20式小銃の考察

ミリタリー

陸上自衛隊の小銃が1989年の89式小銃以来、31年ぶりに更新されますね。
新しい小銃の名称は20式5.56㎜小銃だそうですが、この小銃について色々と考察してみました。

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20式小銃の仕様

防衛省の発表によると

  • 口径:5.56mm
  • 重量:3.5kg
  • 銃身長:330mm
  • 全長:854mm(ストック短縮時783mm)
  • 装弾数:30発弾倉

となっています。
口径は89式と同じなので、使う弾も同じく“89式5.56㎜普通弾”でしょう。
この弾丸自体はNATO標準のSS109に準拠しているようですので、ACSA協定を結んでいる国との弾薬の融通は問題なくできます。
銃身長は330㎜と89式の420㎜と比べると―90㎜とかなり短くなっているので、取り回しはかなり良くなっていますね。
似たような寸法のM4カービンと比較してみると

  • 20式:330㎜ = 13インチ
  • M4:368㎜ = 14.5インチ

となるので、M4よりも少し短くなっています。
銃身が短くなると火薬が燃え切らないという問題が発生しそうですが、この辺りは89式まで採用していたマズルブレーキを廃止してフラッシュハイダーにしたことで対応しているのかもしれません。
余談ですが89式のマズルブレーキはかなり性能がいいそうで、アメリカでは89式のマズルブレーキをモチーフにしたコンペンセイターを『J COMP』という名前でM4やAK向けに販売しています。

フラッシュハイダーを『J COMP』に換装したM4での射撃の動画がYoutubeにありました。

射手の腕前にもよるのでしょうが、マズルブレーキがかなり効くため、反動が抑制されて撃ち味がマイルドになり、精度が向上するそうです。

ライフリングはおそらく6条右転の177㎜ピッチと、SS109を使用するほかのサービスライフルと同じ、というかよほどのことがない限りこの数値は変えようがないと思います。

ストックはFNハーシュタルのSCARと似た形状のものが採用されており、可変式のチークパッドがついていることが確認できます。

89式では一般隊員向けに固定式と、車両搭乗員や空挺隊員向けに折り曲げ式が採用されていましたが、おそらく20式では折り曲げ式は採用しないのではないでしょうか?

折り曲げ式のストックが採用されていたのは89式の全長が1m近かったためで、最短で80㎝を切る20式では不要と判断しているのではないかと思われます。

さらに考えられる理由としては、

  • バリアント(タイプ)を増やしたくない
  • 開発と製造の費用を抑えたい
  • 固定式ではなく折り曲げ式ストックを標準にした場合の部品点数の増加を抑制したい

などといった事情があるのではないでしょうか?

同様の理由で一時噂になっていた『モジュラー構造にしてマルチキャリバー化』というのもないでしょうね。

もしマルチキャリバー化するのであれば20式と同じタイミングで交換用のバレルやレシーバーが発表されるはずですが、今回はありませんでしたからね。

※この辺の事情は『制式』という自衛隊用語を調べてみると面白いかもしれません。

今後海空の64式をどうしても7.62㎜口径のライフルで入れ替える必要があれば、今回発表された20式小銃とはまた別に開発されていると考えられます。

もし7.62㎜版があるのならそちらがマルチキャリバー化しているのかもしれません。

作動方式ですが、89式のロングストロークガスピストンではなく64式のようなショートストロークガスピストン方式で、閉鎖方法は89式と同じくロータリーロッキング方式ではないかと推測します。

まぁこの辺は世界の潮流というか、ほぼほぼ完成された工業製品なので薬きょうがなくならない限りはこれでしょう。

マガジンは共有可能

マガジンはPMAGがつけられていますが、おそらくこれは試験購入品で部隊に配備されることは直近では無いような気がします。

89式のマガジンはSTANG規格で作られているためM4のマガジンと互換性がありますが、M4用のPMAGが20式に使えるということは、20式はSTANG規格のマガジンが使えるということでもあり、89式のマガジンは20式でも使えると考えられます。

そうすると経費削減のため初期は銃本体のみ配備して89式のマガジンを流用し、マガジンが損耗してきたころに20式のマガジンを配備するという流れになるんじゃないでしょうか?

たしかマガジンも定数が決まっていたような気がするので、むやみやたらに増やせなかったと思うんですよね。

ただ89式マガジンは残弾確認孔からの異物の侵入があり、作動不良を起こしやすいという話があるので案外早くP-MAGっぽい感じのマガジンが配備されるかもしれません。

グリップは市販品っぽい

グリップはBravo Company USA社のBCM GUNFIGHTER Grip MOD3が装着されているようですが、これもM4用に販売されているグリップですので、20式のグリップはM4と互換性がありそうです。ということは部隊配備後に個人で好きなグリップに交換できそうな気もしますが、おそらくダメでしょうね。

エアガン用のグリップに交換して演習中や射撃訓練中に壊す奴が出てきそうです。

ちなみにマガジンとグリップはプレス公開で展示されていた小銃から変更の可能性があるそうです。

まぁこの小銃思いっきり『試験用銃』と書かれていたので、制式品とは色々と仕様が違うんでしょう。

飛行機好きな方ならピンときたかもしれませんが、市場に流通している既製品を片っ端からくっ付けて開発費用を圧縮するよいう方法もあるので、20式も同じような方法で試作品を作ったのかもしれません。

もしくは逆に『M4用のバトルプルーフの証明された部品』を使うことで銃としての信頼性や取り回しの良さを多少なりとも向上させようとしたのかも?

いずれにしても日本の兵器開発の歴史からするとかなり珍しいケースとなります。

銃剣は89式と同じ?

銃剣は89式のものがそのまま使えるそうですが、鞘(スカバード)は20式用に変更されるようです。

従来は銃剣と組み合わせてワイヤーカッターとして仕えたそうですが、20式ではこの機能は廃止。

おそらくどこかの阿呆が番線ではなくコンクリの配筋を切ろうとして破損して、使用禁止になったと邪推。

『21世紀、令和の時代になってもまだ銃剣使うの?』と思う向きもあるかと思いますが近接戦闘、特に市街地や建物内での出会いがしらの遭遇戦ではまだまだ銃剣も捨てたもんじゃない。

皆さん銃剣を「太平洋戦争中の竹やり」みたいなイメージで考えているかもしれませんが、20式に着剣してもあれの半分くらいの長さですよ?

剣とついていますが斬りかかるのではなく、突き刺すものなので狭いところでも十分に使えます。

89式からの改善点

操作性の向上

89式ではセレクターが右側にあり、人差し指で操作する必要がありました。

しかもセーフ→セミへの切り替えに270°もセレクターを回す必要があるので即応射撃のようなシチュエーションではかなり使いづらかったのではないかと思います。

結局イラク派遣以降の改修で左側セレクターが標準装着されて多少はマシになったようですが、根本的な解決にはなっていなかったと思います。

20式ではセレクターが左右についただけではなく、回転角度も150°まで抑えられています。

(まだ角度が大きいように思えますが、M4の180°に比べればまだマシです)

セレクター以外の操作系もアンビ化されているようで、チャージングハンドルも分解が必要ながら左右の入れ替えが可能になっているようです。

20式小銃ではついにリトラクタブルストックが採用されました。

銃床の長さが固定ている場合、ボディアーマーを着込んだ時と作業服の時で微妙に射撃姿勢が変わるので命中精度に若干ながら影響が出ますが、どんな装備でも同じ姿勢がとれるよう、ストックの長さを変えることが出来れば射撃姿勢が変わらず、安定して射撃することが出来ます。

さらにチークピースも可変となれば、体格の違いもカバーできるためかなり当てやすい銃になっているのではないでしょうか?

また、89式の銃床は右利きに特化した湾曲した銃床でしたが、20式ではこれを廃止してストレートタイプの銃床になっています。

確かに89式は右肩で構えるとしっくりくるのですが、とっさに左にスイッチすると銃口が左にずれますからね。

そもそも89式の設計当時の射撃ではオリンピックのライフル射撃の様に左肩を大きく前に出す姿勢が一般的でしたが、現在では標的に完全に正対する姿勢が主流のため、根本的に構え方が違います。

このあたりも89式開発後の情勢の変化に対応するために改善された点なのでしょう。

拡張性の向上

ハンドガードにレールがついて拡張性が増したという話がよく出ていますが実は64式の時代からどうにかこうにかハンドガードの部分に何かしらつけようというアイデアはありました。

フラッシュライトをダクトテープで無理やりくっ付けたり、塩ビパイプでフォアグリップを作ったりと、部隊や個人単位で色々と知恵を絞って拡張性を向上させてきました。(現役時代に実際にやってました)

そのうちに出入り業者が色々と作ってくれて、64式用のレイルアダプターなんかがあったりします。

そのため個人的にレールはあまり目立った改善だとは思わなかったりします。

オプションアイテムの装備

ハンドガードはピカティニーレイルを上下に配し、左右はM-LOCとしており、拡張性を持たせつつ軽量化にも配慮していることがうかがえます。
フラッシュライトやグリップは部隊単位か隊員個人で購入でしょうね。

レーザー照準器は官給のJVS-V1が89式に引き続き供給されるのではないでしょうか?

見た感じピカティニーレイルにポン付けできなさそうで何らかのアタッチメントを別に配るのでしょう。

Wikipediaより転載

もしかするとこのタイミングで別のレーザー照準器が出てくるのかもしれません。

ここ数年で米軍が使用している暗視スコープ『AN/PEQ-』8の陸上自衛隊版である『JGVS-V8』の配布が進んでいるようなので、そろそろIRレーザーを配備するタイミングだと思うんですよね。

米軍のAN/PEQ-15の様なタイプのフラッシュライト付きのデバイスになるんですかね?

20式と同時に発表された新9㎜拳銃もピカティニーレイルを装備していたので、もしかしたら共有できるようにDBAL-PLのような小型汎用タイプになるのかも?

プレスリリースを見るとベレッタ製のアドオンタイプのグレネードランチャーも一緒に展示されていますが、どうも現時点ではこのグレネードランチャーは参考品の模様。

20式小銃でも06式小銃擲弾の使用が可能なようですので、仮にアドオンタイプのランチャーが採用されたとしても配備されるのは相当先の話になると思います。

もしかするとベレッタ製ではなく国産品になってるかもしれません。

そもそも陸上自衛隊では擲弾手を固定したくないという考えから小銃擲弾を使用してきたわけですが、20式に代わるタイミングでその考えを変えることになったのかもしれませんね。

陸上自衛隊のドクトリンの変化

アドオンタイプのグレネードランチャーの配備をにおわせたり、64式、89式と標準でついていたバイポッドが廃止されていることから、陸上自衛隊のドクトリンが大幅に変更されているのではないかと考えられます。

冷戦期は『最前線にたこつぼを掘って防御戦闘に徹する』というのが基本方針でしたが、冷戦終結後の世界情勢の変化により海外へ展開する機会が増え、冷戦構造から解き放たれた周辺諸国が主権の及ぶ領域を拡張しようしている現象では防御戦闘一辺倒というわけにもいかなくなったのでしょう。

おそらく『地上戦においては戦端となりうる島しょ部やへき地の山岳部に機動的に少数の兵力を展開して遊撃戦を行うことで、敵の侵攻の企図を排除して人口密集地への戦線の拡張を防ぎ、もって国土の防衛をはかる』みたいなことを考えているのでは?

本来ならば早くとも90年代終盤、遅くとも00年代中盤から10年代初頭くらいまでには方針転換してほしかったところですが…。

エアガン化はあるか?

ガンマニアやサバイバルゲーマーが一番気になるのが『いつになったらエアガンが出るのか?』というところでしょう。

64式の時はホビーフィックスがモデルガンを作り、TOPが電動ガンを販売していました。(最近は中華系メーカーも作ってますね)

89式はキャロットの外装キットに始まり、陸上自衛隊が近接戦闘訓練用の資材としての89式電動ガンを東京マルイにオーダー、図面の提供と商品化の許諾をしていたなんて話を聞いたことがあります。

そして現在は89式の電動ガンとガスブローバックライフルが東京マルイの製品にラインナップされています。

では20式はどうなるのか?

訓練資材としての電動ガン化はあるでしょうが、まだしばらく先の話でしょうね。

訓練用といっても89式と20式では微妙に操作系や構造が違うので、20式が普通科部隊にある程度配備されていなければ20式電動ガンを訓練用として使う意味がありません。

もちろん一般ユーザーのニーズはあるでしょうが、ビジネスである以上大口となりうる陸上自衛隊からのオーダーが確約できない限り製品化はしないでしょうね。

ただ、20式配備の前に先行的に慣熟訓練をしたいというニーズが陸上自衛隊にあれば、比較的早く商品化される可能性があるかもしれませんが、その場合は商品化されても費用や耐久性の問題からリコイルのない旧世代の電動ガンになる可能性が…。

ガスブローバックはパワーソースの問題(ランニングコストや今後の環境対応を考えると脱フロン化の必要あり)があるのでもしかしたら出せなくなるかも…。

現状ではグレー扱いになっているCo2がパワーソースとして一般的になってくれればいいんですが…。

訓練用の資材としてはゴムで作られたラバーガンという物もあり、これは水陸機動団などが上陸訓練や格闘訓練などで実銃を使えないときに使用するのですが、89式のラバーガンをすでにキャロット陸上自衛隊に納入しています。

89式のラバーガンは市販されていて、キャロットは20式のラバーガンの作成にもかなり乗り気なようですので、20式のラバーガンも配備が進めば同じように市販されるのではないでしょうか?

まとめ

20式小銃は89式と比較してコンパクトになり、操作性と拡張性が大きく向上しました。

自衛隊のドクトリンが固定陣地で待ち受けるというものから、積極的に動き回って敵を叩くという戦略に変化したことを表しているのでしょう。

とはいえ、敵国に乗り込んでいくというわけではなく、奪還作戦や逆占領作戦を展開するという構想と、対テロの不正規戦闘を想定しているのでしょうが、果たしてこのドクトリンが正解なのかどうか?

一度も実戦に投入することなく射耗して廃棄されればいいのですけどね~。

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