前回は無線の電波を発射(放射)するための装置である送信機について解説していきましたが↓
今回は放射された電波を受信して人間の見聞きできる音や映像に変換する装置である“受信機”について解説していきます。
というと何やら特別な機械のように聴こえますが、誰の家にも置かれているであろうテレビや、クルマのラジオなんかも受信機の一種なので、意外と身近なアイテム。
航空無線通信や無線航法用に使用される受信機にはいくつかの種類がありますが、航空無線通信士の試験では、DSB、SSB、FM方式の受信機の構成と動作原理に関する問題が出題されます。
Table of Contents
DSB(A3E)受信機
DSB(A3E)波受信用の受信機として多く採用されるのがスーパーヘテロダイン受信方式です。
スーパーヘテロダイン受信方式は1918年に考案された回路で、現在も多くの受信機に採用されています。
この方式の長所としては
- 感度が良いこと
- 選択度が良いこと
短所として
- 影像周波数(イメージ周波数)妨害を受けること
- 周波数変換雑音が多いこと
があげられます。
スーパーヘテロダイン方式の受信機の構成は以下のようになります↓

高周波増幅器
アンテナで受信した信号を同調回路(共振回路)にかけ、目的の周波数を選択して増幅する回路で、感度を良くしたり、信号対雑音比(S/N比)を改善する働きがあります。
周波数混合器
高周波増幅器の出力周波数と局部発振器の出力周波数を混合し、周波数が一定の中間周波数に変換します。
通常、中間周波数は受信周波数よりも低い周波数になります。
中間周波増幅器
中間周波数に変換された信号を増幅します。
中間周波増幅器で使用する帯域フィルタの通過帯域幅を変更することで、周波数帯幅の異なる電波形式の電波を円滑に受信し、近接周波数に対する選択度(目的の周波数を選択できる能力)を向上させることができます。
検波器
振幅変調されている中間周波増幅器を出た信号から、音声などの情報を取り出す“復調”を行う回路です。
スケルチ
受信する電波の信号が弱い(既定値以下)場合、スピーカーから出力される大きな雑音を抑圧します。
低周波増幅器
ヘッドホンやスピーカーを動作させることが出来る程度まで信号を増幅する回路です。
SSB(J3E)受信機
SSB(A3E)受信機はDSB(J3E)波受信用のスーパーヘテロダイン受信機とほぼ同じ構造ですが、J3E電波を復調(検波)するために第2局部発振器が備え付けられているのが特徴です。

FM(F3E)受信機
FM(F3E)波受信機は次のような構成になっています↓

高周波増幅器
アンテナで受信した信号を同調回路(共振回路)にかけ、目的の周波数を選択して増幅します。
また、影像周波数(イメージ周波数)妨害による混信を軽減する働きがあります。
局部発振器
中間周波数を発生させるために使用する搬送波を発生させる発振器で、高い周波数安定度が要求されるため、PLL回路が使用されることが多いようです。
周波数混合器
高周波増幅器の信号と局部発振器の信号を混合して周波数が一定の中間周波数に変換します。
中間周波増幅器
中間周波数に変換された信号を増幅する回路で、近接周波数の選択度を高めることが出来ます。
振幅制限器
電波の伝搬途中で雑音が加わって振幅が変化した場合に、FM復調には不要になる振幅成分を除去します。
周波数弁別器
AM(A3E、J3E)受信機の検波器に相当する回路で、周波数の変化を振幅の変化に変換します
かつてはフォスター・シーリー回路や比検波器などが使われていましたが、現在はPLL回路を利用した復調器が多く使われるようです。
スケルチ回路
受信するFM(F3E)電波の信号が無い時、または微弱な時に低周波増幅器から出力される雑音を抑圧する回路です。
低周波増幅器
スピーカーを駆動するのに十分な電圧まで増幅します。
試験での出題傾向
受信機の問題は
- ブロック図の穴埋め
- 機能の解説の穴埋め(正しい字句の組み合わせ)
- 受信機や回路の機能についての説明分の正誤選択
といったものが出題されているようです。
例えばこんな感じ↓
次の記述は、FM(F3E)受信機について述べたものである、( )内に入れるべき字句の正しい組み合わせを下の番号から選べ。
(1)復調には一般に(A)が用いられる
(2)伝搬中に受けた振幅変調成分を除去するために、(B)が設けられる
(3)受信電波が無い時または微弱な時に生じる大きな雑音を抑圧するために(C)回路が設けられる

まず(1)ですが、FM受信機で復調をしている回路は周波数弁別器になります。
次に(2)の振幅成分の除去を行う回路は振幅制限器です。
最後の(3)の雑音を除去するための回路はスケルチ回路。
という訳で、この問題の解答は3番になりますね。
上に挙げた例題はFM受信機についてですが、DSBやSSBの特徴についての問題となることもあるようですので、こんな感じで各受信機の特徴をまとめておくと良いかもしれません↓

まとめ
航空無線通信士の試験で出題されるのは
- DSB(A3E)受信機
- SSB(J3E)受信機
- FM(F3E)受信機
の3種類についての
- 一般的な回路の構成
- 受信機の特徴
- 受信機を構成する回路の機能
についての問題。
3つの受信機について必ず出題されるという訳では無く、いずれか1つについての問題が毎回1問必ず出題されているようです。
送信機は電波形式が変わるとブロック図が結構変わってきますが、受信機は電波形式が変わってもそれほどブロック図の構成が変わらないので紛らわしいんですよね…。
それぞれの受信機の違いを上手く掴んで、そこから上手い事覚えていくしかなさそうです。
次は送信機と受信機両方を備えて空中の飛行機を探知する機能を持つ“レーダー”についてです↓
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