に供給しながら、回路に並列に接続された鉛蓄電池などの蓄電池を充電する方式を浮動充電(フローティング)方式といいます。

普段は整流装置(直流電源)からの電流は殆ど負荷に供給されていますが、一部が蓄電池の自己放電を補うために使われています。

浮動充電方式では過放電や過充電を繰り返す事が少ないため、接続されている蓄電池の寿命を長くすることが出来るというメリットがあるほか、負荷電流の大きな変動を伴う電圧変動があった場合、蓄電池がこれを吸収するという役割があり、機材保護のためにも働きます。

もちろん停電になれば自動的に電源が蓄電池に切り替わるので、非常用の電源設備としても機能します。

試験の出題傾向

航空無線通信士の試験では

  • 整流電源回路の構成
  • 電池の容量
  • 鉛蓄電池の特性
  • 浮動充電方式の特徴

から1~2問が出題され、出題形式は

  • 説明文の正誤選択
  • 正しい字句の選択

になるようです。

まとめ

今回は無線機の電源について解説してみました。

無線用の電源は基本的には直流電源なんですが、設置場所や運用の用途に応じて商用電源を使ったり電池を使ったりします。

電池なら直流なのでそのまま使えますが、商用電源は交流なので直流電流に変換してやる必要があります。

そのためには電源回路を使って商用電源を変圧し、極性を整え(整流)、安定し直流にしてやる必要(平滑化)があります。

こうして直流化した電源を無線機に接続するわけですが、航空無線の中には1年365日、24時間7日間ぶっ続けで稼働させないといけない機材が沢山あります。

有な停電でも運用中断とならないように、変換器と無線機器の間に蓄電池を配置した浮動充電方式が広く採用されています。

こうして本来なら直流で動く無線機も、商用電源に接続して止まることなく稼働を続けることが出来るという訳です。

次回は無線機を扱う上で絶対に覚えておかないといけない“電波の性質”について解説していきます。

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