自衛隊への入隊方法 技術海上幹部・技術航空幹部

自衛隊のキャリアパス

技術海上幹部・技術航空幹部は大学などを卒業したのちに一般企業で一定以上の期間実務経験を積んだ人達を幹部自衛官として採用する制度。

自衛隊の募集区分はいくつもありますが、技術幹部は毎年の募集人数が極端に少ないため一般にはほとんど知られていないどころか、現役自衛官でも制度を知らない人が殆ど…。

私も20年の自衛隊人生でこの枠で採用された人を一人しか見たことがありません…。

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技術海上幹部・技術航空幹部 とは?

技術海上幹部・技術航空幹部とは、応募資格に定められた大学の学部・専攻学科等を卒業したのちに、民間企業や官公庁で大学の学部・専攻学科に関連する勤務の経験がある人を対象にした制度です。

この制度で採用されると民間企業、官公庁での勤務経験や年数に応じて幹部自衛官に任命され、陸・海・空自衛隊の幹部候補生学校で所定の教育を受けたのちに自衛隊の装備品などの研究開発、維持整備を行う部門や、情報通信分野、心理戦や隊員のメンタルヘルス、安全保障にかかわる政策決定のスタッフ、薬剤及び看護といった医療系の分野に関する業務に従事します。

自衛隊の高度に専門的かつ技術的な分野の即戦力と期待されてい再ようされる点が技術海曹・空曹に類似した制度ですが、あちらは海曹あるいは空曹としての採用後、現場での実務を担当するのに対し、技術海上幹部・技術航空幹部は装備品の研究開発や整備維持をはじめとする専門性の高い分野でのプロジェクトや業務の指揮監督をする幹部自衛官として採用されるという違いがあります。

技術海上幹部・技術航空幹部 になるには?

技術海上幹部・技術航空幹部として自衛隊に入隊するためには採用試験を受験し、これに合格する必要があります。

技術海上幹部・技術航空幹部 の募集受付期間

募集受付期間は例年3月~5月下旬まで。

募集人数は毎年異なりますが、海上自衛隊・航空自衛隊いずれも10名前後です。

技術海上幹部・技術航空幹部 への応募資格

自衛官採用HPの案内を見ると“大卒で特定の学科等を専攻し業務経験等を有する者”となっています。

詳しくは地方協力本部に問い合わせていただいたほうが確実ですが、参考までにある年の募集要項を見ると次のような学科の卒業や勤務経験のある人を募集しているようです↓

技術海上幹部

艦船・航空機・武器部門

理学部又は工学部において

  • 造船(船舶)
  • 工学
  • 航空宇宙工学
  • 機械工学
  • 精密機械工学
  • 電気工学
  • 金属工学
  • 電子工学
  • 通信工学
  • 通信工学
  • 数理工学
  • 情報工学
  • システム工学
  • 宇宙工学
  • 無線通信工学
  • 応用物理工学
  • 化学
  • 応用科学
  • コンピューターネットワーク

又はそれらに相当する学科を専攻し

  • 関連分野での研究開発、設計、製造、検査、整備などの経験を有する者。

又は

  • 関連する国家資格(無線通信関係)を保有している者。
情報通信部門

理学部又は工学部において

  • 無線工学
  • 電子工学
  • 電子情報工学
  • 電磁波工学
  • 通信工学
  • 無線通信工学

またはそれに相当する学科(艦船・航空機・武器の募集対象となる専攻学科との重複あり)を専攻し、官公庁、民間企業、大学等において

  • 通信
  • レーダー
  • 電子デバイス
  • 電子戦システムなど

の開発に関する業務、研究開発経験を有する者。

安全保障部門
  • 安全保障学
  • 国際政治学
  • 国際関係論

又はこれらに相当する学科を専攻し

  • シンクタンクなどでの戦略理論等に関する研究実績(論文掲載、学会での発表)を2年以上

有する者。

語学部門

外国語(中国語、ロシア語、韓国語)の学士資格(語学検定2級相当)以上を有する者。

技術情報分析部門
  • 電気工学
  • 電子工学
  • 電磁波工学
  • 通信工学(無線通信、コンピューター通信)
  • コンピューターネットワーク分野

又はこれらに相当する学科を専攻し、5年以上

  • 電磁波を利用する装備(レーダー、通信、航法、誘導)またはこれらに類する他の産業における機器などの研究開発、設計、製造、検査、整備等の業務

又は

  • 大学その他の教育研究機関における電磁波利用又はこれに類する分野の研究開発業務

の実務経験を有する者。

心理部門

大学または大学院において心理学またはこれらに相当する学科を専攻し、

  • 臨床心理士及び公認心理士の資格

を持ち、2年以上の

  • 精神保健
  • 心理査定
  • 臨床心理またはカウンセリングなど

の実務経験を有する者。

施設部門

専攻学科不問で

  • 技術士(技術士補)
  • 建築士
  • 電気主任技術者
  • 各種施工管理技士

の資格を持ち

  • 官公庁、民間企業などでこれらの資格に関わる業務

又は

  • 官公庁において3年以上の工事または役務などに関する発注、監督検査

の実務経験を有する者。

航空自衛隊

気象部門

理学部又は工学部などで

  • 気象学
  • 地球物理学
  • 情報工学

又はこれらに相当する学科を専攻し、

  • 官公庁、民間企業、大学等において2年以上の気象に関連する業務経験

を有する者。

情報通信部門

専攻学科は不問で

  • CISSP

またはIPAの定める「ITスキル標準」のうち

  • 情報処理安全確保支援士
  • システム監査技術者
  • プロジェクトマネージャ
  • データベーススペシャリスト
  • ネットワークスペシャリスト

のいずれかの資格を持ち

  • 3年以上の情報セキュリティ関連の業務経験

を有する者。

法務部門

法学またはこれに相当す学科を専攻し、

  • これらに関する国内外の修士号または博士号を取得

していて

  • 大学院における宇宙分野に関わる研究または宇宙関連企業での宇宙に係る国際法の研究などの実務経験を2年以上

有する者。

安全保障部門
  • 安全保障学
  • 国際政治
  • 社会学
  • 経済学
  • 国際関係論
  • 意思決定論

またはそれらに相当する学科を専攻し

  • 対象となる学問の国内外の博士課程修了者またはこれと同等の能力を有し(大学院及びシンクタンクなどでの安全保障にかかわる研究実績(学術誌への論文掲載、学会での発表)を2年以上有する)

かつ

  • 洋書又は外国文献(主として英語又は中国語)を読破できる語学力を有する者
研究開発部門

理工系学部またはそれらに相当する学科を専攻し

  • 国内外の理工系学部の修士号または博士号を取得
  • 2年以上の電気、電子、通信、航空宇宙分野などの開発部署における実務経験

を有する者

衛生(看護)部門

看護学科またはそれに相当する学科を専攻し

  • 国内外の学士号または修士号を取得
  • 看護師の資格を保有し
  • 看護師としての業務経験を2年以上有する者
衛生(心理)部門

臨床心理学またはこれに相当する学科を専攻し

  • 国内外の臨床心理学に関する学士号または修士号を取得
  • 臨床心理士の資格を保有し
  • 精神保健、心理査定、臨床心理またはカウンセリングに関する業務経験を2年以上有する者

こちらはあくまで“ある年の募集要項に記載されていた応募資格”です。

年度によって募集対象が異なることもあるので、詳しいことは自衛官採用HPまたは最寄りの地方協力本部にてご確認ください。

技術海上幹部・技術航空幹部 の採用試験

採用試験例年6月下旬に行われます

試験は海上と航空で内容に違いがあるようで

  • 海上自衛隊:筆記試験(一般教養、小論文)、口述試験(面接)、身体検査
  • 航空自衛隊:筆記試験(一般教養、小論文、採用部門別の専門問題)口述試験(面接)、身体検査

となっているようですね。

筆記試験の過去問が自衛官採用HP上に公開されていないので、実際にどのような問題が出題されるのか?またはどれほどの難易度なのか?が分かりません。

ただ、技術幹部の採用試験は1日ですべて終わるようですので、試験問題の出題数はそれほど多くは無いのではないかと思います。

難易度は幹部として採用されることを考えると一般幹部候補生相当になるのでは無いでしょうか?

自衛官採用ホームページでは公開されていませんが、地方協力本部に問い合わせれば過去の試験問題を入手することが出来るかもしれません。

入隊

採用試験に合格すると受験した年の9月下旬(海上自衛隊)または10月上旬(航空自衛隊)に自衛隊に入隊します。

技術海上幹部・技術航空幹部 の入隊先

技術幹部として採用されると

  • 海上自衛隊:海上自衛隊幹部候補生学校(広島県江田島市)
  • 航空自衛隊:航空自衛隊幹部候補生学校(奈良県奈良市)

へそれぞれ入校し、約2か月間の教育を受けます。

一般幹部候補生や防衛大学校の卒業生がが幹部候補生学校で1年近くの教育訓練を受けるのに比べるとかなり教育期間が短いですが、恐らくこれは自衛隊として技術幹部に最前線で部隊の指揮を執ることを求めていないから。

幹部候補生学校では、自衛官としての最低限のマナーやモラル、知識をつめ込んで全国の部隊へ赴任していきますが、これは部隊指揮の能力よりも今までの経験経歴を生かして一日も早く研究開発業務の即戦力となって貰いたいからでしょう。

こんな短い訓練期間で部隊配属されることに不安もあるかと思いますが、基本的には入隊前の仕事とそれほど変わらない業務に携わることになるので、それほど不安に思う必要は無いかもしれません。

そして自衛隊も『民間企業のノウハウややり方を吸収したい』と考えての事でしょうから、むしろ自衛隊の方にハマらない人材の方が良いのかもしれませんね。

技術海上幹部・技術航空幹部 のキャリア

技術海上幹部・技術航空幹部で入隊した場合の階級

技術幹部として自衛隊に採用されると、保有する学位や大学卒業後の経過年数、実務経験に応じて階級が指定されます。

募集要項を見ると大学卒業後

  • 1年以上:3等海・空尉
  • 3年以上:2等海・空尉
  • 5年以上:1等海・空尉
  • 9年以上:3等海・空佐

になるようですが、もちろん『大卒後9年ニート生活をしていて実務経験がない』という人は3佐にはなれませんのであしからず…。

技術海上幹部・技術航空の昇任

海上自衛隊・航空自衛隊幹部学校卒業後は各部隊に配置され、その後は勤務成績に応じて昇任していくことになります。

基本的には後方の研究開発部門や情報分析部門に所属しているため、一線部隊に勤務するほかの幹部に比べると目立った実績が上げづらいので評価されにくい傾向にあるのかもしれません。

それと技術幹部には防大や一般幹部候補生出身者のように部隊の指揮や運営の能力は求められていないため、幹部学校や海外の軍事大学の開講する指揮幕僚課程に進むことも難しいようで、技術幹部として入隊して将官にまで昇任するのはかなり難しいようです。

もちろん本人の努力次第で将官にもなれないことは無いでしょうけどね。

ただし、防大や一般幹部候補生出身者と違い、部隊側から昇任をせっつかれないという所はあると覆うので、他の幹部のように“普段は自分の普段の業務を行いながら業務の合間に昇任のための勉強をする”という必要はそれほどないのかもしれません。

そうすると自分の業務や研究に没頭する事が出来、しかもそれが評価されるため、研究開発系の仕事が好きな人にはやりがいがあっって良いかも。

技術海上幹部・技術航空幹部 のミッション

採用される部門によって業務内容に違いがありますが、技術幹部として採用されるとおおむね研究開発業務に携わることになります。

一番イメージしやすいのが護衛艦や戦闘機、武器・弾薬、レーダーや通信機器といった装備品の開発。

海上自衛隊の“艦船・航空機・武器部門”、”情報通信部門”や航空自衛隊の”研究開発部門”で採用された人たちがこういった新しい装備品の開発や既存の装備品の改善、改良といった研究開発業務に携わります。

少し古いですがNHKで昔放送していたプロジェクトXみたいな感じの仕事をしているといえばイメージしやすいかな?

装備品の研究開発以外での技術幹部の配属先には

  • 海外情報の分析(語学部門、安全保障部門)
  • 心理戦・防諜・メンタルヘルス(心理部門)
  • 安全保障戦略(安全保障部門)

といったものがありますが、いずれも第一線から遠く離れた中央司令部での勤務。

自らが作戦指揮をするのではなく、高級指揮官が意思決定をする上での助言や情報提供をするのが主任務になります。

これらの業務はハリウッド映画や海外ドラマに登場するCIAのスタッフみたいな感じですかね?

部隊勤務

基本的には研究開発部門、また中央の司令部での勤務が多いですが、幹部候補生学校卒業後に部隊実習として一線部隊に配置されることもあるようです。

私が現役の自衛官としてとある基地で整備員をしていた頃に、一度だけ技術幹部で採用された人が見習いながらも小隊長として配属されたことがありました。

確か大学院で航空工学の修士号か博士号を取得したという人だったと思いますが、しばらくとある航空機関連の部品のメーカーで設計に携わっていたそうで。

幹部候補生学校卒業後、一線部隊での航空機の整備や運用の実態について学ぶために半年ほど配属されてましたが、初級幹部の人手不足から普通に見習いでも何でもなく、階級相応の整備幹部として整備小隊長に任命されてしまいました…。

自衛隊は良くも悪くも階級がすべてなので、幹部の階級章が付いていれば本人のバックグラウンドや知識・経験に関係なく、すべての幹部自衛官に階級相応のの職権が与えられると同時に責任が付いて回るのでしょうがないのですが、それにしたって指揮能力を持たない人に小隊長とはいえ部隊指揮官を任すのはどうなんでしょうね?

まぁ技術幹部がソシャゲのSSR以上のレアキャラなのでみんなどう扱っていいのか対応に困っていたというのもあるかと思いますが…。

結局彼は半年間の部隊実習で技術幹部としての見識ではなく整備幹部としての知識と初級幹部としての部隊運営の手法を身に付けて開発部門に旅立っていきました。

結構話す機会があったんですが、実習期間中によく『この経験は技術幹部として何の役にも立たねぇよなぁ…』とぼやいていたのが印象的でした。

その後の彼の消息は杳として知れませんが、部隊実習の終了後は航空自衛隊岐阜基地にある飛行開発実験団に赴任したので、今ごろ部隊で運用中の各種の航空機の改善や能力向上、あるいは新規開発される航空機の試験業務に携わっているのではないでしょうか?

彼が今後開発される機体の開発に携わり、整備性や運用の柔軟性の事まで検討してくれることを期待するなら、実習中には整備幹部としての経験を積ませるよりも下っ端整備兵と同じ業務を経験してもらう、あるいは整備部門の統制を行う整備指揮所や作戦部門で実際の運用方法を見てもらうというのが正解だったのかもしれませんね。

まぁ一介の下っ端空曹だった私にはその辺の決定権は無かったのであくまで個人的な感想ですが…。

もちろん経歴管理の観点から、技術幹部とは言え定期的に部署を移動する必要もあるので、定年までずっと研究開発部門にいられるということは無く、場合によっては一線部隊で部隊長としての勤務もあるかもしれません。

そう考えると小隊長の勤務経験は無駄とは言えませんけどね。

私は航空機開発に携わる技術幹部の一人としか一緒に勤務した経験はありませんが、恐らく他の部門の技術幹部も似たような感じで一線部隊での実務経験を積んでから研究開発や情報分析といった分野に進んでいるのではないでしょうか?

おそらく定期的に異動して、彼らの開発した装備品や提供した情報を実際に使用しているユーザーの生の声を見聞きし、再び元の部署に戻ってユーザーの声や自らの経験をフィードバックするといった感じで勤務しているのではないかと思います。

まとめ

技術幹部は海上自衛隊あるいは航空自衛隊の新規装備の研究開発や既存の装備の改善、能力拡張に携わったり、海外情報の分析、サイバー戦を専門的な技術や経験から支えるために、民間での実務経験や国家資格を持つ人を採用し、幹部自衛官に任命するという制度。

制度そのものの知名度が低いため一般に知られていないどころか現職の自衛官ですら勤務場所によっては殆ど会うことの無い、ソシャゲのSSRキャラ以上のレアキャラです。

毎年の募集人数が海空合わせて20名前後というのもレアリティに拍車をかけているような気がしますね…。

勤務内容は基本的には研究開発や情報分析で、ハリウッド映画に出てくるCIAの情報分析担当官のような仕事をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。

勤務先は一般的にイメージする自衛官とは程遠く、エアコン完備のオフィスがメイン。

原則的に完全週休二日制で残業もない割とホワイトな勤務環境なので、民間企業での仕事に疲れて嫌気が差したら転職先として考えてみるのはいかがでしょうか?

募集対象年齢は38歳までなので、採用試験を受けるならなるべくお早めに!

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