自衛隊生徒の思い出

自衛隊の思い出

自衛隊にいた頃の事を振り返りながら関係各所に怒られないようにしつつ、これから自衛隊に入ろうという人の参考になりそうな情報を記事にしていこうというシリーズ。

今回は私が入隊した『自衛隊生徒』という少し特殊な教育部隊について。

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自衛隊の高校?

自衛隊生徒というのは中学校卒業程度の15から17歳の男子を対象として、自衛隊の技術分野における中堅クラスの曹(下士官)を養成するための教育部隊で、陸海空ともに1955年に設立されました。

陸海空でカリキュラムが微妙に違っていたようですが、航空自衛隊の場合は入隊後の2年9か月間を“生徒基礎課程”としていて、この期間に一般的な高校の普通科+電気科の授業を受けつつ、同時に新隊員課程と同等の教育も受けます。

世の高校生が大学受験や就職の準備に明け暮れる3年生の12月には生徒基礎課程を修了し、指定された特技(自衛隊の中での役割)の勉強をするために術科学校(自衛隊の中にある各種の専門学校)へ入校。

翌4月には術科学校で4年生になり、特技により時期は違いますが術科教育が終わり次第全国の実戦部隊に配置されて約1~9カ月の実地研修を受けます。

実地研修が終わると再び生徒隊に戻り、4年生の1月からの3カ月間は“生徒空曹候補者課程”として3等空曹(諸外国の3等軍曹や伍長に当たる階級)になるための教育を受け、これでようやく生徒隊を卒業。

卒業後は3等空曹に任命され、通信電子機器のオペレーター、航空機の整備といった技術的な分野を担当する部隊へ配属されますが、基礎課程修了時に海空の航空学生や防衛大を受験してそちらへ進んだり、卒業後の本人の希望や部隊の推薦で幹部へ任官することも可能です。

防衛大学の高校版といった感じの教育部隊だったのですが防衛大と違うのは

  • 入隊時点で陸海空に分かれている
  • 身分が自衛官である(防衛大学校の学生の身分は「防衛省職員」)

という点。

たしか防大の場合は1年次に各自衛隊での研修を受けてから、2年次に陸海空のどれに進むのかを選択できるようになっていたと思いますが、自衛隊生徒の場合は入隊試験の願書を提出する段階で受験者が陸海空を選択する必要があります。

防大なら1年生の頃に大まかに各自衛隊の役割や業務について知ることがで来ますが、生徒の場合は自衛隊の事を全く知らない状態で入隊してしまうため、入隊してから『この仕事って別の自衛隊に行かないと出来ないじゃん!』なんてことに気づいたり…。

まぁ生徒卒業してから退職して別の自衛隊に入りなおすこともできますけど、その場合は3曹の階級はなくなって2士から再スタートですけどね。

3曹になる大変さを知っているのでなかなか退職してまで別の自衛隊に入ろうなんて思わないでしょう。

身分に関しては平時であれば特に気にすることは無いですが、自衛隊生徒の場合は有事には自衛官として実際に全線に派遣される可能性があったかもしれません。

ちなみに防衛大学校学生には階級がありませんが、自衛隊生徒は入隊時点で自衛隊の階級が付与されるので、序列で言えば自衛隊生徒の方が上級者という扱いになるようです。

とはいえ自衛隊生徒の階級は自衛隊の中でも最下級の陸・海・空士なので指揮命令権は存在しませんけどね。

生徒隊の生活

中学を卒業して15歳で親元を離れて完全に寮生活、実家が教育部隊が近所にあるからと言って通いでの通学は認められません。

ホームシックになる同期もいましたが、慣れてしまえば合宿所や修学旅行みたいなもので同期と時には喧嘩もしながら楽しく過ごしました。

1日のスケジュール

私が生徒隊にいた頃の平日のスケジュールはたしかこんな感じだったはず…

  • 0600:起床
  • 0605:点呼
  • 0605~0630:業間訓練
  • 0630~0700:朝食
  • 0700~0730:清掃
  • 0730~0800:朝礼
  • 0800~1200:授業
  • 1200~1300:昼食・昼休み
  • 1300~1500:授業
  • 1500~1800:座学および各種訓練又は部活
  • 1800~1830:夕食・入浴
  • 1830~2000:自由時間
  • 2000~2130:自習
  • 2130~2150:清掃
  • 2150:点呼
  • 2200:消灯

授業と書かれているところは高校の普通科と電気科に当たる教育、座学となっているところでは新隊員と同じ内容の教育を受けます。

夕食後に自由時間とありますが、生徒隊入校中には平日の外出(基地の外に出ること)が原則禁止されていたので自由時間といえども基地の外に遊びに行けるわけもなく…。

この時間に洗濯や身の回りの整理(ベッドメイキングや靴磨き、アイロンがけなど)を行っていました。

ちなみに休日は

  • 0700:起床・点呼
  • 0700~0730:朝食
  • 1200~1230:昼食
  • 1630~1700:夕食
  • 2250:点呼
  • 2300:消灯

というのがおおまかなスケジュール。

大体8時くらいから外出が出来るようになっていたと思いますが、午前中は部活動の時間となっていたため基地の外に遊びに出られるのは午後からでしたね。

盆正月とGW以外は原則外泊も禁止となっていたので、遊びに出てもその日のうちに帰ってこなければいけませんでしたし、門限も1年生は2100、2年生は2130、3・4年生が2200時となっていたような記憶があります。

同年代の高校生のように夜遊びが出来なかったのは残念ではありますが、今となってみれば変な事件や犯罪に巻き込まれるリスクが局限されていたわけで、うっかり道を踏み外さずに済んで良かったような…。

部活

陸・海の生徒はどうだったかわかりませんが、航空生徒は体育会系と文科系の部活に必ず入らないといけないことになっていました。

体育会は

  • 柔道
  • 剣道
  • 銃剣道
  • ラグビー
  • サッカー
  • バレーボール

のうちいずれか一つに必ず入らないといけませんでした。

学校の成り立ちから生徒隊は学校教育法上の全日制の高等学校としての認可が下りていなかったためどの部活も高体連に加盟することが出来ず、インターハイのような大会に出ることはほぼ不可能でしたが、通信制高校の大会や自衛隊の大会、国体などに参加して優秀な成績を残す部活もありました。

文科系は吹奏楽、ギター、囲碁・将棋、アマチュア無線、コンピューター、英会話、書道などなど。

体育会系よりも選択の幅が多かったんですがこちらは自分が何をやっていたのかも思い出せないくらいに活動が低調でしたね…。

なかなか活動内容が思い出せないのは体育会系の部活はほぼ毎日やっていたのに比べ、文科系は毎週月曜に2時間程度しか活動していなかったのが原因かと思います。

ちなみに生徒時代に選択した部活がその後の自衛隊生活でも活かされたりするんですよ。

例えば体育会系の種目はいずれも全自衛隊大会が開催されているので、この大会に出て人脈を広げることが出来れば普段の仕事がやりやすくなったりしますし、文科系のアマチュア無線なんかは無線機器の整備をする職種の基礎知識を養うのに丁度良かったり…。

ただ、残念ながら当時は部活が仕事にどうつながるのかイメージ出来ていなかったので唯々面倒でしかありませんでしたね…。

リアル男塾?

仲間内では『1年生は虫けら、2年生は奴隷、3年生になってようやく人間、4年生は神様』なんて事をよく言ってましたが、1年生の時は本当にきつかった…。

生徒隊にも他の教育隊と同じように班長や助教がいるんですが、17時以降は上級生が下級生の後輩の服務指導や規律維持を担当するシステム。

基本的には当直となっている3年生が主となって1,2年生の居住エリアの見回りを行い、清掃状況や備品や施設の使用状況を確認し、問題があれば担当者を呼びだして指導するというもの。

ところがケガ人や自殺者でも出ない限りは指導の理由や中身について班長から指導が入ることがなかったので、3年生になると『今までやられた恨みを後輩へ向ける』っていう負の連鎖が起きやすいんですよ…。

誰かが何かやらかすと消灯後に1年生が全員呼び出されて2~3時間ずっと腕立て伏せをさせられるわけですが、呼び出された理由に誰も見当がつかない。

『靴が汚い』とか『アイロンがけが甘い』なら、まぁ納得はいかないまでも理解は出来ますが『今日の昼メシに出た○○の名前の由来を聞いたのに答えられなかった奴がいる』なんてのは意味が分からない…。

卒業後に先輩に聞いてみると『あれは理不尽さに耐える訓練だ!』なんて言われましたが、実際のところは『自分たちが先輩にやられた分だけ後輩をシゴク』っていう感情がまずあったんじゃないですかね?

もうこうなるとやらかした本人が反省したかどうかなんてことはどうでもよくて、先輩の気が済むまで腕立ては終わりません。

『いっそのこと2,3発殴って終わりにしてくれませんか?』と言いたくなるところですが、そんなこと言ったところで何の解決にもならない…。

2年生が終わる頃になると『そんな負の連鎖は自分達の代で終わらせる!』なんて誰もが息巻くんですが、自分達が3年になるとそんなことも忘れ『やられた分はやならきゃ損』とか『虫の居所が悪いから』なんて理由で後輩をシゴキに行っちゃうんですけどね…。

青春を金に換えた…

自衛隊生徒として入隊すると毎月給料をもらえましたが、一部を小遣いとして手元に残してあとはすべて貯金をしてました。

小遣いの金額は班長が決定して同期全員が同じ金額。

残りは全て貯金ですが、これは自分の意志ではなく強制です。

もちろん自分名義の口座に貯金しているので何ら損はしていませんが、通帳と印鑑を班長に預けていたのでせっかく貯めたお金も生徒の期間中は自由に引き出せない。

引き出すときは事前に『高額物品購入申請書』なるものを書かされるんですが、これもただ書いて提出すればいいというわけではなく、購入する必要性やメリットなどを説明して班長を納得させないといけないという中々面倒な物でした。

当時は『なんで自分の金を使うのに許可がいるの?』なんて思ってましたが、部隊に出てからの予算請求の練習という目的があったのかもしれません。

流石にママチャリ買うにも購入申請が必要ってのはやりすぎだとは思いますが…。

仲間内では強制貯金で貯まったお金を『青春を売って得た金』なんて言っていましたが、卒業するタイミングで手元に通帳が帰ってきて自由に使えるようになるといきなり身に覚えのない数百万円が降ってきたような感覚になるため、せっかく青春を金に換えたのにギャンブルですべて使い果たしてオケラになる人や、青春を買い戻すべく趣味にハマって常にピーピーな人もいました…。

将来の事を考えると貯金は大事ですが、お金の使い方を勉強しないとダメですよね…。

ダイエットのあとのリバウンドと一緒で、お金に関しても制限しすぎは良くないですし、急に制限をなくすと簡単にタガ外れるということがよくわかりました。

海空自衛隊生徒の廃止

1955年から続く自衛隊生徒は2011年3月卒業の生徒53期をもって廃止され、56年の歴史に終止符を打ちました。

日本政府が国連子どもの権利条約に批准したため16歳以下の少年少女に銃を持たせる訳にはいかなくなったことや、防衛省の総人件費抑制措置、少子化による募集難(生徒自体は高倍率なものの他のコースと将来的にバッティングしてパイを食い合う)などなど、廃止になった原因は色々あるようです。

母校が無くなるというのは寂しいものですが、これも時代の流れということで受け入れるほかありません。

ただ、あの男塾のような指導方法はさすがに今の時代に継続していくのはほぼ無理でしょうね…。

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