自衛隊の階級と役職の話(曹士編)

自衛隊のキャリアパス

皆さんご存じの通り、自衛隊は階級社会!

もし災害や紛争などで混沌とした状態に陥ったとしても、階級が明確になっているおかげでその場で一番偉いのが誰なのか一発で見分けられるようになっています。

まぁ一般の人が自衛官の階級を見分けられたところで取り立ててメリットがある訳でもないんですが、これを知ってると自衛隊関係のイベントなんかに行ったときに今まで以上に楽しめるかもしれませんし、映画やドラマをもう少し深い所まで楽しめるかもしれませんね。

それと災害があった時に現場責任者をすぐに見つけることが出来たりするかも?

自衛隊に入ると一番先に教え込まれのが階級と階級章の見分け方なので、これから自衛隊に入ろうなんて思ってる人は入隊前に覚えておきましょう!

という訳で自衛隊の階級と各階級ごとの仕事や責任などについて解説してみたいと思いますが、将官から佐官、尉官と着て↓

今回は自衛隊の中でも一番人数の多い、組織の根幹となる層である、曹と士の階級にフォーカスしてみたいと思います。

Table of Contents

曹の階級について

自衛隊の曹長~三曹までの階級層は諸外国で言う所の下士官と呼ばれる階級になりますが、自衛隊と諸外国の軍隊の階級を正確に対比させるのが難しいんですよ。

自衛隊では米軍の階級と対比させた英語名を比較に用いることが多いんですが、そもそもアメリカ5軍(陸、海、空、海兵隊、沿岸警備隊)の階級は呼称や序列が一致していなかったりします。

これを是正?するために、Pay gradeを割り振っていたりするんですがこれが余計にややこしい…。

例えば陸、空、海兵隊の階級であるStaff Sergeant(Ssgt、スタッフサージャント、二等軍曹)は、同じ呼称なのにPay gradeで見ると空軍のSsgtは陸軍と海兵隊のSsgtよりも格下だったり、陸、海、海兵隊、沿岸警備隊Pay grade“E-4”に相当する階級Corporal (CPL、コーポラル(海軍と沿岸警備隊はPetty Officer Third Class (PO3))が空軍には無かったりとか…。

当の米軍人同士では階級ではなくPay gradeで序列を考えるためあまり気にはならないようですし、そもそも下士官同士の会話を見ていると、各部隊の最先任軍曹に対応するとき以外は割合フランクな感じで、日本ほど上下関係を気にしないようですけどね。

米軍以外の国となるとさらにややこしく、下士官の階級を単純化しまくって“軍曹”と“曹長”しかいない国があったり、准尉を下士官の一部としている国があったり…。

海外で合同演習に参加したりや合同作戦に従事したりするときに結構混乱した記憶があります。

 

曹長

曹の階級のトップである曹長は英語圏ではMaster Sergeant (マスターサージャント)と呼ばれ、Pay gradeのE-8~9に相当する階級。

米軍はこの曹長の階級を“上級曹長”や“部隊付上級曹長”、“司令部付上級曹長”、“軍最先任上級曹長”といった感じにさらに細分化しています。

“○○上級曹長”は役職名なので、この辺りは厳密に言うと階級では無かったりするんですが、一応Pay gradeで序列が付けられているので階級としておきましょう。

自衛隊の場合は曹長の階級は1つしかありませんが、曹長の役職という点では米軍と似通ったところがあり、部隊の最先任下士官として曹士隊員の服務指導に当たったり、部隊指揮官へ助言を行ったりします。

小隊から大隊相当の部隊の先任陸・空曹や先任伍長となることが多いようで、これ以上に大きい部隊や陸・海・空自衛隊の最先任陸・空曹、先任伍長は准尉が充てられます。

ただし、陸上自衛隊の場合は幹部の充足率の低い部隊だと本来三尉が割り当てられるべきポストに曹長が付いていたりすることもあるようで。

曹長は基本的には二士からのたたき上げで上り詰める階級なので、曹長ともなれば部隊の下士官はおろか新米幹部も震え上がる鬼の指導者!

防大や部外幹部出身の新米幹部が部隊に配置され、階級を傘に威張り散らそうなんて意気揚々と異動してきたら、自分の親とほぼ同世代の曹長にけちょんけちょんに言いくるめられて心を折られる…なんて光景を毎年目にしたもんです…。

知識も経験もかなう訳がないんですが、どちらも足りない人は階級だけで組織が成り立っていると思うんでしょうね。

幹部候補生学校で何を習ってきたんだか…。

ちなみに幹部候補生になると曹長の階級が付与されます。

一曹

英語圏ではSergeant First Class (サージャントファーストクラス)、Pay gradeはE-7相当の階級。

自衛隊では一曹、曹長を上級陸・海・空曹、あるいは上曹と呼んで、他の曹の階級と区別していて、一曹に昇任するとすぐに教育隊に入隊して上級陸・海・空曹として部隊運営に携わるための教育を受けます。

教育修了後は小隊長の補佐や小隊、中隊本部での人事、補給、経理といった管理部門の実務面での責任者として、部隊を陰で支える縁の下の力持ちとして働くことになりますが、部隊の規模によっては一曹で先任陸曹や先任伍長、先任空曹になることがあり、先任に任命されれば曹士隊員の服務指導や指揮官への部隊運用上の助言などを行うのは曹長と同じ。

曹長と同じく二士からのたたき上げで、知識も経験も豊富な上に、組織の酸いも甘いも知り尽くしているので、困った時に一番相談しやすいのが一曹で管理部門にいる人達。

先任ともなると後輩や部下に対して厳しく当たらざるを得ない場合もありますが、そういう役職に就いていなければ変なプレッシャーも無いので、後輩や部下に甘いなんて人も多いですからね。

特に補給担当の人と仲良くなっておけば制服や作業服の更新がスムーズになりますし、うっかり何か紛失した時も裏で暗躍してうまく解決してくれたりとか…。

私も耐用命数に達していない作業服を作業中にうっかり破いてしまった時、使用済みで返納されて廃棄待ちの作業服の中から良品を見繕ってもらい、裏でこっそり交換してもらったなんてことがありました。

 

二曹

英語圏ではStaff Sergeant(スタッフサージャント)と呼ばれ、米軍のPay gradeではE-6に相当するのが二曹。

基本的には最前線の部隊の分隊長や班長として10人程度の小規模な部隊の指揮者となりますが、極端に小規模な部隊だと二曹で先任になるなんてことも…。

早ければ20代前半、遅くとも30代半ばくらいに昇任するため、気力も体力も充実した比較的若い隊員で構成されている階級になります。

勤続10年前後で自衛隊の酸いと甘いがなんとなくわかり始める時期でもあり、それなりに後輩や部下の扱いが分かりだす時期でもあるからか、『俺がいないと部隊が、ひいては自衛隊が回らない!』と勘違いして調子に乗り始めるのがこの辺り。

イケイケで武闘派な人が多いというイメージがありますね。

実際私もそんな感じでしたし…。

調子に乗って伸び始めた二曹の鼻をへし折るのが先任の曹長、へそを曲げないようにうまく手綱を操るのが管理部門の一曹の割と重要な役割だったりします。

三曹

英語圏ではSergeant (サージャント)、米軍のPay gradeではE-5に相当するのが3曹。

自衛隊の場合ここから上の階級の隊員は“非任期制隊員”と呼ばれ、三曹以上の階級になればよほどのことが無い限り定年まで自衛隊で働くことが出来ます。

部隊にもよりますが、昇任したての三曹は何の役職も無い平隊員。

しばらくは分隊長や班長の見習いのようなことをしながら勤務して経験値を積み、ポストが空き次第副分隊長や副班長を経て分隊長や班長に任命されます。

ちなみに自衛隊の階級構成で一番人数が多いのは三曹なんだとか。

『自衛隊の場合は有事の際は募集人員を平時の数倍に増やして総員を増やすことを考えていて、この時に急激に増えた新隊員を教育するための班長要員として大量の三曹を確保している。』なんてことを聞いたことがありますが、どこまで本当なのやら?

三曹への昇任試験に合格すると教育隊にある初任陸・海・空曹課程という訓練課程に入校することになるんですが、ここで教育方法についての講義や演習、討論があったりしますから、“班長要員として三曹を大量確保している”というのはあながち間違いでもないのかもしれません。

部隊でも三曹が新隊員の指導係だったりお目付け役だったりしますしね。

 

就職支援のJAIC(ジェイック)

士の階級について

こちらも曹と同じく国どころか軍種によって階級呼称が違うので非常にややこしいです…。

米軍方式の英語表記にすると5軍でバラバラなので英語表記はしません。

士長

時代や昇任制度によって違いはありますが、2士や自衛官候補生で入隊して無試験で昇任できる上限は士長まで。

入隊して1年半後に無試験で自動的に士長へと昇任しますが、ここから上の階級に昇任するには厳しい昇任試験を受け、これに合格する必要があります。

一般常識や自衛隊法、服務規則などについて問われる筆記試験のほか、体力測定や身体検査、面接試験などで合否を判定するわけですが、普段の勤務態度も評価に加わってくるので普段から真面目に仕事をしましょう。

というか真面目に仕事をしていれば知っていているはずの知識や、付いていてるはずの体力があるかどうかを確認する試験ですからね。

もちろん試験対策は必要ですが、普段から真面目に勤務していればそこまで難しくは無いかと。

士長までは任期制なので任期の節目で退職がしやすいため、社会情勢によって昇任試験の難易度や倍率が変わり、世の中が不景気な時ほど昇任が難しくなる傾向にあります。

あくまで個人的な見解ですが、バブル経済で世の中が浮かれていた時に入隊して三曹に昇任した人たちはほんとに酷い…。

空自で飛行機の整備員やってるのにジェット気流の存在を知らない人とかいましたからね…。

『なんで飛行機で西向きに飛ぶのと東向きに飛ぶので所要時間が違うんだ?飛行距離は同じだろ?おかしくないか?』って素で聞いてくる人がいましたが、おかしいのはアンタだよ!

もちろんピンキリなのでみんな酷いのかというともちろんそんなことは無い…と言いたいところですが、マジで出来る人たちは昇任せずにバンバン転職してるんで残りカスみたいな人しか残ってなかったりするんですよね…。

一方バブル崩壊後に昇任した人たちは本当に優秀な人達ばかりなのですが、今度はストイックすぎて後輩が付いていけなかったり…。

仕事の方はというと、分隊員や班員として指示された仕事を黙々とこなすのみ。

自衛隊歴は3年くらいになってくるのでそれなりに後輩も出来てくるため、生活や仕事の面で後輩の面倒を見たり指導したりしながらリーダーシップ養い、将来的に三曹になって分隊長や班長となるための準備をする時期でもあります。

一士

入隊して半年が経過すると無試験で自動的に一士に昇任しますが、昇任したといっても特に何か変わるわけでもなく、立場は二士とそうそう変わりません。

昇任してしばらくすると半年遅れて入隊してきた後輩が部隊に配属されるので先輩風を吹かせるようになりますが…。

もっと上の先輩方が沢山いるので後輩相手に威張り散らすなんてとてもじゃないけど出来ませんし、実際のところ半年くらいの違いだとほぼ同期みたいな感じであんまりはっきりした上下関係が生まれなかったりします。

そんな状態でうっかり偉そうにしようものなら士長の先輩からお仕置きされるか、三曹の先輩に鼻で笑われて恥をかくのがオチ。

まぁ、こんな感じで沢山恥をかきながら成長していくんですよ…。

 

二士

自衛隊で最も下の階級が二士になります。

私の頃は入隊してすぐにこの階級が与えられていましたが、今は入隊直後は階級がなく“自衛官候補生”となっているようですね。

現行の制度であれば入隊直後は防衛省の定数外の職員という扱いの自衛官候補生で階級の無い状態、入隊後3ヶ月程度(教育隊修了時?)に二等陸・海・空士に任命され、ここでようやく自衛官と認められるようです。

陸海空共に教育隊修了後は各種の職種学校で任命された特技や職種の専門教育を受けて部隊に配属されますが、配属先で出来ることは殆ど無いのでまずはお茶くみや掃除当番などの雑用係としての仕事がメイン。

士長や三曹の先輩方から指導を受けながら徐々に仕事や職場の人間関係に慣れていき、気が付いたら一士に昇任してた…って感じでしょうか?

三士

過去には三士という階級がありましたが、この階級は自衛隊生徒の1年生と2年生に割り当てられた階級で、自衛隊生徒以外の隊員はつけることも無くどころか、場合によっては存在すら知られていないような階級でした。

そして何故か持ってる三士の甲階級章。

これは制服の袖に縫い付ける階級章で、本来なら返納しないといけないような代物なんですが、実はこれとあるサープラスショップで展示されていたレプリカ品。

自衛隊生徒卒業後にOBだという話をして本来は非売品だったものを無理を言って譲ってもらった貴重な代物。

貴重品なんですが仕舞っていたら虫に食われて残念なことになってしまいました…。

そもそもレプリカ品なので造りが実物と違うんですが、思い出の品として大事に保管しておこうと思います。

まとめ

曹と士は自衛隊の中でも一番個性人数が多く、部隊をあちこちで支える屋台骨となっています。

曹は幹部ほどの権限も無い割に妙な責任だけは負わされ、場合によっては幹部のやらかしたミスのスケープゴートにされることがあったりするというかなり理不尽なポジションだったりしますが、変な役職にさえ就かなければ気楽に働けるなかなかおいしいポジションだったりします。

現役当時は何度も上司から幹部候補生の試験を受けるように言われていましたが、毎回必死に断っていたのはこの気楽なポジションを死守するため!

士は任期制で任期の節目に退職しやすいので『自衛隊で勉強しながら貯金して、将来は独立開業を目指そう!』なんて人にはうってつけですが、安定した公務員としての自衛官を目指している人は早急に三曹に昇任しましょう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました