MSFSをはじめとするPC用のフライトシミュレータは、公式以外にもサードパーティーやユーザー有志の作成した様々な追加データ(アドオン)がリリースされ、ユーザーが自由に導入できるのが魅力の一つです。
今回はユーザー有志により作成され、無料で導入することのできるC-17グローブマスターⅢの機体データを入手したので、この機体のテストフライトをしつつレビューなんかをしてみたいと思います。
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実機について
C-17はアメリカ本国と世界各地の戦域、あるいは戦域の間を結ぶための大型輸送機としてアメリカ空軍によって開発要求がなされ、1980年代後半にマクダネル・ダグラス(現ボーイング)にて設計と開発を開始、1991年に原型機が初飛行、1993年にアメリカ軍への配備が開始されています。
機体のデザインは軍用のジェット旅客機としては一般的な高翼配置で、貨物の搭載をしやすくするため胴体後部に巨大なランプドアを配置、このランプドアのために水平尾翼が垂直尾翼の上部に配置されています。
滑走路どころか支援機材も整備されていない全線での運用にも考慮され、多少の荒れ地でも離着陸可能なように足回りが強化されている他、トーイングカー無しでもバックできるように強力な逆推力装置を備えているのも特徴ですね。

2015年に生産ラインが閉鎖されるまでに計279機が製造され、現在使用しているのはアメリカの他、イギリス、オーストラリア、カナダ、カタール、アラブ首長国連邦、インド、クウェートの8か国のほか、NATOでの共同利用協定に加盟している上記以外の10か国。
日本でも一時期C-1の後継として候補に挙がったことがありますが、取得コストや運用コストの問題のほか“C-17が着陸出来ない航空基地がある”という理由から、早期に後継機候補から外されています。
日本では在日米軍基地や自衛隊基地にアメリカ本土から人員や物資を搬送するために飛来することがある他、アメリカ大統領の訪問時には大統領専用車“ザ・ビースト”の輸送用に使用することもあり、サミットが地方開催される際には在日米軍基地以外にも飛来することがあったりするようですね。
機体諸元などの詳細な情報はWikipediaをご覧ください↓
ダウンロード&インストール
C-17の機体データはこちらからダウンロードしてきました↓
ここ以外でも同じ人がデータを公開していますが、いずれにしろタイトルにWIP(Work in progress:作業進行中)と付いているので、今後も不定期にデータのアップデートが行われるようです。
機体データはZipファイルでダウンロードされるので、完了したらZipを任意の場所に解凍して、解凍後のフォルダをMSFSの“Community”フォルダにコピーします。
後述しますが、このC-17のデータはデフォルトのボーイング747がベースとなっているため“C-17の皮を被った747”といった感じの飛行機になっています。
このため「飛行特性をC-17に可能な限り近づけたい」というもいたようで、飛行特性を再現するための別のプロジェクトも立ち上がっていて↓
こちらでは機体データのうちの飛行特性に関する“flight_model.cfg”というファイルをダウンロードできます。
先にCommunityフォルダに移動させたC-17のフォルダの内部にあるflight_model.cfgと置き換える必要があるので、機体の導入よりも若干手間がかかって難易度が高くなりますが、これを導入すればもう少しそれっぽい感じの機体データになる?
そもそもこの機体は大型機でゆったりどっしりとした飛行機ですからね。
“飛行特性を実機に近づけた”と言われても劇的な変化は感じませんでした。
テストフライト
外観チェック
実はこの機体データ、元々はMSFS2020の前作のMSFSXやその派生タイトルのPrepar3d向けに開発・販売されていた機体がベースとなっています。

外観に関しては有償版のデータがベースになっているだけあり、かなり良く作りこまれていますね。
ただ、一部のアニメーションに関してはMSFS2020に対応していない?
エルロンやフラップ、スポイラーといった動翼回りの動きは確認出来ましたが、エントリードアやカーゴドアの動作までは確認できませんでした。
あと、翼端灯やビーコンライトといったライトまでは実装されていないようです。
コクピット
ダウンロード元でも説明されていますが、コクピットはMSFS2020デフォルトのボーイング747-8がベースとなっています。

デフォルトの747のコクピットは計器パネルがライトブラウン系の色になっていましたが、C-17は軍用機っぽいイメージを出すためかマットブラックに変更されている他

計器パネルのライトが青白い感じの色に変更されています。
C-17の実機は↓

計器パネルはグレーなので全然雰囲気が違いますが、まぁなんとなくそれっぽい感じには見えなくもない?
そもそも操縦デバイスの形状が
747:ヨーク(操縦輪)
C-17:スティック(操縦桿)
といった感じで全く違うんですけどね…。
ちなみに実機の計器パネルのライトは↓

NVG(暗視ゴーグル)対応となっているため緑系の色彩になっているのでこちらも結構違う…。
まぁ開発中のフリーウェアですからね。
それっぽい感じのコクピットが用意されているだけでもまだマシです。
ちなみにコクピットは形状だけでなくポジションも747と同じになっているため、外観の3Dモデルよりも数メートル高い位置にコクピットが配置されています。
着陸進入時のコクピット視点にかなり違和感が出てきそうですが、その辺りはどうなんでしょうか?
機体のセットアップ
コクピット内の機器類の操作はベースとなっているデフォルト機の747と全く同じです。

操作可能なスイッチも全く同じなので747の操作に慣れた人ならチェックリスト無しでもスムーズにセットアップ可能でしょう。
タキシング
駐機スポットから滑走路に移動する前に、実機のようにスラストリバーサーでバックできるか試してみます。
パーキングブレーキを解除してスロットルをリバースポジションへ…

リバーサーがフル稼働すると結構な勢いでバックしていきます。
この状態でラダーペダルを蹴る、またはブレーキを踏むと方向転換も出来るので、トーイングカーでプッシュバックしてもらう必要はありません!
と、言いたいところですが、細かい操作が出来ないのでエプロンの面積がそれなりに広くないと方向転換は厳しいかな?

タキシングに関しては機体サイズの割には小回りが効く感じですかね?
飛行特性だけでなく、ホイルベースのような機体のディメンションに関するデータも書き換えられているようで、747よりははるかに小回りが効く印象があります。
1~4番までのエンジンの推力を個別に調整することが出来れば、ラダーペダルやブレーキペダルと併用することでさらに小さな半径で旋回することも可能。
ホイルブレーキの効きもかなり強いので、旋回の内側のホイルブレーキを作動させつつ、外側のエンジンの推力を上げてやれば意外と小半径で地上旋回出来ます。
フライト
いつも通りセントレアのランウェイ36から離陸し、伊勢湾上空で軽く飛びながら飛行特性を簡単に見ていきたいと思います。

大型機なりのどっしりとした感覚ではあるんですが、ピッチ方向がイマイチ安定していないような…。
この辺りは積載重量や重心位置で変化するはずなので、パラメータをいじれば安定させることもそんなに難しくはないと思います。
ロール方向は入力に対する反応が若干遅いように感じますが、これは大型機なので仕方のない所。
ただし、現時点で747と比べると割と機敏に反応してくれるような感じはありますね。
全体的に見ると安定性よりも機動性にパラメータを割り振ったような機体特性になるんですが、そうなると気になってくるのが“どこまで無茶な飛び方ができるのか?”といったところ。
恐らく実機でも出来ないとは思いますが、ループとロールを試してみることにしました。

ループ開始時の高度が低かったのでリカバリー寸前に墜落しそうになりましたが、一応ループは出来ますね!
頂上に到達したところで完全に失速して錐揉み機動に入るかと思いましたが、意外と綺麗にループ機動を辿ることが出来ました。
ループ頂点で機体速度が80ノットを切ってもまだ失速しないあたり、失速速度は小型レシプロ機並みに低いようです。
ただし、ループ終盤にピッチが-90°になったあたりでスロットルを絞り切ってスポイラーを展開、フラップフルダウンにして加速を押さえておかないとあっという間にオーバースピードになって機体が破壊される危険性があります。
ロールも時間はかかりますが、問題なく出来ますね。

分かりづらいですが、上に見えているのが海になります。
戦闘機やアクロバット機のようにスムーズなロールは出来ないので背面状態で機種がマイナス側に振られてしまいましたが、何度か練習すればもう少し綺麗にロールできそうな気がします。
単純なロールよりもバレルロールのようならせん軌道を取ったほうが飛ばしやすいかも?
この手の飛行機でアクロバット飛行をすることはまずありませんが、これくらい機動性が高いと多少無茶な操作をしても高度さえ確保できていればまず墜落することは無いでしょうね。
無駄に機動性が高いギャグみたいな飛行機ですが、ここまで落ちづらい飛行機は果たして着陸できるんでしょうか?

セントレアに戻りランウェイ36にアプローチ。
速度を落としながらフラップを徐々に展開していきますが、フラップ角度10度くらいまでは展開するたびにピッチモーメントが変化するので、機首を押さえこむ必要が。
それ以降はフラップを展開してもピッチが変化することはありませんが、展開角度が深くなるほどにロール方向の安定性が増して行きます。
フルダウンにすると今度はロールの微調整があまり効かなくなってきますね。
ランウェイに完全に正対した状態であれば問題にはなりませんが、若干オフセットした状態でアプローチすると変針が大分難しくなりそうです。

失速速度がかなり低いため接地寸前にフレアを掛けると機体が浮き上がってきます。
どうにか抑え込んで設置してスラストリバーサーを作動させて機体を減速。

スラストリバーサーでバックできるほどの推力を発生させるので、ホイルブレーキ無しでも十分停止できます。
もちろんホイルブレーキも併用すればもっと短距離で停止できるでしょう。
こんな感じでテストフライトをしてみましたが、多分動画を見たほうが面白いと思うのでこちらをどうぞ↓
サマリー
“外観がC-17に化けた747”といった印象の機体データですが、飛ばしてみると747よりもはるかに機動性が良く、失速しづらいため予想以上に飛ばしやすい機体です。
輸送機はどうしても旅客機と飛行特性が似通ってしまうため、フライトシムの世界では戦闘機程は人気の無いジャンルになるんですが、これはこれで結構面白い飛行機だと思うんですよね。
4発のジェット旅客機となると機体が重くて反応が鈍いため、いまいち爽快感がありませんが、この機体なら割と機敏に動いてくれるので、飛ばしていてそれなりに爽快感があります。
積載重量次第ですが、必要な滑走路長が747よりも短い上に速度と航続距離も長いようなので、離発着する飛行場の幅が増えるというのも導入のメリットではないでしょうか?
面白い機体ですが、フリーウェアなので導入に当たってはいかなるサポートもありません!
私も一切サポートできませんので、導入は自己責任でお願いします。
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