航空無線通信士の試験対策:無線工学その16 送信機

パイロットへの道のり

無線の免許というのは本来法律において禁止されている“電波を発射する行為”を特別に免じて許可するためのもの。

つまり、『送信機を操作して電波を発射するための免許』ということになります。

送信機とは搬送波を信号波に乗せて変調し、符号化、多重化して送信する通信機器で

  • 周波数安定度が高いこと(送信周波数がふらつかない)
  • 占有周波数帯が既定値以内であること(無駄に広い周波数帯を使わない)
  • 不要輻射が既定値以内であること(余計な電波を発射しない事)

といったことが要求されます。

送信機には色々な種類がありますが、航空無線通信士の試験では

  • A3E送信機
  • J3E送信機
  • F3E送信機

の3種類のいずれかに関する問題が出題される傾向にあるようです。

Table of Contents

AM(A3E)送信機

AM(A3E)送信機は、音声などの信号波で搬送波の振幅を変化させた信号を送信する機能を持つ​送信機です。

電波形式A3Eなので、振幅変調の両側波帯(DSB)変調方式の変調をかけています。

A3E送信機の構成例として以下のブロック図を示します↓

各ブロックは次のように動作します。

水晶発振器

水晶に電圧をかけると固有振動数の発振出力が得られるという性質を利用し、搬送波の元になる信号を発生する回路。

搬送波の整数分の1の安定度の高い周波数を発生します。

緩衝増幅器

水晶発振器の下流側に配置された周波数逓倍器、励振増幅器、電力増幅器など機器の動作の影響が、水晶発振器に及ぶのを軽減する回路です。

周波数逓倍器

所定の送信周波数を得るために水晶発振器の周波数成分を整数倍にする回路です。
一般にはC級増幅器で波形をひずませ、ひずんだ波形から高調波成分を同調回路で取り出しています。

励振増幅器

電力増幅器が所定の出力を得られるように、周波数逓倍器からの出力を増幅します。

電力増幅器

所定の高周波出力が得られるように増幅します。

音声増幅器

マイクロフォンからの音声信号を増幅します。

変調増幅器

音声信号により振幅変調を行い、過変調時に占有周波数帯幅が広がらないレベルに増幅します。

 

SSB(J3E)無線機

AM(J3E)送信機は、音声などの信号波で変調された上側波または下側波のみを送信する機能を持つ送信機です。

電波形式J3Eなので、振幅変調の単側波帯(SSB)振幅変調方式の変調をかけています。

J3E送信機の構成例のブロック図を以下に示します↓

各ブロックは次のように動作します。

第1局部発信器

安定度の高い搬送波を発生します。

平衡変調器

音声信号fsと第1局部発信器の信号fc1を平衡変調器に加えると搬送波fcが抑圧され、“fc1 – fs”の下側波と“fc1 + fs”の上側波が出力されます。

平衡変調器の代わりに“リング変調器”を使って上側波と下側波を取りだす方法もあります↓

第1帯域フィルタ

平衡変調器から出力された下側波と上側波のうち、どちらか一方を通過させます。

周波数混合器

第2局部発信器の出力fc2と第1帯域フィルタの出力を混合します。

周波数混合器から出力された信号を第2帯域フィルタに通して所要の送信周波数のSSB信号が作られます。

励振増幅器

電力増幅器が所定の出力を得られるように、周波数混合器からの出力を増幅します。

電力増幅器

所定の高周波出力が得られるように増幅します。

ALC回路

音声入力レベルが高い時にひずみが発生しないように励振増幅器の利得を制御します。

FM(F3E)送信機

FM(F3E)送信機は、音声などの信号波で搬送波の周波数を変化させる機能を持つ送信機です。

電波形式F3Eなので周波数変調をかけています。

F3E送信機には“間接FM方式”と“直接FM方式”の2種類の送信機があります。

間接FM方式

間接FM方式の送信機の構成例のブロック図を以下に示します↓

各ブロックは次のように動作します。

水晶発振器​

搬送波の元になる信号を発生する回路で、搬送波の整数分の1の安定度の高い周波数を発生します。

位相変調器​

IDC回路からの出力の大きさに応じて水晶発振器の出力の位相を変化させます。

周波数逓倍器​

水晶発振器で発生させた周波数を変調して所定の高い送信周波数にする回路で、所定の周波数偏移が得られるようにします。

送信周波数が高い場合は複数の周波数逓倍器が多段構造で配置されます。

電力増幅器​

所定の高周波出力が得られるように増幅します。

IDC回路​

IDCは“Instantaneous Deviation Control”の頭文字を取った略称で、ここでは最大周波数偏移が所定の値になるように制御しています。

直接FM方式

直接FM方式はPLL回路(後述)を使用した送信機で、低域フィルターの出力電圧(制御電圧)に音声などの低周波信号を加えた電圧で電圧制御発信器の発進周波数を変化させてFM波を作るというもの↓

出来上がったFM波を電波にするために、周波数逓倍器、励振増幅器、電力増幅器を加えて次の様な構成にすると↓

直接FM方式の送信機になります。

PLL回路

A3E送信機と間接FM方式の送信機では搬送波の発振源として水晶発振器(水晶振動子)が使用されています。

水晶振動子を使うと正確な周波数を発振することが出来ますが、周波数を変えることが出来ません。

ラジコンのレースに参加するときは他の人のプロポとの混信を避けるため、水晶振動子を含む発振回路を交換して都度プロポの周波数を変えていましたが、運用中に周波数を変更する=チャンネルを変える必要のある無線機の場合、いちいち電源をOFFにして水晶振動子を交換するのは現実的では無いですよね。

そこで、多くのチャンネルで送信する必要のある送信機では、水晶振動子の代わりにPLL(Phase Locked Loop)回路を用いるシンセサイザ発振器が使用されています。

PLL回路は

  • 周波数角度の高い水晶発振器
  • 可変分周器
  • 位相比較器(PC)
  • 低域フィルタ(LPF)
  • 電圧制御発信器(VCO)

で構成され、安定度の高い任意の周波数を発生させることが出来ます。

基準信号源である水晶発振器の周波数をfsとすると、fsが分周比“1/N”の可変分周器を通過(fs × 1/N)して“fs/N”になり位相比較器に入力されます。

位相比較器は

  • 2つの信号の位相が等しい時は電圧を出力しない
  • 2つの信号の位相が少しでもズレていると電圧を出力する

という機能を持つ回路です。

位相比較器へ入力された2つの信号にズレがあった場合、出力された電圧は低域フィルタを通過して直流電圧として出力され、その電圧で電圧制御発信器の周波数fo変化させます。

foが分周比“1/M”の可変分周器を通過(fo × 1/M)すると、“fo/M”になって比較位相器に入力されます。

この時“fs/N = fo/M”になると位相比較器は電圧を出力しないため、PLL回路はロックする(信号を出力しない)ということになります。

つまり、fs/N = fo/Mより出力周波数fo

という式で表すことが出来ます。

このようにPLL回路は周波数変化を電圧の変化に変えることが出来ので、直接FM(F3E)送信機の発振器だけでなく、FM受信機の復調にも使用されています。

試験での出題傾向

過去数年間の試験問題を見ると

  • 送信機とPLL回路のブロック図の穴埋め
  • 送信機とPLL回路を構成する回路の解説の穴埋め
  • PLL回路の出力周波数の計算

といった問題が出題されています。

穴埋めに関してはブロック図と各送信機を構成する回路の働きを丸暗記するしかありませんね。

PLL回路の計算問題は↓

基準発振器の出力の周波数fsを3.2MHz、分周器の分周比1/Nを1/64、可変分周器の分周比1/Mを1/2720としたとき、出力周波数foは( )MHzになる。

といった感じの穴埋め問題になってます。

PLL回路の解説に出てきた出力周波数foを求める式

を使うと

fo = (2720 / 64) × 3.2 MHz

136MHz

となりますが、別の方法で求めることも出来ます。

少し回りくどいですが、まずは分周期の出力周波数fAを求め

fA = fs × 1/N = 3.2/64 MHz

次に可変分周期の出力周波数fBを求めます

fB = fo × 1/M =fo /2720 MHz

PLL回路は“fs/N = fo/M”、この問題の場合は“f= fBなので

3.2/64 = fo/2720

ここから式を色々こねくり回して

fo =(3.2 ×2720)/64 = 8704/64 = 136MHz

となります。

まとめ

航空無線通信士の試験では

  • AM(A3E)送信機(DSB送信機)
  • AM(J3E)送信機(SSB送信機)
  • 直接FM(F3E)送信機
  • 間接FM(F3E)送信機

の4種類と、基準周波数の発振方法の一つである

  • PLL回路

についての問題が出題されます。

変調方式の違いや送信機を構成するブロック図の違いがややこしいですが、とにかく“そういうもの”として覚えるしかなさそうですね。

次は発射した電波を受信して復調する“受信機”についてです↓

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