Microsoft Flight simulator(MSFS)に導入可能なアドオンデータ(MOD)をレビューするシリーズ。
今回はCaptainsimというデベロッパーからリリースされている“777 CAPTAIN Ⅲ(以下CS777)”というボーイング777の機体データをレビューしていきます。

Table of Contents
今回レビューしているアドオンソフトで遊ぶためにはMicrosoft Flight simulator本体のインストールが必要になります。
まだお持ちでない方はこちらでご購入ください↓
実機の概要

この機体データのモデルとなっている実機は、今更説明するまでもないほどに有名なボーイング製の双発ジェット旅客機のボーイング777-200です。
777の初飛行は1994年で、ローンチカスタマー(一番初めに大口発注した顧客)はユナイテッド航空。
当初は767の拡大版の機体を作り『767と747の間のキャパシティの機体』というのがコンセプトだったようですが、この“767の拡大版”というのがエアライン各社からの反発を招いたことから、ボーイングは開発に時からエアラインの意見を設計に反映させる“ワーキング・トゥゲザー”というプログラムを導入しています。
このプログラムには日本航空や全日空も参画しており、日本のエアラインらしいエピソードとして良く取り上げられるのは『トイレの蓋がバタンと閉まるのは乗客が不愉快に感じることが多いために蓋がゆっくり閉まる機構を提案した』というやつですね。
この他に設計を進めていくうちに機体規模が大きくなりすぎたためボーイングは主翼に折り畳み機構を持たせる予定だったそうですが、全日空が『構造と整備の複雑化と重量とコストの増大を招く』という理由でこの機能をオプションにするように提案、ボーイングもこの提案を飲みますが、結局折り畳み機構を搭載した777は殆ど発注されなかったようです。(777の次世代型“777X”では主翼が長くなったため折り畳み機構が標準になっているようです。)
日本国内のエアラインでは機体規模の関係から日本航空や全日空、日本エアシステム(現日本航空)といった大手の航空会社しか導入していませんでしたが、国際線や国内線の主要都市間を結ぶ路線に投入されていたので乗客として搭乗したことがあるという方も多いのではないでしょうか?
機体データの入手方法
ダウンロード
機体データはCaptainsimのHPから購入することが出来ます。
機体データの概要や機能の概説はこちらのHPから↓
販売価格は$29.99。
為替相場の関係もありますが、日本円にして大体3,000円くらいといったところですかね?
上のリンクからも飛べますが購入はこちらのCaptainsimのオンラインストアからになります↓
このオンラインストアは商品の表示の仕方がちょっと独特で…
- ”Select your simulator”の下にあるチェックボックスのうち、自分の使っているシミュレーターを選択する(今回は“MSFS2020”)
- MSFS2020用のアドオンデータが表示される
- 購入したいアドオンの“ADD TO CART”をクリック
- 画面右上にある“CHECKOUT”をクリック
という流れになっています。
現時点(2021年5月)ではMSFS2020用のアドオンは777-200しかリリースされていませんが、いずれ777の派生機種や777以外の機種もリリースされるかもしれません。
購入手続きが完了するとCaptainsimからメールが来ます。

購入手続きから72時間以内にこのメールに記載されているダウンロードリンクから機体データをダウンロードしてください。
機体データは.exeファイルとしてダウンロードされます。
インストール
MSFSを起動している場合はインストール前に必ず終了させておいてください!
ダウンロードされた.exeファイルを実行すると機体データのインストーラーが起動します。
インストーラーの指示に従ってクリックしていけば恐らく問題なくインストール出来るはず…。
途中で機体データのアクティベートのためにオーダーナンバーを要求されますが、これはCaptainsimからのメールに記載されているナンバーですね。
インストールが完了すると機体データがCommunityフォルダに格納されるほか、機体の塗装や仕様を変更するための“ACE”というソフトも導入されます。

通常であれば機体塗装はアドオンのダウンロードサイトから自分で好みの物を探し出し、これをダウンロードしてCommunityフォルダに格納する必要がありますが、CS777の場合は全てACE上で完結するので楽ですね!
仕様については今のところGE90エンジンを搭載したモデルしか選択できませんが、将来的にはロールスロイス製のトレントエンジンを搭載したモデルに変更できるようになるかも?
『エンジンが変わったからって何か変わるの?』と思うかもしれませんが、エンジンのレスポンスの違いまで再現しているため飛行特性が若干変わってくるんですよ。
トレントが実装されたらこの辺りの違いもレビューしてみたいと思います。
アドオンの機体について
機体外観(エクステリア)

デフォルトの機体塗装はCaptainsimハウスカラーと呼ばれるものが用意されています。
リリース当初はデフォルト機や他のアドオンと同じくアドオンのダウンロードサイトで色々なエアラインの塗装を入手できましたが何やらトラブルがあったらしく、現在はACEからのみ各種の塗装を入手することが可能です。
遠くから見ると割と綺麗に作られているように見えますが…

近づいてみると機体表面のテクスチャーが結構荒く、警告文(コーションラベル)は判読不能ですね。
デフォルト機の場合は↓

このようにコーションラベルがかなりはっきりと描かれているのでCS777の開発スタッフにはもう少し頑張ってほしかったんですが、これはアドオンの塗装データで何とでもなるのであまり気にする必要は無いかな?
でも個人的にはハウスカラー好きですよ!
ハウスカラーは垢や油汚れが付けられているんですが、これがただ薄汚く汚れているだけでなく、実機と同じ場所が同じように汚れているので使用感にリアリティがあるんですよ。
フライトシムの飛行機は基本的には新造機の外観を再現しているためピカピカの外装なんですが、実際のところ1回でも飛ばすと色々な汚れが付着しますからね。
こういった方向でのリアリティの表現は珍しいんじゃないでしょうか?
3Dモデルも同じですね。
外部視点モードで遠目に見る分には問題ないどころか、かなり細かいパーツまで再現されているんですが、ドローンモードで機体の側に近づいて行くと結構粗が目立ちます。
例えばノーズギア周りに行くと…

全体的には良く出来ているものの、デフォルト機と比較した場合↓

細かい部品までは作りこまれていないため、どうしても荒っぽい造りに見えてしまう…。
別にCS777がいい加減に作られているといった話ではなく、これでも充分すぎるほど正確に作られているんですけどね。
逆にデフォルト機が細かい所にこだわりすぎているともいえるのではないでしょうか?
この他にも機体の外装をあちこち見て回りましたが↓

どうやら3DモデルはPrepar3D用にリリースされている777のデータをそのままMSFS用に変換したもののようですね。
FSX/Prepar3Dの機体データをMSFS用にコンバートするソフトというものがあるんですが、これを使って同じCaptainsimのボーイング767をMSFSに出現させるとCS777と全く同じ質感の機体が出現するんですよ。
ということは、CS777はMSFS専用に新たにデザインされたモデルではなく、言い方が悪いですがPrepar3D用のモデルの焼き直しということになるのかな?
機内(インテリア)
フライトデッキ(コクピット)

フライトデッキの3Dモデルも恐らくPrepar3D向けの777をほぼそのまま流用したものでしょうね。
以前Prepar3DでCaptainsimの777を飛ばしていたことがあるので既視感があります。
こちらの3Dモデルも良く作りこまれているんですが、機能面ではかなり残念なんですよ…。

Prepar3D向けのデータはスイッチ類の9割近くが実際に操作可能で、スイッチ操作に対応して機体の各種機能が動作したり、警告メッセージが表示されたりするロジックが組み込まれていました。
ところがMSFS向けの場合はスイッチ類の2割程度しか操作できず、スイッチ操作と機体の機能はイマイチ連動していない感じ?

計器表示はデフォルト機の747の物をごく一部(エンジン回転数の表示を4発→2発の表示へ)変更したのみで、EICASの表示モードを変更して燃料システムの作動状況を確認すると手つかずとなっていたと思しき表示が出てくる始末…。
そのうえ計器パネルの中央部左側にある姿勢指示器の下の2つの計器は、調整ノブらしきものがついていますが何やら蓋がされているようで…。
確かここはスタンバイの速度計と昇降計が配置されていたはずなんですけどね?

そして飛行制御を司るフライトマネジメントシステム(FMS)に各種の情報を入手するためのCDUの機能も基本的にはデフォルトの747のもの。
このためごくごく簡単な機能しか使えませんが、この辺りは機能を強化するアドオンが出ているので、これを導入すれば『多少は』マシになります。
今回はデフォルトの747のフライトマネジメントシステムの機能を改善するための“salty-747”というアドオンと
salty-747の機能をCS777で使うためのアドオン“CS 777-200ER Salty Compatibility Mod”
を導入しているため多少はCDUの操作が出来ますが、ノーマルのCS777ではここまでの操作はできません。
まぁオートパイロットのルート設定はMSFSのワールドマップ上で出来るので、仮にCDUが操作できなくても特に問題は無いような気もしますが…。
という訳で、3Dモデルとしては割と良く出来ているものの、機能面ではCaptensimらしくないかなり中途半端なものになっています。
Captainsimとしては今後も改善を続けてよりリアルなものにしていく予定らしいですが、去年リリースされたPrepar3D用の767が同様のアナウンスから1年近く放置されているので、もしかしたらCS777もこのまま放置される可能性が…。
ユーザー有志の開発した無料の777向けのアドオンのダウンロードとインストールについてはこちらでもう少し詳しく解説してますので、気になる方は参考にしてみてください↓
キャビン
現時点(2021年5月)でリリースされているMSFS用の旅客機の機体データでは唯一、客室(キャビン)が再現されています。

キャビンの構成は
- ファーストクラス
- ビジネスクラス
- エコノミークラス
3クラス構成で、コクピット視点からカメラを移動することでキャビン内を自由に歩き回ることが出来ます。
面白いのはギャレーや

トイレまで作りこまれているところ

ですが、この辺はPrepar3D版ですでに実装されていたものなので、個人的には目新しさは無いんですけどね…。
Prepar3D版では荷物入れのドアや窓のブラインドをクリック操作で開け閉め出来たんですが、MSFS版ではこの機能はオミットされていました。
まぁ機内を歩き回ることは無いですし、シミュレーション上で手荷物を格納する必要も無いので要らない機能ではありますが…。
そういえばMSFSにはAIパイロットという機能があって、たしか事前に飛行ルートを設定しておくとAIが操縦を変わってくれるんですよね。
この機能を使ってAIに操縦を任せてこんな感じに視点を客室に移動すれば

飛行機に乗って旅行している気分が味わえるかも?
VRゴーグルがあるとさらに楽しそうですよ↓
フライト
今回は機体のモデリングのレビューがメインなためフライトについては言及しませんが、しいて言うなら『ごくごく普通の大型旅客機の操縦感覚』といったところでしょうかね?
本物のエアラインパイロットのようにフライトマネジメントコンピューターを使ってオートパイロットで操縦すると、元々の機能が貧弱なため飛行中に色々とエラーが出ますが、マニュアルであれば特に何の問題も無く飛ばせます。
セスナやキングエアのような小型機に比べれば操縦は難しいですけど、エアバスのA320 やボーイング787よりは操縦しやすいような気がしますね。
特に着陸がしやすいような気がしますけど、同じデベロッパーの開発した767に慣れているからでしょうか?
サマリー
リリース直後にアップされていたYoutubeのレビュー動画やSNSの反応を見ると
『モデリングは全体的に見れば良く出来ているが、グラフィックはイマイチで機能に関してははっきり言って酷い』
といった感じで酷評されていますが…。
まぁ皆さんのおっしゃる通りです…。
ただ、Captainsimもそんな評価を受けることを想定していたんでしょうね。
Prepar3D版のCS777は$100以上しますが、MSFS版はその1/3の$30とかなりお安くなっています。
機能面では色々と残念ですが、正直なところこちらは公式が動かなくてもユーザー有志が改善ソフトを出してくれるので、個人的にはそれなりのビジュアルの機体データさえリリースしてくれればそれでいいという感じですかね?
そう考えると多少微妙なビジュアルであっても、現時点で唯一となるキャビンの再現がされていて、ベースとなる3Dモデルがそれなりに作りこまれているという点では$30という価格は妥当なんじゃないかと。
まぁとらえ方は人それぞれなので『こんなゴミに$30も払えるか!』って人もいるかもしれませんが…。
まぁオンラインゲームの開発資金調達のためのアーリーアクセスみたいなもんなんでしょうね。
一応これからもアップデートを続けていく予定とのことですので、長い目で見ていきましょう。
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