航空無線通信士の試験対策:無線工学その13 通信方式(アナログ通信)

パイロットへの道のり

前回までは無線機器というより電気回路や電子部品についての基礎的なところでしたが↓

今回からようやく無線の試験対策らしい内容“通信方式”についてまとめていきます。

今回は通信方式の中でも基本となる“アナログ通信”についてです。

アナログ通信は、音や電波の情報を乗せた信号の振幅が時間と共に変化するアナログ信号をそのまま伝送するという通信方式。

令和の時代になって色々な通信機器がデジタル化されているため、アナログと聞くと時代遅れで古臭いもののように聴こえますが、実は航空交通管制用の無線は今でもアナログがメインだったりします。

そもそも、音声のような低周波の信号は振幅の減衰が激しいため、仮に音声と同じ周波数の電波に乗せたとしても直接遠くに伝えることが出来ません。

そこで、元の信号を周波数の高い搬送波に載せることで遠くまで飛ばすわけですが、これを変調といいます。

変調された電波を無線機で受信してもそのままでは人間の耳には聞こえない(内容が理解できない)ので、受信した電波から元々の信号を取り出す必要があり、こちらは復調といいます。

この変調と復調にはデジタル方式とアナログ方式がありますが、まずはアナログ方式についてまとめてみました。

Table of Contents

アナログ通信の変調と復調

音声やデータなどを何らかの形で電気的な信号に置き換え、これを高周波の搬送波に載せることが変調、変調された電波を受信して、元々の音声やデータなどの戻すことが復調となりますが、変調・復調の方式にはいくつかの種類があります。

ラジオ放送にAMとFMなんてのがありますが実はあれ周波数帯の違いで区別しているわけでははなく、変調・復調方法の違いなんです。

振幅変調(AM)

振幅変調AMAmplitude Modulation)は、周波数を一定にして振幅を変化させる変調方式です。

ラジオ放送でお馴染みですが、航空管制通信でもAMが使用されています。

周波数fc(Hz)の搬送波を周波数fs(Hz)の単一正弦波(ゆがみのない波形)の信号波を混合すると↓

二つの波形が混ざって複雑な形状の波形になります。

DSB(A3E)

仮に搬送波fcが常に一定の周波数だった場合、上のようにfcの波長や周期が変化するとそれに合わせて変調後の波形の振れ幅が変化することになります。

振幅変調をかけると

  • 上側波(fc + fs)
  • 搬送波(fc)
  • 下側波(fc – fs)

の3つの周波数成分が発生しますが、これを横軸に周波数(Hz)、縦軸に振幅(V)を取った周波数分布図というグラフにすると↓

このような周波数分布となります。

信号波の最高周波数をfs(Hz)とした時、fsの2倍の周波数“ 2fs(Hz)”を占有周波数帯幅といいます。

上のグラフは単一正弦波を搬送波に乗せた場合のものなので下側波と上側波が棒状になっていますが、単一正弦波ではなく音声のように多くの周波数成分を含んだ複雑な信号波を振幅変調すると↓

下側波帯と上側波帯は山形になります。

(※私の作図能力の問題で側波帯が直角三角形になってしまってますが、実際にはもっと角が緩やかです…。)

この図のように、側波(Side band)が上側波と下側波の2つ(Double)ある振幅変調方式を両側波帯(DSB:Double Side Band)振幅変調方式といいます。

アマチュア無線家や、無線に関連する業界の人たちは、単にDSBと呼ぶことが多いんじゃないでしょうか?

電波法施行規則に規定する電波形式の表示は『A3E』となっています。

航空無線通信士の試験問題では電波法施行規則に規定する電波形式で書かれることがあるので、法律上の電波形式の表示も覚えておきましょう。

SSB(J3E)

DSB変調は上側波と下側波の両方に同じ情報があるため、周波数帯を無駄に占有してしまうためあまり効率がよろしくありません…。

上側波と下側波で同じ情報を流しているのなら、どちらか一方と搬送波を取り除いて、片側の単側波(SSB:Single Side Band)を使えばいい訳で、このような変調方法を単側波帯(SSB)変調方式といいます。

電波法施行規則では『J3E』です。

SSB(J3E)はDSB(A3E)と比較した時に

  • 占有周波数帯幅を狭く出来るために周波数を有効活用できる
  • 空中線(アンテナ)電力を少なく出来る(100%変調の時J3EはA3Eの1/6)
  • 選択性フェージングの影響が少ない

といったメリットがあります。

ちなみに選択性フェージングというのは電離層の伝搬特性が周波数によって相違する場合に、上側波と下側波のいずれかがフェージングの影響を受けて受信レベルが変動する現象のこと。​

SSB(J3E)は単側波なので選択性フェージングの影響を受けづらい​わけです。​

周波数変調(FM)

周波数変調FMFrequency Modulation)は、振幅を一定にして周波数を変化させる変調方式。

電波法施行規則に規定する電波形式は『F3E』です。

主に超短波(VHF:30~300MHz)以上の周波数帯で使用されています。

FM(F3E)はDSB(A3E)と同じく上側波と下側波の2つの側波がありますが、FM周波数帯の占有周波数帯域幅Bは

B=2(Δf + fp)

(Δf:最大周波数偏移、fp:信号波の最高周波数)

となるので、F3Eは側波数が多く占有周波数帯幅が広くなります。

また、AM変調(J3EやA3E)に比べると混信や雑音に強く、音質が良いため、音楽などの伝送に適しています。

昔のアナログテレビ放送の音声信号がFM変調で送られていたり、FMラジオに音楽番組が多いのもこういった特徴があるためですね。

これ以外にも

  • 振幅性の雑音の影響を受けにくく、受信電波の強さがある程度変化しても受信機の出力は変わらない
  • 受信機の入力信号の強度があるレベル以下になると、受信機出力の信号対雑音比(S/N比)が急激に悪化する
  • 同じ周波数に妨害波があっても、信号波が強ければ妨害波が抑圧される

といった特徴があります。

FM(F3E)変調は雑音に強く、音質が良いので聞き間違えがクリティカルな状況を招く航空管制通信に最適なようにも思えるんですが、上にある“妨害波があっても、信号波が強ければ妨害波が抑圧される”という点がデメリットになってしまうので航空交通管制用としては使われていません。

これが文字通りの妨害波なら問題は無いんですが、たまたま同じタイミングで複数の通信が重複してしまった場合、受信側は一番強い電波しか拾えないことになりますからね…。

もし航空管制がFM変調だった場合、空港に一番近い機体や無線機の出力が強い機体の無線しか管制塔に届かないことになってしまいますし、緊急事態が発生し救助やアドバイスを要請しても他の無線でかき消されてしまうなんてことにもなりかねない…。

そういった理由から、航空管制ではFM(F3E)ではなくAMのDSB(A3E)またはSSB(J3E)変調方式が使われているそうです。

例題

試験では各変調方式の特徴を問う問題が出題されます。

例えばこんな感じ↓

次の記述は、FM(F3E)通信方式の一般的な特徴について述べたものである。( )内に入れるべき字句を下の番号から選べ。

(1)AM(A3E)通信方式と比べた時、一般に、占有周波数帯幅が(ア)。
(2)AM(A3E)通信方式と比べた時、振幅性の雑音の影響を(イ)。
(3)受信機の出力は、受信電波の強さがある程度(ウ)。
(4)希望波の信号の強さが混信妨害波より(エ)は混信妨害を受けにくい。
(5)受信電波の強さがあるレベル以下になると、受信機の出力の信号対雑音比(S/N)が急激に(オ)。

1.広い
2.受けやすい
3.変わっても、変わらない
4.弱い時
5.悪くなる
6.狭い
7.受けにくい
8.変わると、大きく変わる
9.強いとき
10.良くなる

解説

すぐ上に書いてあるFM(F3E)変調方式の特徴がそのまま試験に出てきます。

回答は

ア-1、イ-7、ウ-3、エ-9、オ-5

となります。

まとめ

今回は航空無線通信士の試験に関係する無線のアナログ通信方式の変調方式についてまとめてみました。

アナログ通信方式の変調方式は大きく分けると

  • AM変調
  • FM(F3E)変調

の2つに分けられ、AM変調はさらに

  • DSB(A3E)
  • SSB(J3E)

の2つに分けることが出来ます。

試験ではこれらの変調方式ごとの特徴や、他の変調方式と比較した場合のメリット、デメリットについて問う問題が出題されるので、

  • 占有周波数帯が広いのか?狭いのか?
  • 雑音の影響を受けやすいのか?受けにくいのか?
  • 電波法施行規則に規定する電波形式は何か?

といったところを良く整理しておいた方がよさそうですね。

次回はアナログ通信方式の対となるデジタル通信方式について解説していきます↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました