当たり前ですがパイロットとして飛行機を飛ばすためには、免許が必要です。
クルマやバイクなら、車種に対応した免許があれば問題なく公道を走ることが出来ますが、飛行機の場合は少し事情が違うようで、機首に対応した免許の他に、航空無線の免許を取得する必要があります。
この免許が無いと、仮に飛行機のライセンスがあっても管制機関とコミュニケーションをとることが出来ないため、離陸できないのはもちろんの事、離陸のために滑走路まで進むことも出来ません。
ちなみに、パイロットのライセンスを取得するためには、単独での10時間以上の飛行経験が要求されているわけですが、単独で飛ぶためには絶対に航空無線の免許が必要になります。
ということは、パイロットのライセンスを取得するための飛行訓練の開始時までには、航空無線の免許を取得していないと、飛行訓練がスムーズに進まないということになりますよね…。
てなわけで、まずは航空無線の免許を取得することにしましたが、まずは受験資格や試験範囲について確認してみたいと思います。
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航空無線について
そもそも航空無線ってのは何なのか?
日本国内での無線局の使用認可や、電波の監理を行う総務省が開設している“電波利用ホームページ”によると
「航空通信」は、一般用語であり特に法規則上の定義はありませんが、一般的には飛行中の航空機と地上の無線設備との空地間、あるいは航空機相互間で電話又はデータ通信によって行われる無線通信のことをいいます。
法律上には“航空無線”といった用語は無く、お役所としても“航空通信”と言う呼び方をしているようですが、明確に『これが航空通信(航空無線)だ』という法的な定義は無いようですね。
関係者から怒られそうなくらいに簡単に纏めると、航空通信というのは『飛行機に搭載している無線機と音声やデータのやり取りを行う無線通信』の事のようです。
“音声とデータのやり取りを行う無線通信”ということなので、パイロットと管制官との無線通信だけでなく、VORやTACANにILSといった航空航法援助施設、ACRASのようなデータリンクも航空通信に含まれるそうです。
無線の免許について
日本の法律では無線機器を取り扱うためには各種の免許が必要になってきます。
大昔に4級アマチュア無線の免許を取得したので、多少は無線関係の法律をかじったことがあるんですが、無線の免許は大まかに
- 無線機本体の免許
- 無線機を操作するための免許
の2つに分けることが出来ます。
『無線機本体の免許』というのは正式には“無線局免許状”といい、無線機が法律や政令で定められた基準に適合していることを検査し、これに合格することで総務省(各地方の電波管理局)から免許状が交付されます。
分かりやすく言えばクルマの車検証のような物ですね。
もう一つの『無線機を操作するための免許』の方は、無線機を操作する人が法律や政令に定められた知識や技能を持っていることを試験し、合格することによって交付されます。
こちらはクルマで例えるなら運転免許証のような物です。
無線の免許も運転免許証と同じように、免許ごとに扱える無線機の種類や業務範囲が定められていて
- 業務内容(有償か?無償か?)
- 使用できる範囲(陸上、海上、航空等)
- 使用できる周波数帯
- 電波出力(発射できる電波の出力)
によって免許が分けられています。
私が持っている“第4級アマチュア無線技士”の扱える無線機と業務範囲で説明すると
- 業務内容:無償での無線関連の研究目的での通信
- 使用できる範囲:制限なし
- 使用できる周波数帯
21MHz~30MHz、または8MHz以下(出力10W以下)
30MHz以上(出力20W以下) - 電波出力:20W以下
となっています。
この免許の業務内容は個人的な無線の研究に限られているため、営利目的の通信(スポンサーを付けてのラジオ放送など)や報酬を受けての通信(タクシーの配車など)は出来ませんし、そもそも緊急時を除いてアマチュア無線局以外との通信は出来ません。
このため、仕事としての無線通信業務を行うためには、使用する無線機の設置場所や利用目的に応じて、総合無線通信士、陸上無線技士、海上無線通信士、航空無線通信士の資格が必要になります。
航空通信に必要な資格
飛行機に搭載された無線機を使う(電波を発射する)ためには
- 第1級または第2級総合無線通信士
- 航空通信士
- 航空無線通信士
- 航空特殊無線技士
のいずれかの資格が無くてはいけません。
第1級または第2級総合無線通信士
“第1級総合無線通信士”の資格は、日本国内の無線の免許の最高峰で、この免許があれば法律上は全ての無線局を合法的に操作することが可能!
とはいえ、航空通信のためだけにこの免許を取得する人はまずいないでしょうね…。
一般的にはテレビ局や通信会社の技術スタッフのように“様々な種類の無線機器を取り扱う必要のある職種”で働く人が必要とする資格です。
“第2級総合無線通信士”の資格は、第1級総合無線通信士の下位資格で、扱うことのできる無線機の出力や、通信できる周波数帯に制限が発生しますが、この資格でも飛行機に搭載された無線機を操作することは可能です。
この資格も通信会社の技術スタッフが取得することが多く、パイロットになるためにわざわざ取得しようという人はいないでしょうね…。
航空無線通信士
“航空通信士”の資格は厳密に言うと総務省が管轄する無線の資格ではなく、国土交通省の管轄する航空従事者の技能証明になります。
この資格、というか技能証明があれば飛行機に乗り組んで通信士として無線通信を行うことが出来るとされていますが、実際のところ今現在運行されている民間の飛行機で通信に専従する乗組員はいませんし、“航空無線通信士”もしくは“航空特殊無線技士”のいずれかの資格があればパイロットが直接地上管制や他の飛行機と通信することが出来るため、わざわざ航空通信士の技能証明を取得する人はほとんどいないようです。
航空無線通信士
“航空無線通信士”の資格は、航空運送事業(旅客や貨物の輸送)に用いる航空機に搭載された無線機の操作と、それらの航空機と通信を行う無線機器を操作するのに必要な資格。
エアラインのパイロットや、航空管制官になるには必須の資格になりますが、それ以外にもエアラインで運行中の飛行機と通信を行う必要のある部署(整備や運行管理)の職員にも必要な資格になるようです。
航空特殊無線技士
“航空特殊無線技士”の資格は、航空運送事業以外の事業に用いる航空機に搭載された無線機の操作と、それらの飛行機との通信を行うために必要で、プロを目指さなくてもパイロットになるためには必須となる資格になります。
エアアインのパイロットになるためには航空特殊無線技士ではダメですが、社有のプライベートジェットのように“運賃の発生しない乗客や貨物”を運送する場合や、送電線の監視、航空写真の撮影といった業務であれば、この資格のカバー範囲になるようです。
どの資格を取るべきか?
結論から言ってしまえば、航空無線通信士の資格を取るのが一番確実でしょうね。
第1級総合無線通信士の資格があれば、日本国内どころか世界中の無線機を操作することが出来ますが、ハッキリ言っちゃうと飛行機の無線のためだけにそこまでの資格を取得する必要は無いでしょう。
無線免許の最高峰なので試験範囲が広いですし、航空通信と関係のない部分まで勉強しないといけなくなるため無駄が多い…。
第2級総合無線通信士の方は1級程の取得難易度は無いにせよ、数ある無線の試験の中でも難易度はかなり高めになるので、やはりパイロットになるためにわざわざ総合無線通信士を取得するのは…。
航空通信士の資格でも良さそうな気がしますが、受験のための技能証明に第一級総合無線通信士、第二級総合無線通信士または航空無線通信士の免許が必要になります。
技能証明のために必要な免許があれば飛行機に搭載されている無線機を使うことが出来るので、わざわざ航空通信士を取得する必要は無いんですが、航空法上はパイロット以外の運航乗務員として無線を扱うためには航空通信士の資格が必要になるんだそうで。
『航空通信士として働きたい!』というのなら取得する必要があるかもしれませんが、残念ながら航空通信士を必要とする飛行機は民間には存在しません!
となると、取得するなら“航空無線通信士”か“航空特殊無線技士”の2択になりますね。
単純に飛行機を飛ばすだけなら航空特殊無線技士でも充分ですが、職業としてのパイロットを目指すなら航空無線通信士の方が良さそうです。
もちろん、業務内容によっては航空特殊無線技士でも充分ですが、就職先の選択肢を増やすためにも航空無線通信士の資格があったほうがいいでしょう。
求人情報を見ると、旅客輸送以外の業務を行う航空会社でも、必要な資格として航空無線通信士があったりしますからね。
航空無線通信士の受験資格
航空無線通信士に限らず、無線の免許試験を受けるための受験資格というのは特に設定されていません。
理屈の上では小学生や幼稚園児でも受験は可能です。
ただし、航空無線通信士の試験については、リスニングと口述の試験があるため、視聴覚や発声に障害のある方は受験が難しいかもしれません。
アマチュア無線なんかだと、点字の試験問題があったりしますが、流石に航空無線通信士はね…。
こんなこと言うと変な所から叩かれそうですが、現在の技術では目の見えない人は飛行機の操縦や航空管制を行うことは出来ませんし、ろうあ者がパイロットや管制官になるにしても、どうやって飛んでいる飛行機に指示を出したり、管制官から指示を受けるのか?って話になっちゃいますからね。
航空無線通信士の試験科目
航空無線通信士の試験科目は
- 学科試験
無線工学
法規
英語 - 実技試験
電気通信術
となっています。
学科試験については各科目ともマークシート方式、実技試験の“電気通信術”では“フォネティックコード”の聞き取りと読み上げを行うといったもの。
なかなか難しそうですが、過去の試験問題はインターネット上に公開されていますし、解説付きで市販されてたりもします↓
過去の試験問題集だけでなく、いろいろな種類のテキストも市販されているので、独学で試験対策を行うこともそれほど難しくはないかもしれませんね↓
独学での試験対策に不安がある方は日本無線協会の主催する無線通信士養成課程があるので、確実に合格したいのであればこちらに通ったほうがいいかもしれません↓
ちなみに、養成課程で使用される“標準教科書”というものも市販されているので、それを試験対策に使うのもありかも↓
今回は独力での合格を目指してこちらを購入してみましたが↓
果たしてこれでうまくいくのか…。
テキストを見た感じそこまで難しくも無さそうですが、油断せずに試験勉強をしてきたいと思います。
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