Captainsim製B767-300のエンジンスタート手順(後編)

フライトシム

前編に引き続き767のエンジンスタートを解説していきたいと思います。

前回の記事はこちらから↓

動画はこちらから↓

前編はAPUを始動して機内電源を供給した状態での警告メッセージの確認までしましたので、今回はその次のステップから。

Table of Contents

機種は違いますが、同じボーイング製で開発時期が近いボーイング777の運航について書かれた本を読むとより一層手順が理解しやすいかもしれません↓

火災報知システムの点検

APU始動前にも火災報知システムの作動点検をしていますが、機内電源が使用可能になった状態でもう1度システムの点検を行います。

バッテリー電源だけではAPUの火災報知システムの健全性しか確認できませんからね。

APUからの電源が供給されていればメインエンジンの火災警報システムもアクティブになり、これでようやく機体のすべての火災検報知システムの健全性を確認することが出来ます。

このタイミングで確認するのは

1.EICASメッセージが表示されること

  • L/R ENG FIRE
  • APU FIRE
  • FWD/AFT CARGO FIRE
  • L/R ENG OVHT(オーバーヒート)

2.各種警報灯が点灯すること

  • L/R ENG FIRE ハンドルのライト
  • APU FIRE ハンドルのライト
  • FWD/AFT CARGO FIRE スイッチのライト
  • スロットルレバー後方にあるL/R ENG OVHTライト
  • L/R ENG FUEL スイッチライト※
  • マスターワーニングボタンの“WARNING”ライト

3.警報音が作動すること

  • 火災警報ベル
  • ノーズギアの火災警報サイレン※

※このフライトモデルでは再現されていません

すっかり忘れていましたが、本当ならこのタイミングでWheel Well(脚室)の火災警報システムの点検も行います。

基本的にはEICASメッセージと警報灯がリンクしていれば問題ありません。

これらの点検によってセンサーを含めた火災検知システム全体の健全性と警告灯の電球の玉切れが無いことを確認します。

実機であればシステムの点検ボタンを押したまま上記の項目を確認し、マスターワーニングボタンを押してWARNINGラライトが消えて警報音が止まることを確認しますが、このモデルでは視点移動時にテストボタンを離してしまうためそこまでできませんでした。

火災報知システムの点検が終わったらメインエンジン消火システムの点検を行いますが、この機体データでは再現されていないのでこの手順はパスします。

IRSのセットアップ

APUから電源供給が開始されたタイミングで慣性航法装置(IRS)のスイッチをALGN(アライン)にしてIRSを初期化します。

ジャイロの立ち上げに5分程度必要なのでオペレーターによってはAPUスタート直後や、外部電源供給直後のタイミングでアラインを開始、ジャイロが立ち上がるまでに火災報知システムなどの点検を行うようですね。

IRUには冗長性確保のためにL/C/Rの3系統がありスイッチはそれぞれ別々になっています。

ジャイロが立ち上がって安定するまでの間にCDUを使ってFMC(飛行管理コンピューター)に機体の位置情報を入力します。

POS INTのページで現在の駐機位置の緯度経度を入力しましょう。

現在は中部国際空港のゲート21に駐機しているので、CDUのキーパッドで“RJGG”と入力し、画面左の上から2番目のボタンを押して“REF AIRPORT”の欄に挿入するとデータベースを参照して空港の緯度経度が表示されます。

同じようにゲートの番号“G21”を“GATE”欄に挿入すれば現在の駐機位置の正確な座標が表示されます。

次に画面右側の上から3番目のボタンを押してGATEの座標をコピーして、同じく画面右側の上から5番目のボタンを押して“SET IRS POS”に挿入すればIRSへの位置情報の入力は完了。

大体ここまではパイロットではなく整備員(ライン整備士)のお仕事。

整備員はこの状態で機体をパイロットに引き渡します。

機体を引き渡されたパイロットはこの状態からコクピットを再度点検をして、CDUへ重量・重心の入力、航路の設定を行います。

メインエンジンの始動

ボーイング製の旅客機の場合、エンジンスタートは原則的に右のNo.2エンジンから。

何故かというと車輪のブレーキを作動させるユーティリティ系の油圧システムは右エンジンに搭載されるポンプが油圧源になっているから。

右エンジンからスタートすれば万が一機体が動き出してもすぐにブレーキをかけることが出来ますからね。

エンジンスタートの手順は

1.APUブリードバルブOPEN

2.R ISLN(アイソレーション)バルブOPEN

3.R PACKセレクタースイッチOFF(DUCT PRESSが30psi以上になることを確認)

※DUCT PRESSが30psi以下だとエンジン点火回転数に到達できないか、始動時のオーバーヒートの原因になります。

※ちなみにこのフライトモデルの場合はDUCT PRESSが低いと着火しません。

4.ENG STARTスイッチが任意の位置にあることを確認(奇数便は1、偶数便は2となっているようです)

5.R ENGスタートスイッチをGND(グランド)ポジションへ

6.N2RPMが20%になったらR ENG FUEL CONTROLスイッチをRUNポジションへ

7.R ENGの回転数(RPM)と排気温度(EGT)の監視

8.R ENGの発電機が作動を始めることを確認

9.N2RPMが50%のタイミングでスタートスイッチがAUTOポジションに切り替わることを確認

R ENGがスタートしたらブリードエアのスイッチをRからLに切り替えて同じ手順をもう一度行います。

コクピット内のあちこちに分散されているスイッチや計器類を確認しないといけないため、エンジンスタートはとても忙しくなります。

スタートスイッチをGNDにしてからアイドル回転数に到達するまで約2分といったところなんですが、いちいちチェックリストを確認することも出来ないので、スタート手順は完全に暗記する必要がありました。

しかもエンジンの不具合はスタート時に発生する可能性が高く、計器の指示や警告灯の表示でどのような不具合が発生しているのか?どう対処するべきなのか?を瞬時に判断し、不具合が波及しないよう速やかに適切な操作をする必要があります。

アフターエンジンスタートチェック

両方のエンジンが始動したらEICASメッセージと警告灯を再度確認し、燃料ポンプや油圧ポンプなどのスイッチを入れていきますが、このあたりのスイッチ操作はオペレーターによって手順が違うようなので、もしかしたらエンジンスタート前にすべてのポンプ類のスイッチをONにするという会社もあるかと思います。

細かいことを言うと同じ航空会社でもパイロットと整備士で微妙に操作手順が異なっていることもあったりするようですね。

燃料と油圧システムのポンプをすべてONまたはAUTOにしたら、空調システムにメインエンジンから取り出した高圧空気を導入します。

エンジンスタート時に操作していたISLNバルブを両方ともクローズにして、両エンジンのブリードダクトをオープン、APUのブリードバルブをクローズすると、メインエンジンからの高圧空気のみ空調システムに導入されます。

一見ONとOFFがわかりづらく見えますが、スイッチを操作すると現れる白線が空調配管を表しているため、ENGやAPUからの空気がシステムのどこを通っているのかがわかるようになっていてシステムの作動状況がイメージしやくなっていますね。

上の画像の状態だと“両エンジンとAPUから高圧空気が供給されている”ということになります。

シミュレーターでは操作しても特に何も起こりませんが、左右2系統ある機内のエアコンを操作して機内の気温を調整することも出来ます。

この後フライトする場合はアフターエンジンスタートチェックでAPUをシャットダウンします。

APUスイッチをOFFポジションにすると1~2分程度の冷却運転の後にAPUはシャットダウンし、その後APUインテークが閉まります。

メインエンジンのシャットダウン

もしAPUシャットダウンしていたらAPUを再始動してブリードエアと電源が使える状態にしておきます。

APUが起動して電源とブリードエアが供給可能になったらばシャットダウンする側のISLNバルブをOPENにしておきましょう。

これはメインエンジンで火災が発生した時に、スターターを使ってエンジンを空転させて燃えている燃料を吹き飛ばすため。

メインエンジンをシャットダウンするときはいつでもスターターを作動できるよう、スタートスイッチに指をかけておき、いつでもスターターを作動できるようにします。

加えて火災が反対側のエンジンに燃え広がらないようにするため、シャットダウンする側のENGブリードバルブはクローズしておきましょう。

これはボーイングの推奨するエンジンシャットダウンの手順らしいんですが、乗客として載っているとどうもパイロットはたぶん両方のENG FUELスイッチをほぼ同時にOFFにしているようですね。

『エンジン火災が起きたら消火器使うんじゃないの?』なんて思うかもしれませんが、エンジンの消化器はエンジンベイ内部で小規模な火災が起きた時にしか使えません!

ジェットエンジンの内部、例えば燃焼室以降の区画で異常燃焼を起こしているとか、ベアリング室のオイル溜まりで発火したという場合には消火器は使えません…。

流石にベアリング室はどうしようもありませんが、コンプレッサーやタービンの異常燃焼であれば、燃料供給を遮断してスターターによってエンジンを空転させてやれば燃え残りの燃料を排出できるので比較的短時間で消火することが可能です。

ちなみにこれは地上だけでなく上空でも同じで、巡航速度に近い状態であればラム圧でエンジンが空転するため、仮にエンジンで異常燃焼が発生していてもENG FUELスイッチをOFFにしてやるだけで消火が可能です。

パイロットと整備員でシャットダウンの手順が若干違いようですが、整備員はメインエンジンのシャットダウン時に

  • FUELバルブの作動状況(確実に動作するか?)
  • ジェネレーターがOFFになるENG N2 RPM(発電機内部の減速装置が正常作動しているか?)
  • ENG OILライト点灯時の油圧(警報装置が設定されている圧力で作動するか?)
  • N2停止までの時間の計測(エンジン内部の機械的な故障は無いか?)

といったことを確認していますが、今となってはうろ覚えなので動画の中ではそこまでやっていません。

メインエンジンがシャットダウン出来たら油圧システムや空調システム、燃料システムなどの電源をOFFにしていきます。

システムのシャットダウン

APUのシャットダウンはAPUスタートスイッチをOFFにするだけです。

APUがシャットダウン出来たらバッテリーが上がらないように速やかにSTBY POWERスイッチとバッテリースイッチをOFFにします。

まとめ

前後の2回に分けて767のエンジンの始動を解説してみましたがいかがでしょうか?

動画と多少順番が違うのは、書き出してみて色々と思い出したことがあるからで、動画よりもこちらのほうがもう少しだけ正確だと思います。

機体データは一部実機とリアクションが違うところがありますが、実機とほぼ同じ手順で操作しないとエンジンすらかけられないというのはなかなか面白ですね。

とりあえずコールド&ダークから問題なくエンジンスタートとIRS、CDUのセットアップが出来たので日本一周にも投入したいと思います。

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