自衛隊にいたころの記憶をたどりながら役に立つのか立たないのかよくわからないことを書き留めるシリーズ。
今回は関係各所から怒られない程度に航空自衛隊の日常的な仕事、特に勤務形態について説明してみたいと思います
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一日のスケジュール
多少違いはあるものの日本中どこの航空自衛隊の基地でも平日は大体次のようなタイムラインで隊員が動いています。
- 0600:起床・点呼
- 0600~0700:朝食
- 0815~1200:各種業務
- 1200~1300:昼休み
- 1300~1700:各種業務
- 1700~1800:夕食
- 1800~2200:自由時間
- 2200:消灯
基本的には“平日日中の0815~1700まで勤務”という感じですが、業務内容によっては全く異なる勤務体系となるため、そのような職場ではたいていシフトが組まれています。
たとえば隊員に食事を提供する給養員(調理担当の隊員)であれば…
- 朝食と昼食の仕込みまでを担当するシフト
- 昼食の仕込みから夕食までを担当するシフト
- ほかの部隊に対応するために8時から17時まで勤務するシフト
みたいな感じで3つのシフトを組んでいたりするようですし、24時間運用する必要のあるシステムの運用・保守担当の部隊であれば8~9時間ごとの3交代となるようにシフトを組んだりすることもありますね。
自衛隊っぽくない日常業務
現役当時に合コンに行ったりすると『自衛隊って匍匐前進するんでしょ?』なんてことを良く聞かれましたが、航空自衛隊にいた20年間で匍匐前進したのは教育隊の演習か趣味のサバイバルゲームの時くらい。
少なくとも飛行機の整備に関連する職種で匍匐前進することはほぼないですね。
しいて言うなら戦闘機のエンジンを点検するためにエアインテークダクトに出入りする時くらい?
一般の人たちの考える『自衛隊っぽい事』というのは恐らく陸上自衛隊の普通科(諸外国の歩兵)のような『小銃を担いで演習場を駆け回る』という訓練や演習なんでしょうけど、そう考えると航空自衛隊の場合は一部の職種を除いてあまり自衛隊っぽいことをしない。
流石にその普通科ですら毎日演習場にいるわけではなく、訓練がなければ駐屯地の環境整備や装備品の整備、体力錬成、といった活動がメインになるそうですけどね。
航空自衛隊の場合、日常的に訓練や演習をするのはパイロットや対空システムを運用するといった直接的に戦闘に関わる部隊の隊員くらいなもので、それ以外の部隊に所属する隊員は、”戦闘に関わる部隊とその隊員が作戦行動をとれる”ように整備や補給、輸送などの兵站支援の仕事をしています。
実際に何をしているのかと言うと、例えば飛行機の整備員はエアラインの整備士とほぼ同じことをしていますし、車両の整備員なら町の自動車工場とやることは変わらない、補給担当の隊員なんかは商社や問屋のような仕事をしています。
働く場所が基地の中で扱っている物が特殊なため『仕事の内容も一般の人達とは違うのではないか?』と思われがちですが、実際の勤務内容はそこらへんにある似たような業種の会社で働く会社員と大して違いはありません。
そこら辺にある会社員との違いは、定期的に災害派遣に向けた訓練や、基地防衛のための戦闘訓練、基地内で火災が発生した場合に備えた消火訓練などをする所ですが、さすがに恒常業務が忙しいので訓練頻度はそれぞれ年に1回づつといったところ。
“自衛隊らしい仕事=各種の戦闘訓練”を期待して自衛隊に入隊すると、指定された職種によっては思っていた以上に訓練が少なくてガッカリするかもしれません…。
シフト体制
冒頭でも少し触れましたが、8時以前や17時以降に仕事をする必要のある部署では超過勤務が発生しないようにシフトを組むという部隊が多いんじゃないでしょうか?
私の勤務していた航空機整備職域では一部を除いて『08~17までの日勤』と『13~作業終了までの夜勤』の2つのシフトを組んでいました。
日勤は飛行機の定期的な点検・整備や部品の定期交換といった計画整備を担当し、夜勤はそれ以外の突発的に発生した計画外整備に対応するという体勢です。
夜勤は何もなければ22時には終了するはずなんですが、まぁ何もないなんてことはまずなかったですね…。
ただ何もないときは本当に何も起こらない。
特に梅雨の長雨の時期や台風シーズンなんかがそうですが、天候不順でフライトがキャンセルされたりすると飛行機が飛ばなくなるので計画外整備も発生しないわけです。
こんな時でも22時まで職場で待機しないといけないんですが、そう言う時は計画整備を前倒しして行っていたり、交換用のエンジンのオーバーホール作業を勧めたり、それすら無ければ整備関係の書類を作成したりとなんだかんだやることがあったので暇にはなりませんでしたね。
残業はありますん
基本的には残業は無いことになってますが、正確に言うと残業という概念が存在しません。
一応1日の勤務時間は原則7時間45分ということになっていますが、その日に割り当てられた仕事が片付くまで仕事は終わりません。
航空機整備の場合よくあるのが夜間飛行訓練後の機体の点検で見つかった故障の修理で、夜間飛行訓練が終わって飛行後の点検済んだ23時ごろになって『翌朝5時までに直してね♡』と言われ徹夜で修理するパターン。
こういう夜間飛行訓練後に発生した故障は夜勤のシフトで対応することが多いんですが、夜勤シフトの出勤が13時だったりすると勤務時間的には8時間を超過して残業で対処するしかない。
故障した飛行機が多く夜勤だけでは対応できないとなると日勤組まで呼びだされるなんてことも。
ちなみに残業の概念がないので残業代もありません。
ブラック企業みたいな“残業代が発生してるけど従業員が請求しない限り支払わない”というものではなく、そもそも法的に存在しないものは隊員に請求されても払えない。
転職して民間企業に行ったときには残業代が出ることに感動したもんです…。
まとめ
今回は航空自衛隊の隊員の日常的な業務について、現職の頃を思い出しつつ説明してみました。
民間の方々からは仕事の内容が見えづらいため『何か特殊なことをしているんじゃないか?』と思われることや、そういう風に感じた方から『柵の中では毎日何してるの?』と聞かれたりすることもありましたが、職種によって違いはあるものの基本的には『民間にある類似の仕事とほとんど同じこと』とやっています。
自衛隊の敷地内で自衛隊の格好をして仕事をしているので変わった仕事をしているように見えるかもしれませんが、仕事の中身はその辺にある一般の会社と一緒なので、そう考えると自衛隊で働くのに特別な能力は不要ですね。
業種や職種に関係なく普通の会社で普通に仕事ができれば、自衛隊の中にある似たような業務を普通にこなせますし、逆に言えば自衛隊を退職した人を雇用する時にも、在職中の職歴を聞けば採用するときの参考にできるんじゃないでしょうか?
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