トランジスタを使った回路のように、入力した電圧、電流、電力などの信号を大きくして出力する回路を増幅回路と呼びます↓
増幅されるのはいいんですが、どうも増幅された電圧、電流、電力というのは単純な足し算や掛け算で求められるものでは無いようで…。
デシベル(dB)
増幅回路に入力された信号と出力された信号の比は常用対数で表され、デシベル(dB)という単位で表現します。
デシベルという単位は聞きなれない単位ですが、騒音レベルを表す単位として耳にしたことがある人もいるはず?
騒音レベルで言うと
- 図書館の館内の音の大きさ(40dB)
- 人の話し声(60dB)
- 電車の通過する高架下(100db)
といった感じで表現されますが、このデシベルというのが単純な足し算や掛け算で表現される単位ではない…。
電圧を表すボルト(V)だったら、例えば乾電池(1.5V)を2本にすると3V、3本にすると4.5Vという感じで絶対値で表現されるので足し算や掛け算が出来ます。
ところが、音の場合は人が60dBで話す人が2人いても120dBにはならないですし、電車の通過する高架下よりも遥かに静かです。
これはデシベルが絶対的な数値ではなく相対的な比率を表すための単位だから。
騒音を表すための単位としてのデシベルは人間の聞き取ることが出来る限界のボリューム0dBとし、そこから音の大きさを相対的な比率として表しています。
ちなみに絶対的な音のボリュームを表す単位としてはホンやソンという単位がありますが、こちらは音の周波数や個人差による捉え方の誤差があるためあまり使われないようで…。
話を増幅回路に戻しましょう。
仮に下の図のような増幅器があったとして↓

基準となる入力電力をP1(W)、比較対象となる出力電力をP2(W)とします。
入出力の増幅量の比を“増幅度”といい

で求めることが出来ます。
上の増幅器の電力増幅度APを求める場合は

になりますが、これは絶対値としての増幅度合い。
相対的な増幅比として“電力利得GP”を求める場合は増幅度に常用対数をとって

という式で求めることが出来ます。
この式で出た数値はベル(B)という単位で表されるのですが、電力増幅度APに単純に常用対数をとる(log10をくっつける)だけでは数値が小さくなりすぎてしまうので、これに10を掛けて“デシベル”に直します。

小学生くらいの時に“デシリットル(㎗)”なんて単位を習ったかと思いますが、デシベルの“デシ”というのは1/10を表すメートル法の接頭辞です。
電力利得GPの次は“電圧利得GV”を求めてみましょう。
電力利得の時と同じように入力電圧をV1(V)、出力電圧をV2(V)とします。
ここで少し戻って電力利得の計算式の話になるんですが、電力増幅度AP=P2/P1だったので電力利得GPの計算式は

と表す事が出来ます。
ここで電力を求める公式を持ち出して

入力抵抗と出力抵抗をRとすると、電力・電圧・抵抗の関係は次のようになります↓

これを先ほどの電力利得を求める式に代入すると↓

となり、これで電圧利得GVを求めることが出来ます。
てな感じで回りくどく電力利得と電圧利得を求めるための公式を説明してみましたが、なぜ公式がそうなるのかという理屈はおいといて、各公式の関係を纏めるとこんな感じになります↓

例題
試験問題では穴埋め式の問題が出際される傾向があるようですね。
多少計算が必要な問題も出るようですが、電卓を使わなくても出来るような比較的簡単な問題になることが多いようです。
次の記述は下に示す増幅回路の電力増幅度AP(真数)と電力利得GP(dB)について述べたものである。( )内に入れるべき字句の正しい組み合わせをしたの番号から選べ。

- APは、AP=Po/Piで表される。
- GPは、GP=( A )(dB)で表される。
- したがって、AP=100のとき、GPは、GP=( B )(dB)である。
- また、GP=0dBの時、APは、AP=( C )である
解説
電力利得GPは電力増幅度に対数を取り、扱いやすくするために単位をデシベルとしたものなので、Aは“10log10AP”です。
GP=10 log10 APにAP=100を代入すると、
GP=10 log10 AP
=10 log10 100
=10×2
=20
となり、Bには“20”が入ります。
GP=0をGP=10 log10 APに代入すると
0=10 log10 APとなり
AP=10のゼロ乗=1
という訳で、Cには“1”が入ります
まとめ
常用対数が絡んでくるので算数もまともに出来てない私には理解が追い付かないところもありますが、常用対数というのは大雑把に言うと“10のn乗”のnの数を表すもの。
もっと乱暴に言えばゼロの数を数えればいいみたいですね。
例えば“log10 1000”なら、1000は10の3乗、ゼロが3つ付いているので、“log10 1000=3”となります。
試験問題では2つの増幅器を通った電力や電圧の利得を求める式についての問題が出たりしますが、この場合は入力側の増幅回路Giと出力側の増幅回路Goの利得を足し算すればOK!
難しいことやってるように見えますが、実際にやってみるとそこまで難しくは無いみたいですね。
も一つちなみにですが、試験では電卓が使えないのでそれほどややこしい計算問題は出題されません。
例えばデシベル数を求める問題であれば回答しやすいように必ず10のn乗になるようになっているので、気楽にいきましょう!
次回は実際に電圧や電力などを増幅するために使われる増幅回路についてです↓
コメント