Microsoft Flight simulator(MSFS)に導入可能なアドオンデータ(MOD)をレビューするシリーズ。
今回はデ・ハビランド・カナダが開発し、ボンバルディア・エアロスペースの改良したターボプロップ双発のコミュータ機、DHC-8 Q400の機体データをレビューしていきます。
Table of Contents
今回レビューするアドオンをダウンロードしても機体データのみでは遊ぶことが出来ません!
Microsoft Flight simulatorを購入・インストールする必要があります↓
実機の概要
今回レビューする機体データの元になっているのは、1980年代初頭にカナダのデ・ハビランド・カナダという航空機メーカーによって開発された双発・ターボプロップ・単通路の近距離向けの小型旅客機です。
リリース開始から10年程度は
- -100:37-40座席バージョン
- -200:-100のエンジン強化版
- -300:-200の胴体を延長して座席数を50-56座席に増加
の3タイプのバリエーションが展開がされていました。
その後、開発元のデ・ハビランド・カナダは1992年に同じくカナダのボンバルディア・エアロスペースに買収されますがDHC-8シリーズの生産は継続。
1996年にはボンバルディア・エアロスペースとして改良型のQシリーズがリリースされ、初期モデルの‐300と置き換わる形で世界各国の航空会社によって運航されている他、一部は公的機関や軍の装備手しても採用されています。

日本国内でもJALやANAのグループ企業で地方路線や近距離路線に使われている他、海上保安庁や国土交通省でも使用されているため比較的目撃する機会の多い機種になるのではないでしょうか?
一時期日本国内での運航中の事故が多発していたことから連日ニュースに取り上げられていたこともあるため、悪い意味で有名な機種かもしれませんね…。
機体データの入手方法
ダウンロード
今回はフライトシムのアドオンサイトとしては多分老舗の“Simviation”というサイトでダウンロードしてきました↓
上のリンクからSimviationにジャンプしたら“Main menu”をクリックしてトップページへ行きましょう!
このサイトではMSFSだけでなく、Prepar3DやX-Planeといったいろいろな種類のフライトシミュレータのアドオンを扱っているため、目当てのデータが探しづらいんですよね…。
今回のデータはトップページの左端にあるカテゴリーの中から“MSFS 2020”をクリック、さらにジャンプした先に表示されるカテゴリーの“Aircraft”をクリックしてください。
これで機体データのページにジャンプするんですが、スレッド形式になっているので時間が経つとダウンロードリンクがだんだん後の方へ行ってしまうので見つけづらいです…。
ダウンロードリンクをクリックするとポップアップが表示されるので↓

水色の“Download file”のバーをクリックすると機体データのZipファイルがダウンロードされます。
Simviationは基本的にはアカウントの作成が不要で、一部のアドオンを除いて無料で使えるんですが、アカウントを作成していないとダウンロード速度がかなり制限されてしまいます。
Express memberという有料会員になれば速度制限も無くサクサクダウンロードできるようですが、私のネット環境ではExpress memberになってもダウンロード速度は大きく改善しないようなので、当面はアカウントを作る気は無いですね…。
インストール方法
ダウンロードが完了したらパソコン上の任意の場所に解凍し、MSFSのCommunityフォルダに解凍したデータを移動します。
Communityフォルダの場所が分からない方や、インストール方法がイマイチよくわからないという方はこちらを参考にしてみたください↓
インストール自体は馴れた人なら簡単なんですが、インストール前に一つ注意点があります。
もしデフォルト機のセスナ サイテーション CJ4のコクピット周りの表示、あるいはキングエアのサウンドを改善するアドオンを導入しているのであれば、一旦Communityフォルダから別のフォルダへ隔離しておいた方が良いかもしれません。
理由は口述しますが、アドオン同士が競合して不具合が発生する可能性があります。
アドオンの機体について
外観(エクステリア)
初期状態で色々な航空会社の機体塗装が用意されています↓

用意されているのは
- ホワイト
- エースカイ
- フライビー
- ウエストジェット
- クロアチア航空
- カンタスリンク
- ユーロウィングス
- アラスカ航空
- ANAウィングス
- スカンジナビア航空
の10種類になります。
フリーウェアなので正直機体の細部のディテールは期待していませんでしたが、意外と細かく作りこまれてますね。

ピトー管やアンテナといった比較的小さな部品も良く再現され、塗装は前回レビューしたCaptainsimの777よりは綺麗に塗り分けられています。
少し引っ掛かったのは↓

ニスでも塗ったのかってなくらいにテッカテカになっている車輪くらいなもんですかね?
アニメーションもなかなか良く出来ていて、エルロンやエレベータ、ラダーといった操縦舵面やフラップ、スポイラーもほぼ実機と同じように動いてくれます。

スポイラーは単純なエクステンド/リトラクトの2段階ではなく、スポイラーレバーの操作量に応じて無段階に可動。
フラップは4段階で展開するようになっています。
内装(インテリア)
コクピットと客席のモデリングはMSFSにデフォルトで収録されている“セスナ サイテーション CJ4”の物がそのまま流用されています。

ということで、エンジンスタートのシーケンスや

FMS(飛行管理システム)の操作方法はCJ4と全く同じです。
ただし、チェックリストはCJ4ではなくキングエアの物を流用してるので、チェックリストとコクピットのスイッチ類が一致していません。
なのでチェックリストを見ながらコールド&ダーク(エンジンが切れていて電源も入っていない状態)からのスタートアップは初見ではほぼ無理…。
流用元のCJ4で何度かスタートアップの練習をして、操作方法を覚えてからこの機体に移行しましょう。
ちなみにコクピットビューだけでなく、ドローンモードで見ることのできるインテリアの3DモデルもCJ4から流用しているようで、視点をドローンモードに切り替えて胴体中央に接近していくと↓

Q400ではなくCJ4のインテリアが表示されます。
コクピットが主翼前縁の付け根あたりに位置しているんですが、どうやらこれがコクピットビューにも反映されているらしく、コクピットからの視点は機体の外部モデリングと比較すると後ろにに約5m、上に約1mほどずれていることに…。
なので着陸進入で視界に違和感があるかもしれません。
他のアドオンとの競合
『セスナ サイテーション CJ4の計器表示やオートパイロットの挙動をよりリアルなものにする』というアドオンがいくつかリリースされていますが、こういったアドオンはQ400のコクピット表示のプログラムと競合するようです。
私の場合はエンジン計器やマップを表示するディスプレイが表示されなくなってしまいました↓

このような表示が出た場合は一旦MSFSを終了して、Communityフォルダに格納したCJ4に関連するアドオンを別のフォルダに移動させる必要があります。
また、Q400のエンジン関連のサウンドはデフォルトのキングエアのサウンドファイルをそのまま流用しているため、“Communityフォルダに格納したアドオンでサウンドを変更している”といった場合にはエンジン音が聞こえなくなる可能性があり、この場合もさきほどと同じようにキングエアのサウンド関連のアドオンを別のフォルダに移動してやる必要があります。
ただし、Communityフォルダではなくデフォルトの機体データを直接書き換え、またはデータの入れ替えをしている場合は競合が発生しない可能性もあります。
とはいえケースバイケースですので、不具合が発生したら一旦すべてをデフォルトの状態に戻してみましょう。
タキシング
それなりに大きな機体でホイルベース、トレッド幅ともに広いため、小型のプロペラ機程小回りが効かない…と思ったらこれが意外と小回りが効くんです。
片側のホイルブレーキを一杯まで踏んで反対側のエンジン出力をMAXにして、ステアリングを一杯まで切ると、ブレーキをかけている車輪を軸にしてその場で旋回することが出来ます。

ステアリングは小型機に比べると反応がダルいものの、左右のエンジンパワーを調整してブレーキを併用すればかなりクイックに舵が切れそうです。
エンジンはターボプロップのためレシプロに比べると若干レスポンスが遅く、パワーもあるのでコントロールが少し難しい所があるので地上滑走では気を付けないとスピードが出すぎてしまうかも…。
離陸
今回はフラップを1ノッチ下げてテイクオフしてみました。
離陸滑走では若干機首が左に振られるものの、それほど大きなあて舵は必要なく高速走行時の直進安定性は悪くないと感じました。
離陸するときはそれほど大きく操縦桿を操作しなくても緩やかに機種が上がって上昇していきます。

いつも通りClear skyのコンディションで飛んでいるんですけど、離陸後に若干左側に流される感覚がありますね。
機動性
ターボプロップ旅客機なので当たり前なんですけど、機動性はそれほど高くありません。
地上では持て余し気味のエンジンパワーは上空に行くとなりを潜め、フルスロットルで水平直線飛行をしてもオーバースピードにはならないようです。
しかし、実機の“最大巡航速度”となっている667㎞/hにも到達できず、水平飛行状態では計器指示で307ノット(約570km/h)がエンジン出力上の上限のようです。

水平飛行をするために操縦桿を動かして気づいたんですが、この機体はかなり安定性が高く、姿勢を変えるためにはかなり大きく操縦桿を動かす必要があります。
そして機体のレスポンスがびっくりするくらいに悪い。
機体サイズが大きく、水平安定性が高い飛行機はどうしても大きな操舵量が必要で、機体の反応も鈍くなりがちですが、このQ400は割と小さめの機体ながら入力に対するレスポンスはデフォルトのボーイング747よりも遅いのではないでしょうか?
操縦桿を動かしてもジワ~っとゆっくり動くので、なんとなくトリムホイールで操縦しているような感覚です。
このためクイックな姿勢変更は出来ませんが、姿勢を一旦確立してしまえば簡単にはブレることもないのでトリムを調整しなくても比較的簡単に水平状態を維持できるわけですが、慣れないとなかなか操縦が難しいかもしれません。
運動性能を確認するために最高速度の状態でループしてみようと思ったんですが、残念ながらエンジン出力が足りず、迎え角を10°も取るとものすごい勢いで減速し、40°まで機首を上げると失速…。

ロールはバンクリミッターがあるようで、80°程度までしかバンクを摂ることが出来ませんでした。
まぁ戦闘機やアクロバット機では無いのでそんな簡単にループやロールをしてもらっても困るんですけどねw
着陸
安定性が高いため姿勢維持はしやすいものの、操縦性が悪く微調整が出来ないのでアプローチは長めにとったほうがいいかも?
コクピットが外部モデルよりだいぶ後ろにあるため視点がずれてしまっているのでアプローチに若干違和感があります。
PAPIを参照しながらアプローチする場合は“白白赤赤”ではなく“白赤赤赤”と少し低めに進入し、接地直前のフレアはかなり浅めにしてやらないとテールストライクしてしまうようです。

この機体にはリバースピッチが搭載されているので、接地したらブレーキと併用することで着陸滑走距離を短くすることが出来ます。
ちなみに実機では地上でないと作動しないはずのリバースピッチですが、MSFSでは飛行中にも作動することが出来ます。
また、地上でリバースピッチを使えば機体をバックさせることも出来るので、タキシングの要請が出来ない飛行場で機体をエプロンから移動させることが出来て便利ですよ。
ただし、リバースピッチでバックしている時にホイールブレーキを使うと尻餅をついてしまうので気を付けましょう!
サマリー
無料で手に入れることのできるフリーウェアのアドオンながらなかなか細かい所までモデリングされた機体データです。
コクピットや機内のモデリングはデフォルトの機体からの流用ですが、無料であれば仕方がないと割り切りましょう!
安定性が高い機体なので一旦バシッと姿勢を決めてしまえば、突風でも吹かない限り操縦桿から手を放していても安定して姿勢を維持し続ける反面、操縦性はあまりよろしくないので着陸進入ちゅうの姿勢や方位の微調整はしづらいのではないでしょうか?
ローカライザーを使えばそこまで難しくないのかもしれませんが、滑走路脇のPAPIのライトを頼りに目視で進入するのは難しいかもしれませんね…。
目視進入に関しては操縦性だけでなく、コクピットからの視点の問題もあるかと思いますが、進入角度やフレアの取り方に慣れてしまえばそれほど難しくも無いのではないかと思います。
とある有名なアドオンメーカーが2022年中にQ400の高精度な有料アドオンをリリースするという計画があるそうですが、それを待ちきれないというQ400ファンの方はそれまでにつなぎに導入してみてはいかがでしょうか?
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