自衛隊への入隊方法 防衛大学校学生

自衛隊のキャリアパス

今回のアイキャッチ画像はWikipediaより引用した、防衛大学校学生の行進する風景。

小銃を持つ学生やサーベルを佩く学生がいる辺り、恐らく開校記念祭の一コマでしょうね。

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防衛大学校とは?

防衛大学校は諸外国の士官候補生学校に相当する学校で、4年間の教育により将来の自衛隊を背負って立つ人材を育成する教育機関。

防衛省に所属する組織ではありますが、学校教育法上の大学の学部に相当する『本科』を卒業すると学士号が、大学院相当の『理工学研究科』と『総合安全保障研究科』を卒業すると修士号が授与されます。

一般的には防衛大学校というと本科を指すことが多いですね。

防衛大学校に入学するには?

上記の通り防衛大学校には“本科”と“研究科”がありますが、防衛大学校への入学というと“本科への入学”を指します。

防衛大学校本科に入学するためには防衛大学校採用試験を受験し、これに合格する必要があります。

ちなみに“理工学研究科”と“総合安全保障研究科”は幹部自衛官または防衛省職員を対象とした課程なため一般からの学生を受け入れていませんが、稀に重工系の企業やシンクタンクの研究員が企業からの推薦(ほとんどが防衛省との共同研究のため)で入校する人がいたりします。

防衛大学校の採用試験

普通の大学であれば入学に際して受ける試験を“入学試験”と呼びますが、防衛大の場合は入学時点で防衛省職員として採用されることから、入学試験ではなく“採用試験”と呼ばれます。

採用試験は大きく一般と推薦、総合選抜の3つの枠に分かれ、さらに『理工学』と『人文・社会科学』の専攻に分かれるため、合計で6パターンの採用枠があるということになります。

募集受付期間

募集受付期間は採用枠ごとに異なっています

例年であれば

  • 一般:7月~10月下旬
  • 推薦:9月上旬
  • 総合選抜:9月上旬

となっています。

推薦と総合選抜の受付期間はいずれも1週間程度とかなり短い期間なので応募する方は気を付けましょう!

応募資格

防衛大学校の応募資格は

  • 一般及び総合選抜:高卒(見込含)で21歳未満
  • 推薦:高卒(見込含)21歳未満かつ高等学校長の推薦が必要

となっています。

採用試験

試験科目は試験の枠ごとに違い

  • 一般
    1次:学力試験
    2次:口述試験及び身体検査
  • 推薦
    学力試験、口述試験及び身体検査
  • 総合選抜
    1次:学力試験
    2次:適応能力試験、問題解決能力試験、基礎体力試験、口述試験及び身体検査

となっています。

採用試験の内容

一般試験
1次試験

一般受験者の学科試験はマークシート方式の試験です。

試験は例年2日間の連続した日程で行われるようです。

学科試験の内容は

  • 人文・社会科学専攻
  1. 英語:コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ
  2. 数学・社会:数学Ⅰ・Ⅱ、数学A・B、日本史B、世界史Bから1科目選択
  3. 国語:国語総合、現代文A・B、古典A・B
  • 理工学専攻
  1. 英語:コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ
  2. 数学:数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、数学A・B
  3. 理科:物理基礎・物理、化学基礎・化学1科目を選択

となっており、これに加えて各専攻共通の試験として小論文試験があります。

2次試験

1次試験に合格すると2次試験の受験日程が通知されます。

2次試験では口述試験(個別面接)と身体検査が行われます。

推薦試験

推薦受験者の学科試験は

  • 人文・社会科学専攻
  1. 英語:コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ
  2. 小論文試験
  • 理工学専攻
  1. 英語:コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ
  2. 数学・理科:数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、数学A・B、物理基礎・物理、化学基礎・化学

回答方式は人文・社会科学専攻の小論文と、理工学専攻の数学・理科の一部を除きマークシート方式です。

推薦受験者は学科試験の当日、または翌日に

  • 口述試験(集団討論及び個別面接)
  • 身体検査

が行われます。

総合選抜
1次試験

総合選抜受験者の1次試験は推薦受験者と同じ内容になっています。

受験も推薦試験と同日に行われるようです。

2次試験

二次試験は2かにかけて行われるようです。

試験内容は

  • 適応力試験:課題などを与えられ、集団生活に対する適応性を評価される
  • 問題解決能力試験:課題を与えられ、それに対するチーム内における問題処理・解決能力を評価される
  • 基礎体力試験:立ち幅跳びやハンドボール投げなどで基礎的な体力を評価
  • 口述試験:個別面接
  • 身体検査

で、この試験に関しては防衛大学校に泊まり込みで行われます。

恐らく集合時点から試験終了までの受験者の言動や振る舞いが逐一チェックされるんでしょうね…。

なかなか気の抜けない試験になるのではないかと思います。

試験対策

各試験の過去問集が市販されているので、これを参考に勉強するのがいいでしょうね↓

これ以外にも大学入試の過去問の定番“赤本”もあります↓

防衛大学校と言っても試験の内容は一般の大学入試とほとんど変わらないので、大学入試対策の塾やアプリで勉強するのもいいでしょうね↓

あまり応用力や発想力を問うようなトリッキーな問題が出題されることは無く、各科目の基礎力を問う問題が多いようなので、地道に基礎的な部分を復習しながら準備していけばかなりの高得点が期待できるのではないかと思います。

身体検査

身体検査の合格基準はそれほど高くはありません。

明確に数値が設定されているのは身長(男子150㎝以上、女子140㎝以上)と視力(裸眼視力0.6以上、矯正視力0.8以上)くらいなものです。

『身長が足りないけど大丈夫だろうか?』と心配に覆う人もいるかと思いますが、2~3㎝くらいであれば“入隊後に伸びるかもしれない”という理由で目をつぶってくれることがあります。

防衛大学校の受験倍率

学科試験の倍率は専攻学科によってかなり開きがあります。

例えば理工学系の推薦枠の倍率は2倍程度なのに対し、人文社会学系は5倍となっているようですが、これはそもそもの募集人員が違うため。

理工学系専攻が人文社会学系専攻より募集人数が約4倍多いからなんだとか…。

ちなみに航空宇宙工学や機械工学などの理工学系の学部を出ていないとパイロットコースに進みづらいようですので、パイロット志望の方は専攻学科を間違えないようにしましょう!

そういえば防衛大学校の採用試験に限らず、防衛省・自衛隊の採用試験はすべて無料なので、少年工科学校や航空学生、防衛医科大学校あたりは『タダで受けられる模試』という扱いを受けることもあるんですよ…。

このため1次試験の合格通知が来ても2次試験へ進むことを辞退するという人が結構多いようで、好景気の頃は受験者の全員に合格通知を出しても募集定員のギリギリまでしか2次試験に進む人がいないなんてことも稀にあったんだとか…。

防衛省側もこれを見越して募集定員に対してかなり多めに合格者を出しているはずなので、実質的な倍率はもう少し低くなるかもしれません。

入学

入学時期と入学先

採用試験に合格すると神奈川県横須賀市にある防衛大学校に入学します。

入学は毎年3月の下旬から4月の上旬辺りになります。

防衛大学校での生活

防衛大学校は全寮制なので、たとえ横須賀に自宅や実家があったとしても通学は認められていません!

防衛大学校卒業後の自衛隊での生活に準じたスケジュールで日々の教育や訓練を受けます。

学生生活の詳しい話は防衛大学校のHPや各種メディアの紹介記事を見ていただければわかると思いますが、最近は防衛大学校を舞台にした漫画やドラマなんかもあるので↓

この辺のメディア作品を見ていただければ学生生活がどんなものかイメージしやすいかな?

チラッと見た感じ無理やりなくらい美化されてるような感じですが…。

防衛大学校での教育・訓練

意外に思うかもしれませんが防衛大学校での教育は、ほとんどが一般的な大学と同じカリキュラムとなっています。

一応防衛省の学校なので軍事教練的な訓練や、戦術・戦史といった教育も施されるようですが、あくまで基礎的な部分にとどめられているようです。

これは防衛大学校初代学長の『すぐに必要になる知識はすぐに役に立たなくなる』という哲学から。

このため、防衛大学校卒業後に進む陸海空自衛隊の幹部候補生学校で教育する部分に関しては一切教育することなく、その根元の基礎的な部分の教育のみを行うそうです。

とはいえ自衛隊の現状を肌で感じるため、毎年自衛隊の各部隊に1カ月前後泊まり込みで研修に行くこともありますし、演習場での戦闘訓練やるので、軍事教育が全くないという訳でもありませんし、学生生活を通じてリーダーシップを養うため、卒業時点で初級の下士官レベルの知識や技能は身についているようです。

防衛大学校卒業後の進路

陸海空自衛隊の幹部自衛官へ

だいたい2年生くらいの頃から陸海空の各自衛隊別の要員に振り分けられ、それぞれの自衛隊で必要な知識を身に付けるための専門教育を受けます。

卒業した時点で陸海空各自衛隊に入隊し、入隊と同時に『幹部候補生たる陸・海・空曹長』に任命されて自衛隊の幹部候補生学校へ入校します。

  • 陸上自衛隊:約9ヶ月の幹部候補生学校での教育訓練と約3ヶ月の普通科隊付教育ののち3等陸尉。
  • 海上自衛隊:約1年間の幹部候補生学校での教育訓練を経て3等海尉に任命。(国内巡航をと遠洋練習航海へ)
  • 航空自衛隊:約半年の幹部候補生学校での教育訓練を受けたのち、約半年の部隊勤務等を経て3等空尉。

防衛大学校卒業後約1年ほどは幹部候補生として幹部候補生学校や第一線の部隊などで教育を受け、その後正式に幹部自衛官である3等陸・海・空尉に任命されます。

『諸外国の士官学校に相当する学校なのに、なぜ防衛大学校を卒業した後1年もかけて幹部候補生学校や部隊で追加の教育をする必要があるのか?』という疑問を持つ人も多いかと思いますが、これは前述の通り防衛大学校初代学長の“すぐに使える知識はすぐに役立たなくなる”という考え方から。

それに各自衛隊別の専門的戦略や戦術といったものや、部隊の管理や運用といった実務的な部分は防衛大学校ではなく各幹部候補生学校で教育を受けたほうが効率が良いですからね。

防衛大学校出身者の職務

任官すれば心身の故障や致命的な不祥事でも起こさない限り幹部自衛官となり、本人の希望や適性、部隊側のニーズに応じて職種(自衛隊の中での専門職)を指定されることになります。

2尉辺りまでは小隊長クラスのポジションで、20~30人くらいの部下を率いて現場に出ること多いですが、それ以上の階級になると一般企業でいう所の管理職となるため、基本的にはデスクワークが中心となります。

『現場で汚れ仕事がしたい!』という人は防衛大学校ではなく、陸海空自衛隊の自衛官候補生や一般曹候補生から入隊しましょう!

取得可能な資格

幹部自衛官は基本的には部隊の監督指揮、運営が主任務となるため、現場での実務にはあまり携わることがありません。

このため、曹士のように色々と資格を必要とすることも無いので公費での資格取得というのはなかなか難しい…。

もちろん“監督業務をするにあたって必要となる資格”があればそれは公費で取得可能なんですが、その手の資格を管轄している法律には大体

自衛隊の業務においては適用除外とする

とか

所管する省庁の大臣と防衛大臣の協議のうえで防衛大臣が指定した教育を受けたものに関しては当該の資格を取得しているものとみなす

みたいなことが書かれているため、基本的には自衛隊内の教育を受けて部内資格を取得するだけ。

部内資格を国家資格に書き換えることはできないため、別に自腹で試験を受けないといけないわけですが、これがまた難しい。

部内資格を取得するにしても試験は受けるんですが、自衛隊内での限定した用途のため一般向けの試験と比べると範囲が極端に狭かったり、各種の基準値が違っていたりするんですよね…。

そして再度勉強して何らかの国家資格を取っても現場の曹士たちと違って実務経験が積めないため、国家資格を取ってもあまりつぶしが効かない。

定年前のオジサン連中を見てるとみんな開いている時間に必死になって何かの資格を取得するための勉強をしてますが、その資格も介護士やヘルパーなど、自衛隊と全く関係のない資格が多いようです。

防衛大学校出身者のキャリア

防衛大学校出身者の昇任

大体1尉くらいまでは勤務成績に関係なくエスカレーター式に自動で昇任するようですが、その後は本人の努力次第。

2佐以上に昇任するためには幹部普通課程(航空)や幹部上級課程(陸上)といった教育課程を履修しなければならず、履修のためにはこれらの上級課程に進むための選抜試験を受ける必要があるんですが、これも防大卒だからといって優遇されるかというと?

選抜試験では現場からたたき上げの若手の部内幹部や、一般大から幹部候補生になった人たちと競合するので、防大出というだけでは幹部学校は行けないようですね…。

ちなみに幹部学校に行かないという選択も出来るようですが、その場合は1尉以降の昇任が極端に遅くなるものの、2佐までの昇任は保障されてるなんて話を聞いたことがあります。

もしかしたら『営門2佐』と呼ばれる定年退職時の特別昇任で、実質的には3佐で定年を迎えることになるんでしょうけど…。

幹部普通課程や上級課程の履修後も、部隊勤務の傍ら幹部学校や防衛研究所で開講されるさらに上級の教育課程を履修したり、他の省庁へ出向したり、他国の軍大学へ留学したりとかなり忙しいみたいですが、防大出身者に限らず幹部自衛官は2~3年に異動するため、別に防大出でなくてもこんな感じで『椅子を温める暇もなく』あちこち飛び回るもんです。

ちなみに昇任するときの序列、つまり『同じ階級の隊員の中での昇任の優先順位』ですが、1尉までは防大の成績順、その後は幹部学校の各課程の期別や、その過程での成績順となるようです。

つまり定年までずっと防大の成績を引きずることは無いようですが、まぁ防大トップ卒業の人はどの課程でも普通にトップになるんでしょうね…。

定年時のポスト

こうして全国各地の部隊や機関、各種教育課程を経て、常にトップの成績を維持していけば最終的には自衛隊制服組のトップである幕僚長に!

なれるとも限らず…。

仮に幕僚長の任期が1年以内であれば、各期から少なくとも3人は陸・海・空幕僚長が輩出される計算になるんですが、幕僚長の任期がおおむね3~4年なので、防大に入校した年によっては何をどう頑張っても幕僚長になることが不可能なんです。

たまに不祥事が発生して関係者が引責辞任したり閑職へ飛ばされるなどして粛清されると大番狂わせが起こり、本来なら幕僚長が出ないはずだった期別から幕僚長が出たりすることも無い話ではありませんが、これは狙ってできるような番狂わせではありません。

まぁ中にはライバルを失脚させるために不祥事探しに暗躍してる人もいたりするようですけどね…。

しかし、最近は一般幹部候補生から自衛隊に入隊した隊員が幕僚長となっているため、防大に行ったからといって幕僚長になれるという保証はほぼなくなってくるのかもしれません。

というわけで、殆どの人達が将や将補、師団長や護衛隊司令、航空団司令といったポストで定年退官を迎えます。

が、幹部に任官して割と早い段階で自分の進路が見えてしまう上“どんなに頑張ってもトップに上り詰めることが出来ない”とういことから自衛隊での出世に早々と見切りをつけ、30代あたりで一般企業に転身する人もそれなりにいます。

任官拒否

防衛大学校卒業時に自衛隊に進むのを拒否することを“任官拒否”と言い、毎年20~30人くらいは任官拒否をする人がいるようです。

任官拒否した場合卒業式には出席できず、本科卒業式の前日に別途任官拒否者を対象とした卒業証書授与式が行われ、これが終わり次第任官拒否者は私服で裏門から帰されるとか。

防衛医科大学校の場合は任官拒否すると学費を全額返還しないといけないそうですが、防衛大学校のほうは今のところ学費の返還はしなくてもいいみたいですね。

ここ最近は防衛予算の削減と人件費抑制のための施策が色々と施されているため、近いうちに防衛大学校の方も任官拒否した場合は学費の返還義務が発生するかもしれません。

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