自衛官の階級と役職の話(昇任について)

自衛隊のキャリアパス

過去4回にわたって自衛官の階級とその階級ごとの役職に就いて解説してみました↓

これらの記事を見てもらえればメディアに登場する自衛官が普段どんな仕事をしているのか?どれくらいの地位にいる人なのかがなんとなく想像できるようになると思います。

こうして多少理解すると映画やドラマに登場する自衛官を見るとストーリーの裏側の設定を色々と思い浮かべたりすることが出来るようになると同時に、『あの人あの若さで1曹なの?』ってな感じで色々とツッコミどころが出てくるんじゃないでしょうか?

今回はその辺りのもやもやを解決するのか、はたまたフィクションの設定を破壊するのか…どちらになるかわかりませんが、各階級ごとの年齢層や昇任方法について解説してみたいと思います。

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各階級ごとの最低勤務年数

士から曹長までの階級層は昇任するためには必ず年に1度は行われる昇任試験を受けなければならないんですが、その受験のためには原則的に『受験後の定期昇任の時期に各階級ごとの最低勤務年数を満足している』必要があります。

ごくまれに例外があったりはしますが、基本的には以下の通りです。

イメージしやすいように、仮に18歳で入隊して最短で昇任していった場合と、防衛大または一般大卒で部外幹部候補生として入隊した場合の年齢をカッコに入れてみました↓

2士…半年(18歳)

2士…半年(19歳)

士長…1年(19歳)

3曹…3年(20歳)

2曹…3年(23歳)

1曹…2年(26歳)

曹長…1年(28歳)(※防衛大・部外幹部はここからスタート(22歳))

3尉…2年(29歳)(※23歳)

2尉…3年(32歳)(※25歳)

1尉…5年(35歳)(※28歳)

3佐…3年(40歳)(※33歳)

2佐…4年(43歳)(※36歳)

1佐…6年(47歳)(※40歳)

といった感じになりますが、防衛大を優秀な成績で卒業し、部隊での勤務成績が余程優れた人でもここまでスムーズに昇任はしない、かなりのレアケースでしょうね…。

1佐から将補、将への昇任は勤続年数や勤務成績だけでなく、社会情勢や国際情勢などの政治的な都合も絡んでくるため、いくらスムーズに昇任していっても必ずなれるとも限らない。

ちなみに陸海空自衛隊の制服組のトップである幕僚長を目指すには、防衛大をトップで卒業する必要がありますが、幕僚長の定年時の年齢から逆算していき、上に書いた最低勤務年数を当てはめていくと、防衛大に入学した時点で幕僚長になれるかどうかがおおむね判別できます。

まぁ、入隊から10年も経つと思わぬ大番狂わせ(汚職事件とか不祥事)が発生するので、予想外の期から幕僚長が誕生したりすることもあるみたいですけどね。

昇任試験

各階級ごとに設定されている最低勤務年数を満足している、または昇任試験に合格した場合次の定期昇任の時期に最低勤務年数を満足する場合は昇任試験の受験資格が得られます。

士から曹へ

2士から1士、1士から士長へは昇任試験に関係なく自動的に昇任していくので、自衛隊に入って初めて受験する昇任試験が士長から3曹への昇任試験になります。

陸海空で多少内容に違いはあるものの、筆記試験と身体検査、面接試験、体力測定といった試験が行われます。

筆記試験に関しては自衛隊法や関連する規則や通達に関する理解度を確認するもの、自分が任命されている職域に関するもの、教練などで普段の業務の合間を縫って勉強するのでかなり大変。

これ以降の昇任試験にも共通するんですが、試験で問われているのは『昇任しようとしている階級の業務をスムーズに継承できるのか?』という所。

士長から3曹への昇任試験の場合であれば、分隊長や班長としての業務内容と関連規則が知識として結び付けられているのか?といたようなことを問われるわけです。

なかなか難しいように思えるかもしれませんが、普段の先輩方の振る舞いを法律や規則に照らし合わせ、『規則的に正しい3曹としての振る舞い』みたいなものを確立することが出来れば試験はそれほど難しくない?

規則類に関してはインターネットで閲覧することが出来ますが↓

防衛実務小六法や防衛白書の紙版を手に入れるのが間違いないですね↓

防衛白書はKindle版なら無料で入手できますが、スマホやタブレットは職場に持ち込めないので紙の本を買いましょう!

3曹昇任だけでなく、2曹以上への昇任試験対策にも必須なので、自衛官はほぼ間違いなく全員買ってます。

法令や規則類は毎年どこかしら改定されるわけですが、昇任試験のいやらしいのが改定されたところがピンポイントで出題されるところ。

なんだかんだで毎年買うハメになるものの、持ってると普段の勤務でも色々と役に立ちますし、規則を知ることで法的に自分の権利を保護することもでき、場合によってはむかつく上司を規則に基づいて告発、法的に抹殺するためのヒントが書かれていたりするので買っておいて損は無いですよw

最近は昇任試験対策の本も販売されているようですが、陸・海・空で試験内容は異なるので、内容をよく確認してから買いましょう↓

昇任試験に合格すると、陸上自衛隊の場合は『陸曹候補生たる陸士長』に任命され、師団や連隊レベルで開講される陸曹候補者課程履修前教育に参加したのち、各方面隊ごとの陸曹教育隊へ、海上と航空自衛隊は各教育隊の海(空)曹予定者課程に入校し、3曹として勤務するために必要な知識を学びます。

昇任試験に合格すれば自衛隊生活も安泰なのでここで安心してしまいがちですが、2曹昇任試験以降の選抜基準は陸曹教育隊や陸海の曹予定者課程の卒業成績がかなり大きなウェイトを占めるので、可能な限り早く昇任したいという人は教育隊でトップを目指しましょう!

3曹から曹長まで

3曹から曹長までの昇任のしかたは陸海空によって違うようで、陸上自衛隊と海上自衛隊の場合は教育隊の成績に普段の勤務成績を加味したもの、航空自衛隊の場合は筆記試験の成績に教育隊の成績や勤務成績を加味したもので判断されます。

航空自衛隊は3曹予定者課程の成績が悪くても筆記試験の成績次第では巻き返しが図れますが、往々にして教育隊の成績トップは筆記試験の準備に抜かりが無いのでなかなか巻き返せないんですけどね…。

ただし、筆記試験は五者択一のマークシート方式なので、余程の強運が味方すれば奇跡が起こるかも?

試験は、憲法、警察官職務執行法、刑法、刑事訴訟法、自衛隊法、服務規則、教練、野外勤務要領、航空機の知識などといったものから出題され、普段の仕事や当直業務などをクソ真面目に行い、普段の業務の法的な根拠が理解できていればある程度は正解できるレベル。

ただしたまにトリッキーな問題が出題されるため、事前の試験勉強はそれなりに必要!

航空自衛隊にいた頃に2曹への昇任試験にこんな問題が出題されたことがあります↓

次の航空機のうち、最も飛行速度の速いものはどれか?

  1. F-15
  2. F-2
  3. F-4
  4. C-1
  5. T-4

ちなみに正解は1のF-15で、意外なことに航空機関係の整備員が結構引っかかってました…。

昇任試験に合格すると各方面や教育隊で行われる2曹集合教育や上曹教育に入校し、それぞれの階級で要求される能力、部下隊員の指導法などについて学びますが、3曹予定者課程などと違うのは『学生が自ら授業を進める』という点。

入校前に課題が渡されるので各自論文を作成したり、ディスカッション用の資料を作成したりといった準備を行います。

入校先ではそれらの資料を基に学生同士で課題を解決するための方法を検討し、全発表ののち学生全体で討論するといった感じですかね?

いままでの教育隊のような“クリアすべき課題”や“明確な正解”というものが無く、なかなか難しい所はありますが、普段の仕事で会議やディスカッションをすることも無かったので入校してみるとなかなか面白かったですよ。

曹長から准尉へ

曹長から准尉への昇任試験は陸海空共に筆記試験は無く、勤務評定と面接試験で昇任者を決定するようですが、詳しいことはよくわかりません…。

曹から幹部へ

准尉から3尉に昇任する人もいないわけではありませんが、殆どの人は3曹から1曹の間で『部内幹部候補生』の選抜試験を受けて幹部候補生になるか、大卒入隊で若ければ『一般幹部候補生』の試験を受けて幹部への道を進んでいきます。

試験内容は士から曹への昇任試験と同じく、筆記試験、体力測定、身体検査、面接試験となっていて、自衛隊によっては受験回数が決まっているなんて話もあります。

航空自衛隊には『どんなに成績が悪くても5回受験すればだれでも幹部になれる』なんて都市伝説がありましたが、実際勤務していると「まさかこの人5回受けた人じゃ…」なんて人をたまに見ることが…。

まれに勉強は出来るものの現場で使い物にならない空曹を無理やり幹部にして他の職種に飛ばすなんてことがあったりするんですよねぇ…。

飛ばされた先の職種が本人に合っていれば才能を発揮してスムーズに昇任していきますが、そうでなければまぁまぁ人並みに、最悪職種が変わらずに部隊に帰ってくるなんてことがありますが、その時は最悪です。

元APGの整備幹部なのに現場の整備作業の事を何も知らず、そのくせ階級を笠に着て理想論の無理難題を勝手に規則を解釈して押し付けてくるとかね…。

幹部候補生として再入隊?

年齢制限に引っかからなければ現役の士長や3曹でも防衛大や航空学生を受験し直して、幹部になるなんて言うルートもありますが、そういうコースに進めるのは各自衛隊でも毎年数名といったところですかね?

ちなみに現役自衛官が一般幹部候補生や航空学生、防衛大の試験を受けて合格した場合の処遇ですが、航空学生の場合は階級そのままで異動(同じ自衛隊の航空学生の場合)または他自衛隊への転官(海→空、陸→海など)、一般幹部候補生の場合は異動または転官と同時に“幹部候補生たる曹長”に昇任となります。

ところが防衛大の学生は『防衛省の定員外の職員』という扱いになるため、現役自衛官が防衛大に進むためには一度自衛隊を退職して防衛大に入学するという運用になっているみたいですね。

3尉以降の昇任

3尉以降は昇任試験はなく、幹部候補生学校の成績や勤務成績から判断して順次昇任していくそうですが、佐官以上に昇任するためには職種別の学校や幹部学校、統合幕僚学校などで行われる各種課程、または海外の軍隊の軍事大学を卒業する必要があります。

この各種課程の選抜試験、3尉や2尉といった初級幹部向けの“全員が履修を義務付けられている”といった課程を除き、年齢制限や受験回数の制限があるので年を取ってから幹部に任官すると殆ど受験することが出来ない=昇任の上限が出来るということになります。

もし2佐以上の階級に昇任したいのであれば、少なくとも陸上自衛隊の場合は幹部上級課程、航空自衛隊の場合は指揮幕僚課程を修了している必要があるので『在職中に可能な限り上の階級に昇任したい!』という人は20代で、遅くとも27歳か28歳までに3尉に昇任しておく必要がありますね。

私は下っ端の空曹で退職してしまったため詳細を知りませんが、これらの課程の選抜試験を受けた同期の話やwikipediaなどの情報によると、試験は筆記試験やグループディスカッション、面接、体力測定などで、1週間ぶっ続けで行われるため準備もさることながら試験自体にも相当な労力が必要になるとの事。

曹の昇任試験は『いかに関連法規や規則類を知っているか?』が試験で問われていましたが、幹部課程の選抜試験の場合はこれに加えて『現在状況や過去の事例からモアベターな判断が下せるか?』といったことが問われるようですね。

『正解のない問題・課題』への対応能力やマネジメント能力、議事運営能力なども問われるため、人によっては試験の1年以上前から同年代の幹部や指揮官クラスを交えて徹底的な試験対策と試験の演習を行うんだそうで…。

試験への準備も必要ですが、それ以上に日々の業務の裏打ちがあってこそなので、試験対策だけでは合格は難しいんでしょうけどね。

階級ごとの年齢層

こんな感じで昇任試験や選抜試験を受けながら昇任していくわけですが、防衛大のエリートで未来の幕僚長と目されている人か、教育隊で司令官褒賞を貰うような優秀な人でもないとなかなかストレートに昇任は出来ません。

殆どの人は昇任試験を2度、3度と受けてから昇任します。

自衛官候補生で入隊した場合の各階級の現実的な在籍年数と年齢層を考えると↓

士…5年前後(20代前半~20代後半)

3曹…5~10年(20代前半~30代半ば)

2曹…5~10年(20代半ば~40代後半)

1曹…5~10年(30代半ば~定年まで)

曹長…5年以上(30代後半~定年まで)

准尉…40代~定年まで

といった感じでしょうかね?

幹部の場合は人材のソースが複数あるため何とも言えませんが、各階級の勤務年数は5~7年程度。

仮に自衛官候補生で入隊し、20代前半で部内選抜から幹部になったとして、順当にいけば定年する頃には2佐か1佐、これが30代で幹部になると1尉か3佐で定年といった所ではないでしょうか?

日本以外の場合

自衛隊以外の軍事組織の場合でも、各階級を構成する隊員の年齢層はおおむね似たような感じになりますが、国によっては階級ごとの修業年限が決められているところがあったりするようですね。

アメリカ軍の場合は現在の階級に昇任後、規則に定められた期間で次の階級に昇任できなければクビになるそうで…。

聞いた話では、曹の場合は各階級でおおむね3年、士官の場合は少尉昇任後10年以内に少佐になる、という感じで上限が決められているとか。

もっともアメリカの場合は終身雇用という概念がないので、“一生のうちに1つの会社や組織にしか所属してない”なんて人は自営業でもない限りいないみたいですね。

軍隊も同じで、ある程度のキャリアを積み上げたら上級軍曹でも中佐でも何の未練もなく転職していいますし、そもそもすべての軍人が自衛隊候補生の士長と同じように数年単位の契約で軍に所属しているため、任期の節目で退職しやすいという話もあります。

こういった社会背景や文化のおかげでアメリカ軍の下士官や尉官は入れ替わりが激しいため、中級レベルの軍曹や初級・中級レベルの士官はかなり若く、アメリカ軍との合同演習に参加すると、自衛隊の定年前の1曹のカウンターパートとして配置されたアメリカ軍の1等軍曹が30代前半くらいだったりするなんてことも結構あったりします。

一方オーストラリアやニュージーランドなどといったイギリスのコモンウェルスは割と自衛隊と似たような感じですかね?

こういったところにも各国の雇用情勢や仕事に対する考え方の違いが見えるので、調べてみると面白いかもしれません!

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