自衛隊への入隊方法 一般幹部候補生

自衛隊のキャリアパス
Japan Air Self-Defense Force service members stand in formation in front of an MV-22B Osprey tiltrotor aircraft Oct. 30 at Marine Corps Air Station Futenma. Following the flight simulator, the JASDF service members travelled to the flight line where there was an Osprey set up for display. The JASDF service members are students at the JASDF Air Officer Candidate School. The Osprey is assigned to Marine Medium Tiltrotor Squadron 265, Marine Aircraft Group 36, 1st Marine Aircraft Wing, III Marine Expeditionary Force. (U.S. Marine Corps photo by Pfc. Cedric R. Haller II/Released)

アイキャッチは在日アメリカ海兵隊撮影の物で、航空自衛隊の幹部候補生たちが普天間基地を研修に訪れた際に撮影されたもの。

陸海空の幹部候補生は教育段階から『未来の自衛隊を背負って立つリーダー』として期待されているため、教育期間中に在日米軍の基地や友好国の部隊との相互研修が組み込まれていたりするようです。

もちろん自衛官候補生や一般曹候補学生も未来の自衛隊を背負う人材ではあるんですが、流石に教育期間中の部隊研修で外国軍との交流はありません。

それだけ期待されているものが違うという事でしょうね。

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自衛隊幹部候補生とは?

幹部候補生は一般の人達を採用して陸・海・空自衛隊の幹部自衛官へと養成する制度。

航空学生や防衛大学校も同じように幹部自衛官を養成する制度ですが、こちらは大学または大学院(修士課程)を卒業した人たちが対象となっています。

幹部候補生からパイロットを目指すことも可能なため、パイロットを目指す人達で航空学生、防衛大学校へ進むことが出来なかった人が最後に狙う教育課程だったりもしますね。

また、自衛隊に勤務する歯科医師(歯科医官)と薬剤師(薬剤官)の採用も幹部候補生として自衛隊に入隊します。

自衛隊幹部候補生になるには?

幹部候補生として自衛隊に入隊するためには採用試験を受験し、これに合格する必要があります。

自衛隊幹部候補生の募集区分

幹部候補生は募集区分が結構複雑…。

まずは陸・海・空の各自衛隊。

『陸海空の戦力が統合運用される時代だっていうのに分ける必要あるの?』と思うかもしれませんが、最上級の司令部ならともかく、幹部候補生学校を出たばかりで配属されるのは各自衛隊の最前線の部隊ですから、統合運用以前に、まずは各自衛隊ごとの戦略や戦術、思考などを身に付ける必要があるので、幹部候補生学校は陸海空で分けておく必要があります。

次に一般・歯科・薬剤の3つの区分。

一般というのは部隊指揮を執る、一般の人達がイメージするであろう幹部自衛官を養成するコースで、この区分の中にはパイロット候補生(飛行要員)が含まれます。

歯科は自衛隊の医務室や病院で勤務する歯科医師(歯科医官)を、薬剤は同じく自衛隊内の医務室や病院で勤務する薬剤師(薬剤官)を養成するコースです。

志願者は“陸・海・空自衛隊”と“一般・飛行要員・歯科・薬剤官”の組み合わせ、合計12の募集区分の中から希望する区分を選ぶことになります。

自衛隊幹部候補生の募集受付期間

幹部候補生の募集受付期間は例年2回設定されているようです。

  • 1回目:3月~4月下旬(全ての募集枠が対象)
  • 2回目:3月~6月中旬(一般幹部候補生のみ)

ちなみに『合格率を上げるために1回目と2回目で同じ自衛隊を志願しよう!』ってなことはできませんが、“1回目で陸上、2回目で海上”といった形で併願することは可能です。

なので『第一志望は海上の飛行要員、第2志望は陸上自衛隊の一般』といった感じで願書を提出することも可能です。

自衛隊幹部候補生の受験資格

自衛隊幹部候補生は募集枠や学歴によって受験資格が異なります。

共通しているのは“日本国籍を有する男女”であること。

それ以外の募集枠ごとの受験資格は以下の通りです

一般

一般は最終学歴の応じて受験区分が2つに分けられています。

  • 大卒程度試験受験者:22歳以上26歳未満
    (20歳以上22歳未満の者は大卒(見込含)、修士課程修了者等(見込含)は28歳未満)
  • 院卒受験者:修士課程修了者等(見込含)で、20歳以上28歳未満の者

“大卒程度”となっているのは、海外の大学を飛び級で卒業した人を対象にしているようですね。

この他にもすでに自衛隊に入隊している人で、大学を卒業していないという人が“大卒程度”の区分で受験することが出来るようです。

歯科

専門の大学を卒業した(見込含)20歳以上30歳未満の者

薬剤

専門の大学を卒業した(見込含)20歳以上28歳未満の者

自衛隊幹部候補生の採用試験

幹部候補生では募集枠に関係なく

  • 1次:筆記試験
  • 2次:小論文試験、口述試験、身体検査

の採用試験があり、一般の飛行要員受験者についてはこれらの試験の他に

  • 1次:筆記式飛行適正検査
  • 3次:航空身体検査(海上自衛隊)、操縦適性検査・医学適性検査(航空自衛隊)

といった検査が行われます。

試験も募集と同じく2回に分かれいて

  • 1次試験
    1回目:6月下旬
    2回目:8月上旬
  • 2次試験
    1回目:7月下旬
    2回目:9月上旬

に行われるようですが、飛行要員が受験可能なのは1回目のみです。

 

筆記試験

筆記試験は共通問題の他、大卒程度者と院卒者で違う問題が用意されているようです。

共通問題

共通問題はいずれもマークシート方式となっています。

  • 第Ⅰ分野(人文科学、社会科学、自然科学及び英語)
  • 第Ⅱ分野(文章理解、数的推理、判断推理及び資料解釈)
  • 人文科学、社会科学、理・工学のうちから1科目選択
大卒程度者試験

記述式の試験で心理、教育、英語、行政、法律、経済、国際関係、社会、数学、物理、化学、情報工学、電気、電子、機械(造船を含む。)、土木、建築、航空工学、海洋・航海のうちから1科目選択します。

院卒者試験

記述式の試験で

  • 理・工学:数学、物理、化学、情報工学、電気、電子、機械(造船を含む。)、土木、建築、航空工学及び海洋・航海のうちから1科目選択
  • 法学:行政、法律、国際関係のうちから1科目選択

試験対策用に各種参考書が販売されていたり↓

自衛隊地方協力本部の募集案内のHP内でも過去の試験問題が公開されていたりしますので↓

こういったものを参考に試験対策をしてもいいかと思いますが、試験内容が一般的な公務員試験とほぼ同程度で、自衛隊の専門的な知識を問うものでもないので、公務員試験対策に特化したスクールに通うのも良いかもしれません。

ここ数年の幹部候補生の合格率は陸海空全体で6%程度とかなりの難関となっているようなので、確実な合格を目指すならスクールに通うのが間違いないでしょうね。

筆記式飛行適正検査

海上と航空飛行要員として受験する人は1次試験の後に“筆記式操縦適性検査”という試験を受けるようです。

これは航空学生の記事で紹介していますので、詳しく知りたい方ははこちらを参考にしてみてください↓

小論文試験

国際情勢や国内政治、最新のテクノロジーに関するお題が出され、それに就いて60分以内に800字程度の小論文を記述します。

令和2年度の小論文試験を見ると

  • 「日本の領土問題」についてその概要を記し、あなたの思う所を述べなさい
  • 我が国の人口動向の推移についてその概要を記し、あなたの思う所を述べなさい
  • 「保護貿易主義」についてその概要を記し、あなたの思う所を述べなさい

といった感じで、『○○についての概要とそれについての見解』を書くというのがある程度決まったスタイルのようです。

意外と広範囲なので受験するまで何について書かされるのか予想がつかないので対策が取り辛そうですが、普段から色々なニュースを目にして、それについての短いサマリーを見解を書けるようにしておけばいいでしょうね。

ちなみに小論文はこの後の口述試験で使われることが多いので、自分が書いた事をちゃんと覚えておき、“なぜそのような見解に至ったのか”を説明できるようにしておきましょう!

口述試験

口述試験となっていますが、実態としては個別の面接試験です。

面接の内容は幹部候補生への志願理由だったり、採用後のビジョンだったり、一般的な企業の採用面接に近いですが、これに加えて小論文の内容についての質問が来ます。

緊張するのであれこれ聞かれてしどろもどろになるかと思いますが、落ち着いてゆっくりと、丁寧にうけこたえられるようにしましょう。

身体検査

身体検査は飛行要員とそれ以外で合格基準が異なります。

飛行要員については上にリンクを貼りつけている航空学生の記事を参考にしてください。

それ以外の区分に関しては自衛隊の他の採用区分と同じですのでこちらを参照してください↓

3次試験

3次試験は海上自衛隊と航空自衛隊の飛行要員みが受験します。

試験内容は航空学生と同じなので詳細は航空学生の記事を参照してください。

ちなみに3次試験が不合格となった場合ですが、残念ながらここで自衛隊でのパイロットの道は閉ざされるものの、2次試験までは他の区分の人達と同じように合格しているので、問題なく一般幹部候補生として入隊することが出来ます。

入隊

採用試験の合格者は毎年3月下旬か4月上旬に自衛隊に入隊します。

合格発表から入隊まで半年前後の期間があるので、入隊するまでの間に事故や病気などで体を壊さないように気を付けましょう!

病状によっては合格取り消しとなることもあります。

自衛隊幹部候補生の入隊先

入隊先は各自衛隊の幹部候補生学校になります。

陸上自衛隊:前川原駐屯地(福岡県久留米市)

海上自衛隊:江田島基地(広島県江田島市)

航空自衛隊:奈良基地(奈良県奈良市)

自衛隊幹部候補生の教育・訓練

幹部候補生として各自衛隊の幹部候補生学校に入隊すると、“幹部候補生たる陸・海・空曹長”の階級が与えられるのはすべての採用区分で共通なんですが、教育期間、教育内容が採用区分によって違います。

陸上自衛隊幹部候補生学校

  • 一般及び薬剤幹部候補生課程:約9カ月
  • 歯科幹部候補生課程:約2カ月

海上自衛隊幹部候補生学校

  • 一般及び薬剤幹部候補生課程:約1年
  • 歯科幹部候補生課程:約2カ月

航空自衛隊幹部候補生学校

  • 一般幹部候補生課程:約10カ月
  • 歯科幹部候補生課程:約2カ月

歯科幹部候補生の教育期間がどの自衛隊でも共通してかなり短いように感じますが、自衛隊では基本的に医官と歯科医官が部隊の実質的な指揮を執ることがほぼ無いため、指揮官として必要な知識や技能を身につける必要がないんですよ。

さらに言えば射撃の技能も一般の隊員ほど重要ではないといった理由からだいぶ簡略化されて教育期間が短くなっているようです。

医療従事者、特に医官が戦闘に従事して何らかの殺傷行為を行うことは国際条約的にも医師の倫理的にもアウトですからね。

歯科医官以外の幹部候補生は、9カ月から1年の教育期間の間に教練や服務といった自衛官としての共通認識となるような知識の他、戦史や戦術、指揮などといった部隊指揮官となるために必要な軍事学の基礎知識を養い、卒業後は

  • 大卒程度試験合格者:3等陸・海・空尉
  • 院卒者試験合格者:2等陸・海・空尉
  • 歯科医官・薬剤官:2等陸・海・空尉

にそれぞれ任命されます。

自衛隊幹部候補生のキャリア

幹部候補生学校を卒業すると海上自衛隊はそのまま半年程度の練習航海へ出発。

陸上自衛隊と航空自衛隊は幹部候補生学校卒業直後、海上自衛隊は練習航海からの帰港後に任命された職種についての専門教育を受けるために職種別の学校に入校し、初級幹部として職種ごとに必要となる専門的な知識と技能を身に着け、職種によって教育期間が異なりますが最短で3ヵ月、長くて1年程度の教育を受けると、いよいよ全国各地の部隊へ赴任します。

2尉または3尉で部隊に赴任すると立場的には20~30人を束ねる小隊長となるわけですが、いくら知識があるといっても昨日まで学生だった人間がいきなり部下を率いて仕事をするなんてことは無理な話…。

赴任後しばらくの期間は見習いとして若手の士長や3曹と一緒に現場仕事をしたり、自分の親ほどの年齢の古手の1曹・曹長に指導を受けたりしながら徐々に実務の流れをつかんでいきます。

部隊の実情によって変わってきますが、2ヵ月から半年ほどの見習い期間が終わるといよいよ小隊長に任命されて小部隊の指揮や管理の実務に就き、小隊長の仕事も板についてきた2~3年目になると人事異動で別のポストに配置されてそこからさらに経験を重ね、中隊長や大隊長といった部隊指揮官のポストを歴任していくことになります。

ちなみに幹部の昇任は曹士隊員のように昇任試験がなく、幹部候補生学校での成績や部隊の勤務実績によって順次昇任していくことになっているようで、幹部候補生で入隊した人なら余程のことが無ければ定年までには2佐までは昇任することが可能なようです。

一方、2佐以上の階級になるためには、2尉から3佐の頃に諸外国の軍事大学やそれに相当する陸・海・空自衛隊の幹部学校で行われている指揮幕僚課程を履修する必要があり、この課程を受講するためには実務能力や指揮官としての判断力を問われる選抜試験に合格する必要があるので、これが実質的な昇任試験になっているようです。

諸外国の軍事大学や自衛隊幹部学校を卒業すると実戦部隊に戻りますが、しばらくの部隊勤務の後には司令部幕僚となるための資質を養うため再び幹部学校へ入校したり、各種の研究のために防衛大学校の大学院に当たる“研究科”に在籍したり、国内外の大学に公費留学したり。

それが終わるとまた部隊勤務といった感じで数年ごとに異動と入校を繰り返し、徐々に階級と役職をアップしていきますが、そういった感じで『椅子を温める暇がない程』のレベルになると最終的にどれくらいのポジションまでたどり着けるのか?

一昔前は『自衛隊制服組のトップである幕僚長のポストは防大出身者でないと到達できない』なんて言われてきましたが、つい先日この不文律が破られたようで、防大の卒業生が幕僚長のポストに就くようになって以来33年ぶりに一般幹部候補生出身の陸上幕僚長が誕生しました。

33年ぶりとはなっていますが、旧軍出身者と防大卒業生の間を埋めるという組織のシステム上仕方なく一時的に一般幹部候補生出身を幕僚長に宛てていた時期を除けば、実質的に自衛隊史上初の一般幹部候補生出身の陸上幕僚長ということになります。

実はこの10年くらいで『防大出身者しか幕僚長に就任できないのはいかがなものか?』なんて言う話が出ていて、その時点で『すぐには無理でもいずれ防大出身者以外からも能力があればあらゆるポストに就けられるシステムにしていこう』という流れが出来ていたみたいですね。

今のところは陸上幕僚長だけですが、いずれ海上と航空の幕僚長も防衛大出身ではなく一般幹部候補生になると思うので、あきらめずに努力すればトップに登りつけるのかもしれません!

まとめ

今回は幹部候補生のキャリアについて解説していきました。

一般幹部候補生は幹部自衛官を養成するためのコースですが、一部では自衛隊パイロットを目指すためのコースとしても知られていますね。

ちなみに一般幹部候補生は募集対象が大卒程度とはなっているものの、あくまで“程度”ですが大卒でなくても受験可能。

ただし、ここ数年の合格率は6%前後といった所なので、大学を出ていない人にはやはり難しいのかもしれません。

この他にも大学の歯学部や薬学部を卒業した人を対象とした“歯科幹部候補生”や“薬剤幹部候補生”といった採用区分もあります。

幹部候補生として陸・海・空自衛隊の各幹部候補生学校に入隊すると曹長の階級が与えられ、歯科幹部候補生以外は将来の自衛隊を背負って立つ幹部自衛官として期待され、戦史や戦術といった知識や、部隊指揮の方法などの技能を身に着けていきます。

幹部候補生学校を卒業とすると同時に3尉に昇任して全国の部隊に赴任し、ここから色々な経験を積んでさらに昇任していき、上級部隊の指揮官となっていくわけです。

自衛官候補生や一般曹候補生と比較すると、入隊直後から幹部としての待遇を受けることが出来、その分給与も多く貰えるというのが一番のメリットですが、人事異動が2,3年に1回のペースであるため一つの土地に腰を据えて勤務することが難しい…。

独身のうちはいいんですけど、結婚して家庭を持つようになると、異動のたびに家族を連れて引っ越すという訳にも行かず、単身赴任になる人が多いですね。

このため自宅を建てたり、子供の教育に関係することっだったり、ライフプランを立てづらいのが幹部候補生として入隊した場合のデメリットでしょうか?

ただ、部隊のトップに立って組織を実際に動かすことは曹士隊員には決して出来ない仕事。

その分責任重大ではありますが、その分やりがいのある仕事だと思います。

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