いい歳こいたオッサンがゼロからパイロットになるために、色々とリサーチをしております。
『リサーチなんかしなくていいから早くトレーニング始めろよ!』なんて思うかもしれませんが、これまでの人生、リサーチ不足が理由で失敗したことは数知れず…。
過去の経験上、一見するとどうでもいいように見えるところが、後からとても重要なことだと分かったり、計画を進める上でのボトルネックになってしまったり、なんてことが何度もありましたからね。
今のうちに気になることを調べられるだけ調べておこうという魂胆です。
前回は“ライセンスの取得方法”について調ベてみましたが↓
クルマの免許でいう『飛び込み試験』のような取得方法は飛行機のライセンスには存在しないようで、必ずどこかのフライトスクールに通う必要があるようです。
となると気になるのが、フライトスクールの訓練費用!
完全に自己資金で訓練を受けるにせよ、何らかのローンを組むにせよ、まずは訓練費用を調べておきたいところ。
自己資金があればともかく、教育ローンを組むために銀行に行って『いくらかかるか分からないけど、飛行機のライセンスが欲しいんでお金貸してください!』なんて言えませんからね…。
ローンを組むなら最低でも飛行訓練に必要な具体的な費用は知っておかなくてはいけないでしょうし、可能であれば訓練の段階ごとにかかる費用、予定している訓練期間、計画変更時の費用の変更、ローンの返済計画といったことも考えておくべきでしょう。
てなわけで、今回は銀行を説得してお金を借りるという前提で、“ライセンスの取得費用”について調べてみることにしました。
Table of Contents
飛行訓練の相場
日本国内のフライトスクールの相場
一般的にはあまり知られていませんが、実は日本国内にはいくつもフライトスクールがあります。
ネットで検索すると沢山のフライトスクールのHPがヒットしますが、HP上に具体的に費用を明記しているところはごくわずかですね…。
フライトスクールの規模や、訓練に使用する機体、訓練時期など、訓練環境がスクールや入校時期によって違うので飛行訓練に必要な費用が違いますし、そもそも訓練生の適性や習熟度によって訓練時間が変わるので、正確な訓練費用というのは提示できないんでしょう。
それでも稀に具体的な訓練費用を明示しているスクールもあったりします。
例えば、本田航空の運営する“ホンダフライングスクール”。
このスクールでは自家用操縦士のライセンスを取得するためのコースを開講していますが、このコースの訓練費用は
- 入学金:485,100円
- 座学訓練費:576,708円(68時間分)
- 教材費:実費(オリジナル教材と市販教材で計20万円程度)
とされていて、合計で約130万円ほど。
予想以上に安くてびっくりしましたが、ここに記載されているのは“座学訓練”の費用。
肝心の飛行訓練の費用が含まれてません!
飛行訓練の費用は記載されていませんでしたが、同じホンダフライングスクールが開講している“エンジョイフライトコース”と言う、ライセンス取得を目的としない、遊覧飛行と操縦教育を兼ねたようなコースはでは、飛行訓練の費用が“75,042円/時間”となっていました。
恐らく自家用操縦士コースの飛行訓練も同じくらいの費用なんでしょう。
自家用操縦士コースでの最低飛行時間は82時間となっているので、飛行訓練に必要な費用は最低でも6,153,444円。
入学金や座学訓練費も含めると、総額750万円ほどになりますね…。
恐らく他のフライトスクールも多少の違いはあれど似たような物でしょう。
ちなみにこれは飛行機を飛ばすために最低限必要な“自家用操縦士”のライセンスを取得した場合の話。
ここからさらに事業用操縦士のライセンスを取得しようとすると、訓練時間が3倍くらい必要になるようなので、事業用操縦士の訓練で2,000万円前後。
全くのゼロから訓練を開始すると、トータルで3,000万円程必要になる計算になります。
海外のフライトスクールの相場
飛行機のライセンスを取得するために、海外に留学するという方法もあります。
昔は人件費や物価の安い中国でライセンスを取得するのが流行り、私の知り合いも中国でライセンスを取得して日本に帰国してから書き換えていましたが、ライセンスを書き換えた人が事故を起こすケースが増えたため、一部の国で取得したライセンスの書き換えが出来ないようになったとか…。
2021年時点で話ですが、航空大国と言われるアメリカでFAA(連邦航空局)のPPL(自家用操縦士)のライセンスを取得しても、JCAB(国土交通省航空局)の自家用操縦士の筆記試験(航空法のみ)に合格しなければ、日本の空を飛べないくらいですからねぇ。
安さにつられて変な国でライセンスを取得しても、下手すると現地での訓練が全て無効になってしまうなんてパターンもあるようです。
とはいえ、海外、特にアメリカやカナダ、オーストラリアは晴天率の高い場所が多く、飛行機のレンタル費用も日本に比べると安く、安価で効率よく訓練を受けることが出来るうえ、JCABのライセンスへの書き換えが比較的簡単に出来ることから、今でも人気があるようです。
訓練生の適性や習熟度によって必要な飛行訓練の時間が異なるので、海外での訓練も国内訓練と同じく相場を出しづらいようですが、飛行訓練のために使う飛行機のレンタル料の相場が日本の半分くらいらしいので、PPL取得までに必要な訓練費用は、日本国内で訓練を行う場合の半分くらいで400万円前後となるようです。
これに加えて現地での滞在費用が必要になるんですが、PPL取得のための滞在期間は平均すると3カ月前後なんだそうで。
過去にアメリカで3カ月ほどホームステイをしていたことがあり、この時は宿泊費、食費、クルマのレンタル料、クルマの保険料を含めて約60万円ほどで滞在できましたが、仮に同じ条件で滞在することが出来ればPPLを取得するまでに必要な費用は総額で460万円前後といったところでしょうね。
CPL(事業用ライセンス)まで取得するとなると1~2年の滞在期間が必要になるようですが、これだけ滞在するとなると、単純計算で1,200~2,400万円ほど必要になるのではないでしょうか?
これでも日本国内でライセンスを取得することを考えるとかなり安いですけどね。
ちなみに、PPLの場合は書き換えのために日本国内の航空法の筆記試験を受けるだけで良いですが、CPLの場合は航空法の筆記試験の他に実地審査の一部を受ける必要があり、事前にある程度日本国内で飛行訓練を受けないといけないようです。
『ライセンス持ってるんだから追加の訓練はいらないでしょ?』なんて思ってたんですが、アメリカと日本で微妙に飛行のルールに違いがあるため、FAAのライセンスをJCABに書き換えることが出来ても『怖くていきなり単独で日本の空を飛ぶことが出来ない』なんて話を聞いたことがあります。
そう考えるとお金がかかっても国内訓練をしたほうがいいような?
メリットとデメリット
費用面だけで考えると海外のフライトスクールに行ったほうが安くすませられる訳ですが、帰国後の事を考えると初めから国内のフライトスクールに行ったほうがいいような気も…。
一旦それぞれのメリットとデメリットを考えてみました。
人それぞれに感じるメリットとデメリットに違いがあるかと思いますが、あくまで私の感じたところです。
国内のフライトスクール
メリット
- 国内で訓練を受けることが出来る
- JCABライセンスへの書き換えの手間が無い
- 日本国内のルールに習熟できる
- 国内の航空会社への就職に有利?
- トラブルがあった場合の対応がしやすい
デメリット
- 費用が高い
- 訓練環境に制限が多い(空域や気象条件)
- 海外の航空会社へ就職には有利に働かない?
海外のフライトスクール
メリット
- 費用が安い
- 訓練環境の制限が少ない
- 訓練先の国の航空会社への就職に有利?
- 語学力の向上が狙える
デメリット
- 日本国内の航空会社への就職には有利に働かない?
- 訓練と試験を受けるための英語力が必要
- JCABライセンスへの書き換えのために追加訓練が必要
- トラブルがあった場合の対応が難しい
パッと思いつくのがこれくらいですかね?
単純に費用面や訓練環境を考えると海外のフライトスクールに行ったほうがいいかと思いますが、そこから先、プロのパイロットとして食っていくことを考えると、どちらがいいのか悩ましい所。
まぁ、働き口の事は後から考えればいいような気もしますが、ローンを組んで飛行訓練を行うとなると、返済の事も考えなきゃいけないですからね…。
ライセンス取得後の進路
ライセンスの取得はあくまで通過点で、本来の目的はプロのパイロットとして生活していくということ!
パイロットになるのは子供のころからの夢でもあるんですが、現実的なことを言うと、ライセンス取得にかかった費用を取り戻して、その後の生活基盤を確保していかないといけません。
そのためにはパイロットの雇用情勢について調べておく必要があります。
過去10年ほど世界的なパイロット不足が問題となっていて、世界中の航空会社で熾烈なパイロットの引き抜き合戦が繰り広げられていましたが、新型コロナの世界的な流行により状況は一変…。
2020年は航空需要が大幅に低下して旅客機の運航本数が激減し、パイロットの大量解雇が始まりました。
新型コロナの流行が終息するまではパイロットの採用が控えられるかと思われていましたが、2021年の8月時点では、新型コロナの流行は継続してるものの航空需要は回復。
解雇されたパイロットは順次再雇用され、再びパイロット不足となっているというのが現状です。
とはいえ、必要なライセンスを持っていれば誰でも雇用してくれるわけでは無いというのが難しい所…。
各種のライセンスに加え、一定以上の飛行経験が無いと書類審査にすら引っ掛かりません!
日本国内のとある航空会社の求人を見てみると、応募資格にはライセンスに加えて“機長としての2,000時間以上の飛行経験”や“副機長としての500時間以上の飛行経験”と記載されていました。
中途採用の求人なので経験者を求めているのは当たり前なんですが、“フライトスクールを卒業したてで飛行時間が400時間程度”では応募すら出来ない…。
これじゃせっかくフライトスクールを卒業しても働き口が無いように見えますが、よりよい条件を求めて航空会社を渡り歩くというパイロットも多いようなので、抜けた穴を埋めるためにさらに緩い条件で応募を掛ける航空会社も出てきます。
それに、事業用操縦士取得済みの人を対象にして副操縦士の自社養成を行う会社もあるので、フライトスクールを卒業したばかりでも意外と就職のチャンスは転がっているようです。
自社養成が出来る大手や中堅にこだわらなければ、航空写真の撮影や航空測量、チャーター機の運行を行う会社もあるので、意外と働き口はありそうです。
航空機の利用がそれほど一般的になったとも言い難い日本でもこんな状況ですから、自家用車並みの感覚で飛行機を飛ばす人の多いアメリカに行くと日本以上にに求人があるようです。
そもそもアメリカの場合は、新卒採用から定年まで同じ会社で働く人がかなり稀らしく、キャリアアップのために簡単に転職していきますからね。
しかも日本のように“新卒採用”にこだわらず、必要とする学歴や経験があれば抜けた穴を埋めるために簡単に採用してくれる。
その代わり、給料に見合った能力がなければすぐにクビを切られますが…。
パイロットの場合もご多分に漏れず、コネやネットワークを駆使して少しでも条件の良い会社を見つければすぐに転職していくそうですね。
キャリア形成のための転職というのもあるようで、例えば、農薬散布のような仕事からスタートして徐々に飛行時間をため、順次必要なライセンスや技能証明を取得していき、小型機の遊覧飛行→ビジネスジェットの雇われパイロット→地方の小規模なエアラインの副機長→地方の中規模なエアラインの機長→メジャーなエアラインの機長…といった感じでステップアップしていく人もいるとか。
おかげで初心者パイロット向けの仕事は常に空きがある状態らしく、短期的な収入面に目をつむれば働き口には困らないですし、適時ステップアップしていけばローンの返済も比較的簡単にでき、現地での生活も安定させやすいようです。
ただし、日本人がアメリカで働くためには就労ビザか永住権が必要ですし、パイロット同士のコネクションを作っておかないとスムーズに転職できないみたいですけどね。
そう考えると英語でのコミュニケーション能力や社交性が求められるので、英語が苦手な私の場合は日本国内で働き口を探すほうが良さそうな気もします。
となると、費用面には目をつむって、日本国内でライセンスを取得して、日本国内の航空会社への就職を狙うのが良いかもしれませんね。
まとめ
今回はパイロットになるために絶対必要なライセンスの取得費用についてリサーチしてみました。
ライセンスを取得するためには
- 日本国内のフライトスクールでライセンスを取得する
- 海外のフライトスクールで現地のライセンスを取得して、日本のライセンスに書き換える
という方法があります。
どちらのフライトスクールを選んでもメリット・デメリットがあるので、一概に“こっちのスクールが良い!”とは言い切れないみたいですね。
結局のところ本人の能力や、ライセンス取得後のビジョンで決めるしかないかと思います。
単純に費用面だけで言えば海外のフライトスクールに行ったほうがいいでしょうけど、日本で働く前提であれば、訓練段階から日本の空で飛んでいたほうがいいでしょうし、海外のエアラインで働きたいのにわざわざ日本のフライトスクールに通うのもおかしな話。
ライセンス取得はあくまで通過点!
取得後の生活の事を考えると、少しでも就職に有利な方法を選択する必要がありますね。
それと、可能な限り短時間で効率よくライセンスを取得する必要があります。
少なくとも定年までにはローンを完済しないといけませんからね!
コメント
事業用操縦士を対象とした就職活動では毎回若干名の採用枠に対して数百人のライセンシーが飛びつくレベルの競争率です。それだけ免許を持っている人が溢れているということです。ですのでライセンスを取ったら就職先があると考えるのは危険かもしれません・・・
スクールの説明会などで、その年の卒業生の人数に対して就職率がどのくらいかは質問してみるといいと思います。
どんなライセンスでも同じですが、ライセンスさえあれば就職できるというほど簡単な話ではないですよね…。
ライセンス+α(経験、人間性など)が無いと食べてはいけないかと思います。