航空無線通信士の試験対策:無線工学その8 半導体(接合形トランジスタ)

パイロットへの道のり

今から80年ほど前の無線機器は各種信号の増幅のために割と大きめの真空管を使ってたため小型化が難しく、携帯式の無線機といいつつも背負う必要があるほど大きかったり、重量が10㎏近くあったりとなかなか携帯に不便なものでした。

ところが半導体を使った各種電子部品の登場により急速に小型化と軽量化が進み、耐久性も飛躍的に向上。

さらには価格も大幅に低下したおかげで、ラジオが一家に一台から一人に一台となるほど普及したわけですが、これを実現できたのもトランジスタのおかげでしょうね。

しかし、トランジスタという部品の名前を聞いたことはあっても何をするものなのかがよく分からない…。

そもそも無線を操作するための免許にトランジスタの構造や特性を勉強する必要があるのか?

なんてことをうっかり考えてしまったりもしますが、トランジスタの構造や特性を理解していないとこの後に出てくる送信機や受信機の仕組みが理解しづらくなりますからね!

無線工学の基礎的な部分なので『この知識は何の役に立つの?』なんてことを考えがちですが、試験に出る可能性は高いので端折らずに勉強していくしかなさそうです。

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接合形トランジスタ

半導体には、自由電子が余っているP形半導体と、電子が足りずに正孔(ホール)が出来ているN型半導体の2種類があり、この2つの半導体を接合すると、P形半導体からN形半導体の方向へしか電流を流さないという特性を持つ“ダイオード”という電子部品を作ることが出来ます。

余談ですが“発光ダイオード(LED)”というものの同じような特性を持つダイオードの一種で、正孔(ホール)に電子が出入りする際のエネルギー準位の変化で半導体を構成する元素が発光するという仕組みを利用したもの。

細かい理屈を説明すると話が逸れるので、気になる方はWikipediaで調べてみてください。

ダイオードはP形とN形の半導体を1つづつ接合したものですが、今回解説していく接合形トランジスタはもう少しだけ構造が複雑です。

接合形トランジスタには、2つのN形半導体でP形半導体を挟んだ構造をのNPN形トランジスタ2つのP形半導体でN形半導体を挟んだ構造のPNP形トランジスタの2種類があります。

回路図に使われる図記号はこんな感じ↓

電流はダイオードと同じようにP型半導体からN形半導体へ流れますが、ダイオードと違うのはエミッタ(E)、コレクタ(C)、ベース(B)の3つの電極があるところ。

トランジスタはこの3つの電極のうちどれか1つを入力回路と出力の回路の双方から電流が流れるように接地して使用します↓

上の図ではNPN形トランジスタで説明していますが、PNP形トランジスタも同じ接地方法で使用されています。

トランジスタを動作させるためには各電極に適切な電圧を加える必要があり、どのような接地方法でも入力側は順方向、出力側は逆方向の電圧が加わるようにしなければいけません。

ここでは、試験問題に出題される傾向のあるベース接地とエミッタ接地の場合の電圧の加え方と、方向について解説していきます。

ベース接地回路

NPN形トランジスタでベース接地回路を作る場合

まずは入力側を順方向接続とするために、P形半導体であるベースに電圧E1プラス、N形半導体のエミッタにE1のマイナスを接続します。

次に出力側を逆方向接続とするために、P形半導体であるベースに電圧E2マイナス、N形半導体のコレクタにE2のプラスを接続。

トランジスタの部分にフォーカスすると↓

こんな感じで電気が流れることになりますね。

ベースからエミッタ方向は順方向接続なので電気が流れますが、コレクタからベースへ逆方向接続となるため電気が流れません。

エミッタ接地回路

上と同じようにNPN形トランジスタを使ってエミッタ接地回路を作る場合

入力側を順方向接続とするために、P形半導体であるベースに電圧E1プラス、N形半導体のエミッタにE1のマイナスを接続します。

出力側を逆方向接続とするためには、P形半導体であるベースに電圧E2マイナス、N形半導体のコレクタにE2のプラスを接続。

こちらの接続方法でもトランジスタに流れる電流にフォーカスすると↓​

こんな感じで電流が流れていることになります。

ベース接地回路の場合と同じように、エミッタ接地回路でもベースからエミッタ方向には電気が流れますが、コレクタからベースへは電気が流れません。

電流増幅率

ベース接地回路とエミッタ接地回路に流れる各電流を次のように定義します。

  • ベース電流:IB
  • コレクタ電流:IC
  • エミッタ電流:IE

各電流は上の回路図の矢印の方向に流れますが、どちらの接地方式でも

IE=IB+IC

という式が成り立ちます。

ベースとコレクタから入力された電流を足したものがエミッタから出力されていることから、トランジスタを使うと電流が増幅されるということがわかりますね。

ベース接地回路の場合、トランジスタへの入力電流はIE、トランジスタからの出力電流はICなので、ベース接地回路の電流増幅率αは

α=IC/IE

という式で求められます。

IE=IB+ICから、IEはICよりも大きな数値になるので、αは1よりも小さな値になります。

エミッタ接地回路の場合は、入力電流はIB、出力電流はICなので、エミッタ接地回路の電流増幅率βは

β=IC/IB

で求めることが出来ます。

αとβの関係を式にすると↓

α<1なのでβは1よりも大きな値となります(α<1<β)

仮にα=0.8で計算してみるとβ=4、α=0.9ならβ=9、α=0.99ならβ=99といった具合にαが1に近づくほどβの値は大きくなります。

例題

航空無線通信士の試験では、ベース接地とエミッタ接地での電流増幅率についての問題が出題されるようです。

次の記述はトランジスタ(Tr)のベース接地電流増幅率αとエミッタ接地電流増幅率βについて述べたものである。このうち誤っているものをしたの番号から選べ。ただし、エミッタ電流をIE(A)、コレクタ電流をIC(A)及びベース電流をIB(A)とする。

出典:2018年2月期試験

  1. 図に示すベース接地回路において、αは、α=IC/IEで表される。
  2. 図に示すエミッタ接地回路において、βは、β=IC/IBで表される。
  3. αは1より小さい
  4. βは1より大きい
  5. βをαで表すと、β=(1-α)/αとなる
解説

まず、ベース接地回路とエミッタ接地回路の出力電流はIEは“IE=IC+IB”で求めることが出来ます。

次にベース接地回路の電流増幅率αを求める式は“出力電流/入力電流”という関係から“α=IC/IE”、エミッタ接地回路の電流増幅率βを求める式も同じように“出力電流/入力電流”となるので“β=IC/IB”となります。

IEはICよりも大きい値になるため、αは1よりも小さくなります。

またβをαで表すと“β=1/(1-α)”となるので、βは1よりも大きくなります。

ということで、誤っているのは5番となります。

まとめ

接合形トランジスタにはN形半導体とP形半導体の挟み方の違いによって

  • NPN形トランジスタ
  • PNP形トランジスタ

の2種類に分けることが出来ます。

電流の流し方に違いはありますが、いずれも入力する電流を変化させることで出力電流を大きく変化させることのできる電流駆動素子になります。

電流の増幅率は電極の接地方法によって異なりますが、試験で実際に電流増幅率を求めることはなく、一般的な接合形トランジスタの特徴や機能について出題されるようです。

トランジスタは今回まとめた接合形トランジスタだけではなく、電界効果トランジスタというものもありますが、1つの記事にまとめるとややこしくなりそうなので別の記事にまとめてます↓

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