航空自衛隊のお仕事色々:航空機整備員(APG)

自衛隊の思い出

航空自衛官=パイロットというイメージを持っている人が多いですが、実は航空自衛隊でもパイロットなのはほんの一握りで、実際のところはパイロット以外の仕事をする人が圧倒的に多いのが現実。

航空自衛隊のパイロット以外の仕事について『どんなことをしているのか?』『どのようにしてなるのか?』『どこで仕事をしているのか?』を紹介していきます。

今回は航空機整備員について。

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航空機整備員について

航空機整備員は航空自衛隊の航空機整備職域にある職種の一つで、隊内では略称でAPGと呼ばれています。

“航空機整備”という括りの中でも色々な整備特技があり、場合によっては一括してエンジンや油圧などの特技についても“航空機整備員”と呼ぶことが稀にあるんでややこしいんですよね…。

略称のAPGというのは“Air Plane General”の略称で、名前の通り航空機の全般的な整備や管理を行うのが仕事になります。

『航空機の全般的なメンテナンス』がAPGの仕事なわけですが、所属する部隊によって整備の範囲が変わってまして…。

例えば一般的な戦闘航空団であれば、飛行前後の点検やタイヤ交換、機外に搭載する燃料タンクの付け外しといった日常的な整備作業は、飛行隊隷下の『整備小隊』が、定期整備や計画外整備といった比較的規模の大きい整備作業は『検査隊』が行っています。

車に例えると

整備小隊…ガソリンスタンドやカー用品店での簡単な点検整備、部品交換

検査隊…ディーラーや整備工場での車検や故障修理

といった感じですかね?

この例えならイメージしやすいかと思いますけど、現役のAPGに『ガソスタとディーラーの違いみたいなもんでしょ?』とか言ったらダメですからね!

特に飛行隊所属の人たちは『俺たちが飛行機飛ばしてるんだ!』というプライドがあるんで、こんなこと言われたらブチ切れます…。

とはいえどちらも同じAPGとして同じ整備資格を持ち、能力向上のために整備小隊と検査隊で相互研修していたり、移動で人事交流があったりもするので、配属して1年以内に退職でもしない限りは“どちらか一方の部隊での整備経験しかない”なんてことにはならないんじゃないでしょうか?

Wikipediaより

勤務先

飛行機の整備が主な仕事なので、原則的には航空機の配備されている航空基地で勤務することになります。

配属先と取り扱う機種については本人の希望と部隊の要求のバランスを取りつつ…。

どうしても若いうちに行きたい基地や部隊があるのなら、基地や配置されている部隊、機種のリサーチをお忘れなく。

航空機を運用する部隊以外にも多少配属先があり、浜松基地の第1術科学校の教官、航空機に関連する補給物品を扱う補給処、地方協力本部の募集相談員といったポストもありますが、この辺りのポストは若手ではなく、それなりに自衛隊の酸いも甘いも噛み分けたいぶし銀な人達のポストですね。

最近は自衛隊の海外訓練や国際貢献任務も多いので海外での勤務というのもありますが、航空自衛隊の場合は航空機を展開することが基本なので、APGになれば現地での整備のために機体と一緒に海外に展開するなんてこともあります。

訓練や任務の内容によって展開期間が異なりますが、大体1カ月から4カ月といったところですかね?

航空自衛隊の中でも比較的海外に行きやすい職種なんじゃないでしょうか?

Wikipediaより

APGになるには

APGは空曹士の特技区分なので、APGになりたいのであれば自衛官候補生や一般曹候補生として航空自衛他に入隊する必要があります。

教育隊の教育課程を修了すると、次は第1術科学校の基礎工術課程を経て初級または中級航空機整備員課程に入校し、部隊配置後のOJTを経て認定試験に合格すれば正式にAPGとして認定されます。

APGになるために必要な資格は特にありませんが、航空機をけん引するためのトレーラーや地上支援機材を搭載したトラックを運転することが多いので、入隊前に普通免許(MT)か準中型免許を取得しておきましょう。

あとは部隊配備後に取得させられる可能性のある“高圧ガス製造保安責任者”とか“危険物取扱者 乙種 4類”なんかを持ってると職種を決定する時に多少有利になるかもしれません。

航空関係の専門学校を卒業していると多少はAPGになりやすいですが、整備に関する知識や基礎的な技術は術科学校で習得できるので、専門的な知識が無くても問題はありません。

APGは航空機整備職域の整備員の中でも1番人数が多いのでその分人の入れ替わりが激しく、毎年かなりの人数の募集がかかる職種だったと思うんですが、希望者がそれなりに多いんですよね…。

まぁ分かりやすく航空自衛隊らしい仕事ですし、メディアにもそれなりに露出があるので多少認知度はある。

職種紹介でも一番やっていることをイメージしやすいですからね。

Wikipediaより

機付長制度

航空自衛隊の飛行機の管理責任者は、規則上は基地司令とかになってたと思いますが、実務的には飛行隊のAPGの中から任命された『機付長(きづきちょう、きつきちょう)』が担当します。

彼らがよく言う『俺たちが飛行機を飛ばしてるんだ!』というのはあながち大袈裟な話でもなく、運用上はパイロットが機付長から飛行機を借りているというような感じなので『俺の飛行機を貸してやってるんだ!』といった意識が有るようです。

私はAPGではなかったので詳しくは知りませんが、機付長に任命されるのは、入隊後3~5年程度経過した空士長や3等空曹といった比較的若手が担当するポジションなんだそうで。

『そんな経験年数が少ない奴に任せて大丈夫?』と思うかもしれませんが、機付長に任命されるまでに飛行隊の下っ端として下積みのあらゆる作業やトラブルを経験してますし、機付長になった後も飛行隊の先輩隊員から随時OJTがありますからね。

航空自衛隊には“出来る奴に役職を与える”のではなく“役職を与えてから出来るようにする”という文化があり、仮に昨日配属されたばかりの新人を機付長に任命しても、機付長として独り立ちするまでは周囲の手厚いフォローがあるので安全上は問題ありません。

機付長になると自分の飛行機がフライトする前からエプロンに出て出発のための作業を担当し、飛行機が飛んでいる最中は整備記録の確認や定期整備入庫のための打ち合わせ、飛行機が降りてきたら今度は飛行後の各種点検にトラブルがあればそれを修理、整備隊単独で対応できなければ検査隊や修理隊、装備隊などの重整備を担当する部門への引継ぎなどなど…。

といった感じで機付長は休む暇なく働いているイメージでしたね。

激務の上に、100億前後の国有財産の実質的な管理を任されるという猛烈なプレッシャーもありますが、やっぱり本当に飛行機が好きな人たちが多いので、機付長のポジションというのは若手のAPGの憧れでもあるようです。

整備隊と検査隊の違い

冒頭でも少し触れていますが、APGの配属先は飛行隊隷下の整備小隊か、整備補給群隷下の検査隊という部隊のいずれかになります。

整備小隊が航空機の発着時の作業や日常点検、軽微な修理を担当し、検査隊は定期整備や計画外の故障の修理など、比較的規模が大きい整備作業を担当するといった切り分け。

飛行機にも車でいう所の車検に当たる整備があり、ある一定の飛行時間ごとに定期点検を行います。

エアラインだとこの整備を“C整備”なんて言ったりしますが、航空自衛隊でもエアラインのC整備と同じように機体外板を外して機体内部の腐食やひび割れなどの損傷を検査したり、空調機器や座席などの定期検査をしたりするんですが、これをメインで担当するのが検査隊に所属しているAPGの人達。

また、故障修理などの計画外整備や主翼の交換のような重整備も検査隊の担当ですね。

どちらも整備小隊で担当すればよさそうなもんですが、飛行前後の点検に加えて定期整備や故障対応までやるとなるとかなりの人数を用意する必要がありますし、いざ必要な人数をそろえても、故障が起こらない時には人手が余る…。

効率を考えると飛行隊と検査隊で分業していたほうが良かったりするわけですが、逆に政府専用機を運用する特別輸送隊のように故障率の低い機体を極端に少なく運用する部隊の場合は、整備隊と検査隊を分けず、両者を統合して整備隊を組織するという場合もあります。

検査隊として飛行機を保有することは無いので整備隊のような機付長制度は無く『1つの機体のコンディションを隅々まで把握する…。』といったことはできませんが、定期整備では整備隊にいると見ることが出来ないような所までパネルを開けて点検しますし、故障修理も整備隊以上に広く深い範囲の作業を担当することになるので、飛行機の構造やシステムを深い所まで知ることが出来ます。

検査隊のAPGは整備隊のAPGように機付長に任命されることは無いんですが、やはりある程度年数が経つと、ある機体の定期整備の入庫から搬出までのマネジメントを任されるようになったりするようですし、整備隊との人事交流(クロスマッチ研修的なもの?)で一時的に機付長になったりとかも有るようです。

Wikipediaより

検査隊と整備小隊のどっちがいいのか?

現役当時に聞いてみたことがありますが、完全に好みの問題でしたね…。

しいて言うなら『飛行機という乗り物が好き!』という人は整備小隊、『飛行機という機械が好き!』という人は検査隊といった感じですかね。

ごく簡単にAPGとしてのキャリアパスをイメージすると…

配属後は下働きとして色々な作業を経験し、数年後に機付長や定期整備の計画や作業管理をするドックチーフに任命されてリーダーシップやマネジメントを体得。

このあたりで3曹へ昇任、術科学校の上級課程修了後に上級OJTを受けてAPGとして独り立ち。

少人数の分隊を指揮する立場のクルーチーフになったあたりで他の機種を扱う部隊や検査隊、飛行隊整備小隊などへ異動します。

何度か異動しながらフライトラインの全般統制をおこなうラインチーフを経験し、最終的には整備小隊の整備員を下士官としてまとめる立場であるフライトチーフや先任空曹というポジションに就くという感じですかね。

なのでスタートが整備小隊だろうが検査隊だろうが、定年までAPGをやっているとどちらも経験するようになっているはずなので、好きか嫌いかに関わらず両方の部隊を経験することになるようです。

APGの思い出

APGの人たちは完全に体育会系で、私が入隊した頃はまだ口より先に手が出るような人たちが多かったですね…。

『APGが飛行機を飛ばしてる!』『飛行機はAPGものだ!』というプライドと責任感から性格がきつい人が多くなるのか、はたまた朱に交わって赤くなってしまうのか?

そういえば扱っている機種によって、部隊のカラーというかAPGの性格が全く違うんですよ。

私が現役の頃、F-4とF-15を運用している航空団にいたんですが、故障修理のためにF-4の飛行隊に呼ばれてエプロンに行ってみたら『てめぇ何しにきやがった?ぶち殺すぞ!』なんて言われることがありましたね。

自分で呼んでおいて何を言ってるんだって話ですが、翻訳すると『最近顔見てなかったけど元気にしてた?』くらいの挨拶なのでこれくらいでひるんではいけません。

一方、F-15の部隊に行くと『事務室でコーヒー淹れてるから休憩してけよ!』とか『たまには仕事以外でもこっちに顔出せよ~』なんて具合で非常に紳士的!

いったい何がどうなるとここまで違いが出るのか?

いまだ持って分からないんですが、“マニュアルがイマイチあてにならず経験と勘で治す飛行機(F-4)”と“すべてがマニュアル通りの飛行機(F-15)”の違いなんですかね?

さすがにF-4も用途廃止になったので、初対面で『てめぇ何しにきやがった!』って言うようなヤバい人はもういないとは思います(というかパワハラでクビでしょうけどね…)が、案外この手の人は仲良くなると色々便宜を図ってくれるようになるんで、現役時代はギブ&テイクでうまく付き合ってました。

F-4の部隊のお供で出張したこともありますが、よく一緒に飲みに行ったもんですよ。

流石にもうそういう付き合いはないんだろうな~。

Wikipediaより

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